極彩色ガラパゴスミステリー
私の眼前には、奇妙な鳥の画像が広がっていた。
「何これ」
「言ってただろう、お前の誕生日プレゼント」
どうやらこれは、私への贈り物らしい。
放課後の部室の壁一面に、所狭しと貼られている鳥の目が、こちらを見ている気がする。
「わざわざ用意してやったんだよ」
彼は嬉々として画像の説明を始める。
「これはガラパゴス諸島に生息していてだな…」
なるほど、どうやら珍しい種類らしい。話を聞くと彼はその写真を入手するのに相当苦労したらしく、なんと今日ギリギリ手に入れたらしい。目の前の彼が異様に汚れて傷だらけなのは、まさかそういうことなのだろうか。そうでないことを祈りたい。
「約束だったからな、しっかり守ったぞ」
私への説明も満足したようで、泥だらけの服の彼はボロボロの鞄を引きずって部室から去っていく。
一体どこから来たのか、それだけでも教えて欲しかった。
彼は毎年私へ、誕生日プレゼントを渡しに来る。
雨だろうが風だろうが、海外に居ようと、何があっても、何故か私のところにやってくる。
私が富士山の山頂にいた時でも彼は私の元に現れたから、多分どこにでもこれるのだろう。
彼の様子もいつも違って、ド派手な髪の毛だったり、どこかの民族衣装を着ていたり、1番驚いたのは包帯ぐるぐるまきのミイラ状態で現れた時だった。どうも彼は私に誕生日プレゼントを渡すことに命をかけているようで、そこまでしなくてもいいと言っても、「約束だから」と決して譲ろうとしない。
そもそも、彼は一体誰なのだろうか。約束とは一体何のことだろうか。知らないことばかりだが、なんやかんやで年1回のこのイベントを楽しみにしている私もいる。私がもし宇宙にいても、彼は私の前に現れるのか。俄然楽しみになってきた。
土でめちゃくちゃに汚れた部室を1人で掃除しながら、私は考える。
来年の君は、何を持ってくるんだろう。
それにしても、私は鳥が好きではないのだが。
圧が強い壁一面の鳥の極彩色に、頭が痛くなってくる。
どうやって持って帰ればいいの?これ。
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即興小説トレーニングでの作品を、加筆修正しています。元はこちら
お題「来年の君」 必須要素「ガラパゴス諸島」
制限時間「15分」
http://sokkyo-shosetsu.com/novel.php?id=503633