子育てパニック ウンチの話
食べ物は身体の中を通過して、便になって現れる。その便の様子を見れば、見えない内臓器官の健康状態が判るわけである。
簡単な事だが、なかなか学校では教えない。
なんでも子供のために教えていた厚洋さんだったが、人前でシモの話をする事は、「恥ずかしい事」という教育を受けていたのだろう。
「うんこの勉強をしたぞ。」って話は聞いたことがない。
「話のネタ本」を書いた時に、「性教育としての羊水の中の胎児の話」や「汗や尿の話」は書いていたが、流石に「うんこの話」は書かなかったようだ。
書いていれば、自分の体の変化をちゃんと見つけられ、「大腸癌」なんかにならなかったと思う。
身体の具合が悪くなっても、トイレに頻繁に通うようになっても、「小便」の話はしてくれたが、「便」の話しはしなかった。
緊急入院をした厚洋さんが「血便」をし、それを世話した真愛が
「先生。血便なんです。
こんなに大量に!」
と言った時、医師が「もうすでに遅かった。」と悲しい顔で反応した事を覚えている。
「毎日のうんこの様子」を自分で見ていたはずである。
トイレから出て来た厚洋さんに
「大丈夫?」
と聞いても、
「腹が痛てぇだけだ。」
と平静を装った。
自分の身体のことを自分で分かっていたので、
「病院に行きたくない。」
と言ったのだ。
真愛が泣いて懇願しても、病院に行かなかった。
あくまでも、「肺気腫が悪化して…。」と言い続けた。「うんこのこと」を話す事は恥ずかしい事だったのだ。
無理矢理入院させた事も「恨まれた」シモの世話を誰かにされることが嫌だったのだ。
「真愛が一緒じゃないと入院しない。」
と駄々をこねた。
だから、彼のシモの世話は真愛が全てした。
真愛自身も他の女性に頼みたくはなかった。
「シモの話はしてはいけない。
下品な事だから…。」
この考えが、二人に最悪な結果をもたらしたのだ。
身体の変調は、熱・吐き気・痛み・呼吸・脈・食欲・尿・便などから気づくべきなのであった。
そう、新生児は何も言わないが、彼らの健康は「便」が雄弁に語ってくれる。
我が子を育てる時に、
「便の色々と匂い」を観察して元気かどうかを見極めた思い出がある。
ところが、子どもが大きくなると、
「うんこの話」をすると、
「ここではそんな話はしません。」
と叱ったものだ。
学校でも同じである。
「うんこ」が公然と人前に現れたのは、
『Dr.スランプ・アラレちゃん」である。
可愛い「巻き巻きうんこ」を棒に刺して、走ってくる可愛い女の子の一言がちょっとだけ世の中を変えた。
しかし、大人たちは眉根を寄せて
「良くない漫画」と言ったのだ。
2000年に出会った絵本
「うんぴ・うんにょ・うんち・うんご
ー うんこのえほん ー 」
である。
この頃になっても、子供たちは「排泄する事」を極端に恥ずかしがったり、汚いものとして敬遠していた。
学校で、うんこがしたくても、冷やかされるのを恐れて我慢する子が少なくなかった。
考えれば、厚洋さんもそうだった。
真愛が妊娠、産前休暇の時に突然厚洋さんが帰って来た。
「どうしたの?」
「糞だ。学校なんかで行けるか?!」
と急いで帰って来ていたのだ。用を足したあとは、お風呂に入って、また、学校に帰って行った。
彼がどこでも、うんこが出来る人だったら、もっと元気に生きていたかもしれない。
人は、健康のために食べ物に気をつけるものだが、健康のために「うんこを観察する事は少ない。」
食べることと排泄は、切り離せない大切な健康管理の一つなのだ。
「うんこをするって当たり前なことなんだ!」
「うんこが出るって大切なことなんだ!」
と教えてほしい。
そして、言いにくかったら、絵本を使えば良い。
読み聞かせって方法でサラッと、楽しくおおらかに健康について語れるひとに育てて欲しい。
さて、この絵本には、4種類のうんこに名前がついている。
作者は子供たちが自分の排泄物に興味を向け易いように名前をつけたそうだ。
最初は「えーっ?」と嫌な顔をするだろうが、名前に合わせて意味説明することで、排泄物による健康チェックができるようになって欲しいものである。
うんぴ(下痢便)
食べ過ぎによる消化不良を起こしている場合。
冷たいものを食べすぎた時などの排泄物。
風邪を引いたり悩み事でストレスが溜まって
いたりする場合にも出る。
色は黄色っぽく臭いが強い事が多い。
ーお腹を暖めて、良く休養を取ろうー
うんにょ(柔らかめの便)
良く噛まずに食べた時、消化不良気味の場合に
出る。色は黄色っぽかったり、茶色かったり
する。
ーよく噛んで消化を良くしようー
うんち(快便)
バランスの取れた食事、規則正しい生活習慣
による健康的な体から出る。
色は綺麗な茶色(黄褐色)。ニオイは無い。
うんご(便秘気味の便)
色は黒っぽい茶色で、ニオイは結構臭い。
運動不足や水分不足で便秘になるという。
便意を我慢すると便秘の原因になる。
ー食物繊維の含まれた食べ物をたくさん摂って、
規則正しい生活をする事だー
食物繊維の多く含まれた
筍・牛蒡・蓮根・さつまいも・人参・蕗・アスパラガス・トマト・キャベツ・ほうれん草・りんご・夏みかん・西瓜・桃・葡萄・パイナップル・7分つき米・麦飯・黒パン・蕎麦・豆類・海藻・牛乳・ヨーグルトetcを摂る事。
ここまで書いていて思い出した。
真愛の一生懸命な看護の様子を見て、
「俺はコイツを置いて死ねない!」
と思ったらしい。(彼の詩に書いてあった)
真愛が彼の排泄物のお世話をすると
「どうだった?」
と聞くようになった。
自分の便が正常になったのか?
まだ、血便が続いているのだろうか?
と見る事ができなかったので、確かめるようになったのだ。
真愛も回復して来た事がわかる便を見ると
「今日は、とっても良いうんこでーす❣️」
と元気に言った。
彼が輸血をしてもらって、点滴で栄養をとり、好きなほうれん草の胡麻和えを食べられるようになった頃だった。
良いうんこの日は、彼の生きる力が見えた。
しかし、大腸癌の末期である。食べ物を食べると消化のために大腸が動く。動けば出血する。
「どうだった?」
と聞かれた時に、大量の下血を処理しながら、真愛は、言ったのだ。
「今日も良いうんこです。
よかったね❣️元気なお腹ちゃん❣️」
排泄物を処理室に持っていきながら泣いたことを覚えている。
我が母は、
「人間死ぬ時は、黒いうんこが出るんだよ。」
と言った。それは、内蔵の何処かから出血している事なのだ。
母は、87歳で入院した時、腸閉塞を起こして、1ヶ月も便が出ず管で排泄していた。
元気なうんちが毎日出るという事は、
本当に幸せな事なのだ。
お粥も食べられなくなった厚洋さんは、排泄物は尿だけになった。
幸いにも、亡くなる数時間前まで意識があり、痛まなかったことが、看取る者にとっては良かったことだったが、
「何故、もっと早いうちに便の異常に気づいてあげられなかったのか。」
という後悔の思いはいまだにある。
そして、排泄の後の手洗いや後始末もしっかりと教えておいて欲しい事だ。
真愛は高学年担任だったので、清掃分担に必ず「低学年トイレ掃除」を頂く。
4月には
「先生大変です!」
という呼び出しが多い。
低学年は用を足したあとの流し忘れが多い。
でっかい立派なうんこ君がそのままの困り顔で便器の中にいるわけだ。
それを流しに行く!
高学年トイレでも、便器の周りを汚してしまっても知らん顔で出てしまう。トイレットペーパーで拭き取るなどの後始末ができるようにして欲しいものだ。
多分、家のトイレでは、誰かに叱られているはずなのに…。
うんこには、菌がたくさん含まれていて安全で無い事はわかる。しかし、自分のしでかした事である。他人様に片付けさせるのではなく、自分で後始末ができる子に育って貰いたい。
小さい時に極端に大人が「うんこ」=「細菌」
=「病気」=「恐怖」という意識を植え付けたからである。
「細菌」への正しい対処法を教えて欲しい。
石鹸で良く手洗いをする事だ。
面白半分で「うんこ」に触れということでは無い。汚れた便器をそのままにしておく方が、次の汚染を引き起こす原因になり更に危険であることを教えるべきである。
コロナ感染症やサル痘が叫ばれているが、我々の生活圏内には、ノロウィルス・ロタウィルス・赤痢だって…。
細菌は、目や鼻や口などの粘膜から侵入するという。
その予防に一番適しているのは、石鹸での手洗いとそれらを口に入れない方法をとることである。
話が「うんこ」から別な方に進んでしまったが、
正しい「うんこ」の知識を持って安全に衛生的に生活をすることが大切なのである。
小さいお子さんを育てている方々、
お願いです。「うんこ」の正しい知識を教えてあげてください!
ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります