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亡き人と繋がる

 「毎日が発見」という雑誌に、哲学者の岸見一郎さんが【生活の哲学】というコーナーで、「生き方」とか「考え方」を提示してくださる。
 厚洋さんも哲学者みたいな事をよく話す人だったので、彼が元気なうちから、岸見さんの受け売りを話すと
「お前もやっと人間らしい考え方が
 出来てきたな?
 帰納法から導いた演繹法で説得できてる
 じゃないか?」
なんて、訳のわからない事を言って褒めてくれた。
 今回も素晴らしい考え方を知り、厚洋さんに伝えたかったが、厚洋さんに直接言えないので、noteに書くことにしたのだ。
 真愛が読み取った事なので、だいぶ捻じ曲がっていると思うが、
【逝ってしまった厚洋さんとの出会いにこそ、
 今生きている真愛の「生きる意味」を見つけ
 た話である。】

コールドムーンと火星

 過去と現在の繋がりという小題で、アントン・チェーホフの「学生」の中のイワンの考え方が挙げられている。
 イワンが焚き火の前にいるワシリーサとルケリアの母娘に声をかける。
 こんな寒い夜に使徒ペテロも焚き火に当たっていたと語り始める。ペテロの涙の話を聞いた母親が涙を流し、娘が顔を曇らせたとしたら、(自分が、今語った1900年も前の出来事が現在と繋がりを持っている事だ。)とイワンは思う。
 歴史は因果律の中にあって、ある出来事が必然的に別のある出来事を生起させる事になる。
 真愛は、厚洋さんが逝ってから、ずっとそう思ってきた。だから、岸見先生の一文で
「そう考えて良かったのだ。」と思えたのだ。
なんだか、小学生が先生に認められて舞い上がっていくような気分だった。

影も紅葉

 何かが偶然起きたように見え、しかもそれが不可解に思えたとしても、実はその出来事を生起させる出来事があったはずである。
 しかし、それを知らないので、途中の「歯車」が抜けているように見えるが、その歯車が見えて知る事ができれば、人生は不可解なものではなくなるという。
 歯車が全て揃い、その意味で起きた事は必然だと分かったからといって、人生が不可思議なものでなくなるわけではない。同じ出来事が同じ結果を引き起こすとは限らないからだ。
 同じ先生に学んだとしても、同じ本を読んだとしても、誰しもがそのことから大きな影響を受けるわけではない。
 真愛のように石見先生の一文で、「幸せ」を感じる者もいれば、「分かっていた事」と思う方もいるのと同じ事だ。
 人生を不可解なものと言えなくする理由は因果律の歯車では無く、「意味の歯車」であるという。
 誰かと出会ったことが、その時は気づかなくても、後になって自分の人生にとって重要な意味があったと気づくとしたら、それは「意味の歯車」を見つけた事になる。
 出来事に意味を与えるのは自分なのだ。
 愛しい厚洋さんを逝かせてしまってから、毎日のように考える事は、
「厚洋さんに出会えたから、今の真愛が存在す
 るのであって、今の幸せは厚洋さんに出会え
 た事。
 厚洋さんとの出会いに最良の意味を与える」真愛がいるのだ。

イエスを裏切ったペテロ

 イワンから話を聞いた母親はペテロの身に起きた事を我が身に起きたことのように感じ、彼女も自分が愛する人を裏切った事を思い出したのかもしれない。それでも、ペテロがイエスから赦されたように自分の罪を赦されると思ったかもしれない。
 この時ワシリーサの心は震えペテロの悲しみが彼女の心の中で共鳴したのだという。
 1900年という時空を超えて「歯車」が噛み合ったというのだ。この心の中の共鳴はイワンにも伝わった。
 共鳴は一人では起こらない。
 人と人が繋がる時に共鳴が起きる。
 人と人が繋がったと思える時…
(その人は目の前にいる時もあれば、死んだ人
 のこともある)…孤独ではなくなる!
 その通りだ。
 真愛は、彼が逝ってしまって寂しいこともあったが、コロナ禍で誰とも話さずじっとしていても、孤独感は感じなかった。
 常に厚洋さんと共にあった。
 台風で杉が家に突っ込んできた時も、怖かったが、厚洋さんが側に居ると感じた。
 日々の些細な事から、厚洋さんを思い出しnoteを書く事で、いつも何処にでも厚洋さんはいる。
 真愛は孤独ではない。

思い出と繋がる


 ただし、待っていては誰とも繋がれない。
イワンが焚き火に歩み寄ったように何か行動を起こすか、過去を振り返って今に繋がり、今の自分に共鳴する「意味の歯車」を見出そうとしなければ…。
    何とも素晴らしい考え方であり、素晴らしい生き方だと思った。
 そして、毎日のように厚洋さんのことを思い出し、今の真愛と共鳴していることは本当に幸せなことだと痛感した。
 こんな考え方ができるのも厚洋さんと岸見先生のことを話したお陰なんだよね!


ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります