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名前も知らないあの映画

ずっと、心に残る映画がある。

初めてお金を出して見に行ったとか、好きな誰かと見た映画とかではないのだけれど。

感動したのではない。ただ、ただ、ショックをうけたのだ。

たぶん、高校の時だったと思う。学校側が映画を上映して、全校生徒で観る、という催しがあった。あの頃は、学園祭の時なんかにそういうことをよくしていた。

当時まだ上映されて間もなかった普通の映画(たぶん「南極物語」)といっしょに、短めの一本の映画を観た。

それは、戦争映画だった。

満州から引き揚げてくる民間人の群像をドキュメンタリー風に描いていた。第二次世界大戦の終盤に、当時、ソ連の軍が突如として中立の立場を投げ打ち、日本の人々を襲い始めた様子を。

映画の中では、無辜の人々が、それこそ七面鳥のように撃たれ、殺されていった。

小さな子供も。

あまりのショックに、題名も確認せず、もちろん、その後も見ることはなく、しばらく夢に出てくるくらいだった。

でも、今でも忘れられない。

あの映画でわたしが知ったこと。それは、だれが悪いとかどの国が攻撃したとか、そんなことではなく、戦争というのは、人が、死ぬんだということ。

人が、どんどん死んでいくんだということ。
そして、それは、画面のこちら側からどんなに願っても、待ってくれないということ。

あの時、スクリーンのこちら側で抱いた言葉にならない感情。
それを知ることができて、本当によかったと思う。

名前も知らない、短い一本の映画なのだけれど。

忘れられない。

いつもありがとうございます。心の栄養のためにたいせつに使わせていただきます。