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MAAちゃんパニック1cm

 三が日明けにぶっ飛んで転んだ!
 久々に使った「顔面制動!」である。
 厚洋さんが元気な頃から、真愛の転び方は大胆で漫画みたいな転び方をすると言われた。

 両手万歳!
 顔をかばって手を突きたいのだろうが、手は顔を通り越して顔面から落ちる。
「お前は馬鹿か?
 なぜ手が受け身を取らないんだ?
 手で顔を守れよ。」
と、おでことか鼻の頭に薬をつけ、絆創膏を貼りながら、
「ガキだ。ガキ!」
と笑われた。
 今日もかかりつけ医に同じように笑われた。

 厚洋さんが病に倒れた時、「俺の命を預ける」と信頼した先生なので、厚洋さんに言われている気がした。(泣きそなのに嬉しかった)
「そう言えば、まだ頭の方の検査して
 なかったよね。
 今日、ついでに検査しておく?」
と言われたが、
「いや、明日来ます。
 明日検査結果を聞きに来るつもりでしたので
 今日はこんなんなっちゃったので、
 この痛いのなんとか…。」
「ホント!派手に転んだんだね。
 大丈夫。軟膏塗って絆創膏貼ってあげる!
 じゃ!明日おいでね!」
 なんだか気持ちよく笑ってくれるので、痛みは治った。
 痛い時に大事なことは「大丈夫」の言葉と「笑顔」だ痛感。
 本当なら明日、持病の状態をチェックする血液検査の結果を聞きに行くつもりだったのだ。 
 しかし、お年賀を届けた知人のお宅の下り坂を楽しく歩いていて、残り1mぐらいの所から道路に向かってふっ飛んだのだ。
 目から火が出るというが、本当だった。
 パシッって感じたと同時に血が吹いた。
 右眉毛の上を打ち切ったのだ。
 顔面や頭はよく血が出るというが、タラタラと垂れてくる血を流したまま車に戻り、ティシュで抑えた。
 抑えた手も血だらけで、両手のひらと親指の付け根から手が出ている。

 11:50
 10分で病院に入れば診てもらえる。
 オデコにはテッシュをつけたまま、手にはテッシュを握ったままで運転した。
 11:58
 なんとか診察券が出せた。
「先週の血液検査結果を聞きに来ました。
 今、転んじゃって、それも診ていただき
 たいです。」
「大丈夫ですか?
 血は止まっていますか?」
「多分?!」
 お正月休み明けの病院は、だいぶ混んでいたので、受付のお姉さんも待たせる事を心配したのだろう。
(焦らない。圧止血が一番。)
 尋常ではなく混んでいた。休み中に具合の悪くなった患者さん家族が入院手続きをしていた。四年半前の厚洋さんの時の事をボーと思い出していた。
13:10
  只管抑えていたら、手のひらの血が乾いてきた頃に診察室に入った。
 全ての関節が痛いが全部動かせるので、骨折はないと思う。
 心配なので予定してまだやってなかった頭部のCT検査を明日やる事を予約して薬を頂いた

 その後、まだご挨拶に伺うお宅が有ったので絆創膏のまま伺った。
 話題は、当然「絆創膏」の話になる。
「明日になったら、きっと顔が腫れるので、
 今日のうちに伺いました。」
「でも、まだ手を付いただけ若いかな?
 厄落としです。」
と笑いながら話したが、情けないお年始回だった。

オデコの絆創膏

 まるで、カツオ君かのび太君の傷のような顔になった。
 帰って来て、厚洋さんに報告。
「ありがとう守ってくれて、
 このぐらいで済みました。
 骨折なんてなったら目も当てられない
 もんね。でも痛いですだ。」
「いい歳をして、そんな転び方をするか?
 懲りないやつだな!」
厚洋さんが、笑いながら言った気がした。

 原因は、ルンルン気分で足元に気を付けなかったからだ。
 最初のお宅は奥様がお留守で、旦那様とお会いすることができた。
 厚洋さんの事をとても可愛がってくださったご夫婦で子どもさんも真愛と厚洋さんの教え子さんというご縁の深い方である。
 旦那様は暫く入院をされていたので心配だったが、今日は元気な姿で、お留守番をなさっていた。
 近しい方が元気でいらっしゃり、お会いできることはたまらなく嬉しい事で、真愛の心は小躍りした。
 そして、お暇した後、ルンルン気分でちょっとの坂道を降りたのだ。
 が、残り少しのところで、つま先が引っかかって吹っ飛んだのだ。
 原因は、爪先が上がらなかった事。
 歳をとって転ぶのは、ちょっとした段差に引っかかって転ぶのだ。
 最近は、家の中でも転ばないように気をつけて、床に物を置かないとか、滑らないようなスリッパにするとか、厚洋さんが母のためにつけてくれた手摺りを触るとか…。
 様々に気をつけていたつもりだったが、気の緩みである。
 1cmもないただのセメントの坂道で、爪先を引っかけたのだ。
「厄落とし」と言えたのは、骨折をしなかったことと、誰かに迷惑を掛けなくで済んだことだ。
「一度あることは二度あり、二度とあったことは三度ある」とよく母に言われた。
 懲りない性格の真愛への注意だろう。
 真愛の顔には、3歳の時に七針も縫った額の傷と厚洋さんに殴られて切った唇の二針、そして、今回の右眉の上の傷が残るのだと思う。
 三度だ。
 もうこれで美しい顔には傷はつかないだろう。笑笑。

ポッコリお腹で

 さて、今回の事で、「知っている事」と「やれる事」は違うのだという事だ。
 プールで30分は泳ぎ、30分は歩くことにしている。ミストサウナでストレッチをしたり、リラクゼーションプールでけっこう体を動かしている。
 しかし、あくまで水中であって空気中ではない。真愛の体重が重力どおり掛かれば手のひらの皮はしっかりと擦りむける。眉骨は体重を支えられない。
 爪先をあげて歩くと意識をしていても常に意識することは出来ない。
 出来ないからこそ、少しずつで良いから、空中で足腰の運動・爪先を上げる運動・瞬発力を鍛えないといけないと思う。
 年になったら「ゆっくり安全に」は大事な事だが、通常の運動の時に「ゆっくり」では、鍛えられない。
 想定するというのは、その事態と同じ事をする事だ。
 防災訓練がより本当の時に近づけてやるのはそれが理由だ。
 高齢者の仲間入りをした方々に、提唱したい。
「若い気持ちでいる事は大切なことだ。
 しかし、体は確実に体力を落としている。
 気をつけよう1cmの段差でも!
 杖は付きたくないので、
 転ばぬ先の杖で、
 空中エクササイズをしよう。
 負荷をかけなくちゃ体力は付かんぞ!」

食事も大事

 骨が折れなかったのは、まだ骨が強かった事(骨密度は年齢の120%若い人と比べても80%近くある)と、多少体を捻って受け身をした(スポーツジムで運動してる)からである。
 一応、日頃のケアが良かったのだと思う。

 この後、そこら中が痛くなった。
 膝も打っている。
 肘も打っている。
 背中も脇腹も痛い。
 要するに、自分の体を守ろうと、とんでもない色々な筋肉が動いてくれたのだ。
 嬉しいが「痛い」のは困ったものだ。
(厚ちゃん痛いよ!
 寝られないかもねー!)
 明日は、9時に病院に行く。
 気の緩みで、たった1cmの段差に泣いた真愛である。
 御同輩!お気をつけてください。

病院で

 たかが1cm!されど1cmである。
 検査結果は、異常無し。
「大丈夫。頭の中も目の上も異常無しね。
 脳の萎縮もないし、元気だね。」
「頭は大丈夫でも体が動かない1cmで転ぶんだもの年ですね。」
と応えると
「No comment!」
と笑いながら
「そそっかしいということかな?
 クレアチニン値と血糖値が上昇!
 こっち気をつけましょうね。」
「はい!
 野菜を食べて塩分を控えます。」
と、誤魔化し笑顔で応えた。
 原因は、爪先が上がらない事と
 そそっかしい(落ち着きがない)事。
 更に、喉元過ぎれば暑さをすぐ忘れる性格である事だ。
「よく考えて落ち着いて行動する!」
と言い聞かせて病院を後にした。

ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります