『ゲーミングうちゅうじん』について

『ゲーミングうちゅうじん』はパワーマンしゅら氏がTwitter、pixivで連載中の漫画だ。

強者を求めて地球にやってきた「宇宙人」だが、小手調べに暴れたところでこの星には自身に張り合えるものはいないと悟ってしまう。退屈を感じていた折になんらかのエネルギーを感じ取り、辿りついたのはゲームセンター。そして出会ったのは格闘ゲームだった。

格闘ゲームを定められた条件の上で知恵の力を競う力比べと認識し、最初の100円で打撃、ガード、投げまでを超速理解した宇宙人だったが、ゲームセンターの常連相手には手も足も出なかった。善意の「教えてあげようか?」でトドメを刺された宇宙人は初めての屈辱を覚えたのだった。 

この漫画では格闘ゲームを地球で初めて知った宇宙人の視点から、格闘ゲームとはどんなゲームであるか、どんな魅力があるのか、どんな人達が遊んでいるのかがとても丁寧に描かれており、気付きや発見、ゲームセンターでの独特な交流の描写には歴の長い経験者ほど深く頷けることだろう。

着実に経験を積みながらも常連相手には勝つどころか練習にもならないうちに負けてしまい、困っていた宇宙人は第16話「連戦(前編)」にて同じケンゾー(宇宙人の使用キャラ)使いのXMA(クサマ)からの乱入を受ける。XMAはケンゾー使いとしての知識と経験で宇宙人の一つ先を行くが、宇宙人にとっては今まで負けてきた手練れ達と比べれば手応えを感じられる相手だった。両者は『連戦』を繰り広げるのだが、この回は本当に私に刺さってばかりだった。

同キャラ対戦なれど自分の知らないテクニックを駆使する相手、繰り返される間に自分なりの対策を講じ一矢報いたときの感触、ならばと次の手を打つ攻防。ゲームセンターの筐体越し、あるいはオンライン対戦の画面越しに作中のような「なかなかやるじゃん」「今のはうまかったぞてめー」を感じ取ってきたプレイヤーも少なくないのではないか。私は稀によくある。

インターネットのおかげで、ややもするとどの界隈でも頂上や上澄みばかりに目が向いてしまう昨今、格闘ゲームは特に敷居が高い、初心者お断りのような風潮があると思われがちだが、プレイヤー全員が宇宙人のような向上心に溢れた求道者というわけでもない。最初のお勉強と練習をちょっと、ある程度、初期投資と思ってそこはなんとか頑張ればまぁ大丈夫だろう、と思っている。

私はオンライン対戦で同じキャラクターを1年以上使い続けているが、まだまだ知らないことやできないことがたくさんあるし、もっと言えばチュートリアルを一応やったくせによく分かってないシステムがけっこうある。それでも同レベル帯でマッチングする仕様のおかげで、いわば浅瀬のような領域で相手とお互いの「知らない」や「できない」を突き合いながら充分楽しく遊べている。

宇宙人は向上心がすごいし理解力は宇宙レベルなので、もしかしたら次の話では私のいる浅瀬を飛び越えてしまい、もう共感できなくなるかもしれないと寂しさを感じている。一方で毎話着実に成長していく姿はとても眩しく、自分も遊びといえどもう少し深いところに挑んでみようかなと思わせてくれる。『ゲーミングうちゅうじん』を是非読んでみてほしい。