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満望忌 故郷にありがとう

 愛しい人が亡くなって、自死を考えた女が沢山の方々に支えられて生き直している。
「厚洋さんがやりたかった事をやる。厚洋さんがやろうと言ってくれた事をやる。」この思いで生きている。  
 昨年は、厚洋さんが詩をつけてくれた「白い花にそえて」の本を出版する事ができた。
「お前の絵に詩をつけてやる。」と言う約束だからだ。
 そして、「愛しい人が好きだったジャズを生で聞く会」を開催しようと思った。
 だが、昨年は、台風15号で会場となる古民家がダメになり、喫茶店でやった。
真愛を支えてくださって「ありがとうございます。」の思いで、トランペットのコンサートを開いた。

 台風15号は、愛しい人が愛した庭も家も壊していった。停電と断水が続き、私は被災者になった。
 避難所に行き水を貰う。
 車のナンバーは、他県のものだった。近くの中学生が水を車まで運んでくれた。沢山の人の優しさに触れた。
 2週間に及ぶ被災生活が終わった時。真愛は、初めて「災害ボランティア」に参加した。
 受付に並ぶとやはり他県からの人が来てくれていた。
 私はおばあさんなので、避難所でブルーシート配りや物資配りをした。 
 その中で感じたことは、ボランティアではなくても思いやりのある人が多い。素敵な故郷であるということ。
 人は有事になると「思いやり」「優しさ」でいっぱいになるということ。
 そして、厚洋さんが言っていた
「人はどんな時でも平等であらねばならない。どんな差別も許せない。
あるがままに表現できるお前には、笑顔が一番似合う。
どんな時もどんな人にも笑顔でいることだ。
人が笑顔になる事をしたい。」

 そして、三回忌には中ホールを借り切って、無料コンサートを開こう。最後に募金をしてもらって、故郷に寄付しようと考えた。

 それが今日。9月9日(満望忌)重陽の節句だ。台風15号が来て避難生活が始まった日だ。
 ところが、このコロナ禍で「無料・不特定多数・三密」での開催することはできなかった。
 中止する勇気も必要だ。
 小学校教員として、隣町のホールを使って、大きなイベントを開催したことはあるが、このホールではイベントを開催した事がない。
 真愛は、神様がくれた「研修」だと思った。
少々費用は掛かるが、今年初めてでバタバタして失敗するより、仕込みからハネまで見て体験したら、来年は絶対上手くいく。
「研修」を有意義に使うことにした。
 ホール使用予定表には、「満望忌」と記された。関係者のみ(三人だ。)
 壮大な遊びに付き合ってくれるのは、お琴の先生と太鼓の先生。
 琴と太鼓と朗読で「颱風15号」と「自然を壊していく人間・しかし、優しさも持つ人間を表現したい。

 足はムカデに噛まれて腫れあがっている。その中で仕込みを見る。

 凄い!凄い!凄ーい!
 驚いた。
 「こんなに凄いことしてるんだ。」
 「影の力って、縁の下の力って 凄い。」

つづく

ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります