「野良犬たち」について
「野良犬たち(ストレイ・ドッグス)」はベトナム戦争をポップかつ軽薄に描いた漫画『ディエンビエンフー』に登場する集団だ。
紆余曲折を経て無事TRUE ENDを迎えた作品であるのでネタバレにはそんなに配慮しない。
物語は主人公である米軍の従軍カメラマンのヒカルと人間離れした戦闘能力を持つベトコンの少女、通称「姫(プランセス)」、そして姫を追撃するグリーンベレー所属の美少年ティムを中心に展開する。
「野良犬たち」はティムが率いる「はみ出し者の集団であるグリーンベレーから更にはみ出した者たち」であり、構成員は以下の七名だ。
祖国を捨てた虎「パク・メンホ」
白頭巾の解体屋「ミンチ」
爆弾の魔法使い「カリフラワーのじじい」
神秘のヨガ・マスター「ダンニャワード」
静かなるネイティブ・アメリカン「リトル」
まどろみを知らないスナイパー「インソムニア」
アメリカン忍者「ジャジャマル」
この順番で「姫」と戦闘し、死ぬ。ミンチ、じじい、ダンニャワードは一晩で死ぬ。ミンチに至ってはヒカルが見つけた時には既にミンチになっていた。
『ディエンビエンフー』は所謂バトル漫画ではない。作中でもメタ的に触れられるが、超人バトルはその本質ではないし、超人描写もあえて大雑把で適当にしている感じだ。
IKKI本誌で連載していた当時は「リトルとインソムニアは前半の連中と比べて明らかに強キャラだけどたぶん雑に死ぬだろう。でも姫にとっていい噛ませ犬になるように雑魚相手にはある程度活躍するかも」とか思っていた。
しかし、リトルもインソムニアも姫の相手にさえならなかった。両名とも担当回でキャラクターを深堀されたうえで、それぞれ無惨に死んでしまった。特にリトルの最期は個人的に一番残酷に感じた。
「野良犬たち」は『ディエンビエンフー』の序盤を支えた名脇役だ。2019年2月12日現在、ニコニコ静画の公式ページで彼らの活躍を描いた第一部が全話公開されているので読んでみてほしい。掲載誌が休刊したり、単行本連載で続いたり、BAD ENDになったり、それがなかったことになってTRUE ENDになったりと、いろいろあった作品ではあるが、その後の展開も読んでみてほしい。
強大な敵に対して、いかにもなやられ役が襲い掛かって返り討ちにされる一方、いかにもな実力者が力の差を察知して戦慄しながらもその場を切り抜ける展開がある。切り抜けた彼ははたして戦うことができただろうか。考え方次第で返り討ちにされた彼らの最期の見え方が変わってくるかもしれない。