『僕の心のヤバイやつ』について
『僕の心のヤバイやつ』(僕ヤバ)は秋田書店のWeb漫画サービス「マンガクロス」で連載中(令和元年6月12日現在)のラブコメ漫画だ。
心中ではサイコパスを気取る中二病にして陰キャの鑑「市川」が、中学生ながら雑誌モデルを務め、大人らしさと年相応の天真爛漫(アホ)な部分を併せ持つ長身美少女「山田」に振り回されてどうのこうのな展開だ。
最近は主人公の男は女にマウントとられてなんぼなラブコメが乱立していたようだが、そういう漫画でかわいい子にからかわれるだけの、ヒロインの魅力を描くための媒介と化した主人公は好きではない。こういうやつらはMEXICOでダニートレホに刺されるまでもなく野垂れ死ぬ。
僕ヤバはまず市川ありきだ。これは「作中でモノローグが表記されるのは市川だけ」というルールが徹底されているからだと思う。市川の思考と行動をシームレスに追い続けることで読者の視点は市川のそれに同期する。市川は山田に振り回されながらも決断的に行動する真の男なので、ごあんしんください。
また、「作中でモノローグが表記されるのは市川だけ」なので読者は山田の一挙一動一投足、表情、視線等のニュアンスに気を向けざるを得なくなる。『よつばと!』の読み方を意識すると発見があるかもしれない。
さらに僕ヤバを読むときに意識すると面白いのは「いつから」という点だ。この漫画はだらだらと主人公の男女の日常を描き出し続けるラブコメのようでいて、少しずつではあるが容赦なく積み重ねられ、進展してしまう。いろいろな「いつから」には明確な答えがあるものとないものがあるだろうし、ターニングポイントの解釈も人によって変わるだろう。
私のお気に入りの場面はkarte.14の「市川を見ていた山田を見た市川と目が合う山田」だ。
作者の桜井のりお氏のTwitterでは、おそらく単行本に収録されないであろう短編(時系列は明らかにされていない)がけっこうな頻度で公開されているので、本編に関心を持ったならフォロー推奨だ。
「バイバイ」と「また明日」は全然違うらしい。