エスアール・エーティーサンゼロゼロ

 空には雲一つなく、どこまでも澄み切った青が続いてた。

「胸くそ悪いぜ」
『何がですか?いい天気じゃないですか。遠くまでよく見えますし』

 腰に下げた通信機から能天気な若い声。数㎞離れた地点の新人は会話に飢えているようだ。彼らが口を開いたのは数時間前にこの赤土の荒野に向けて斡旋所を出発して以来だ。

「遠くまでよく見えるからだ」

 新人の待機地点に遥か高空から光の束が落ちた。気まぐれに大地を焼く忌まわしき収束光線。震動と衝撃波。不運な新人は消し炭も残らないだろう。

 銃身だけで身の丈以上ある狙撃銃を光の落ちた方向へ構え、スコープを覗く。澄んだ青空に六基の推進器の翼を備えた白銀の躯体が佇んでいる。天の災厄、蟲だ。嘴のような収束光線発射装置の装甲を放熱開放する様子はまるで

「笑ってやがる。胸くそ悪いぜ」

 カァンと乾いた発砲音が響いた時、放たれた弾丸が装甲開放部に届く刹那、彼と蟲の視線が交錯した。

【続く】