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子育てパニック 素敵

 ホテルのプールで素敵な親子に出会った。
 最近のnoteに「毒親」「高学歴親」なんて記事を連続で書き溜めていたので、親子連れを見ると妙に気持ちが落ち込んだ。
 最近の異常気象もあって、爽やかさとか爽快感なんてものを忘れそうな連続猛暑日記録更新の日だった。

プール

 その親子は、11時半にホテル併設のプールに入って来た。
 未就学児の女の子と手を繋いで、お母さんはサイドに降りて来た。
 女の子は水着になっていたが、お母さんは洋服のままだった。
 更衣室で娘の着替えを手伝ったのだろう。
 絶世の美人ではないが美しい清楚な人だった。
 お父さんは、大学生に見紛うような若い可愛い人だった。
 スタッフさんにプール使用の説明を聞いている家族の全てが笑顔で聞き、笑顔で話しているのが印象的で、リラクゼーションプールに入りながら、ぼんやりとその家族の動きを眺めていたが、さっきまでの蒸し暑い不快感は無くなっていた。
 水に浸かっているので気持ち良い開放感もあったのだろうが、その親子からも爽やかさをもらったのだ。
 ウォーキングコースを泳ぎ始めた女の子は、小さい割に浮きとビート板で良く泳ぐ。
 きっとスイミング教室にいっているのだろう。

スイミングスクール

 我が家の孫も連れて来たら、こんなように可愛く泳ぐのかなと思いながら見ていると、おばさま達が親子に声をかけていた。
 普段はホテルの小さなお客さんが来るとおばさま達は逃げ回る。
 当然真愛もその一人だ。
 理由は、
 子ども独特の煩い声を上げて、騒ぎまくる。
 自分の思い通りにならないと駄々を捏ねて
 物を投げる。
と見ているだけでも気分が悪くなる。
 だから、子どもの入れないスイムコースやリラクゼーションプールで、嵐が過ぎるのを待つのである。
 ところが、その親子に対してはちょっと違った感じがしたのだ。
 声をかけたおばさま達もそうだろう。
 親子が醸し出す「幸せ・可愛い」オーラに声をかけたくなったのだ。
 声は聞こえないが、「可愛い!いくつ?」なんて聞いるようだ。
 おばさまの質問に笑顔で対応した後、女の子はお父さんと20分ぐらいの間、バタ足を楽しんでいた。
 真愛もその子のお隣のコースを使っていつも通り30分ほど泳いだ。
 その間、お母さんはプールの見えるラウンジで娘に手を振ったり、笑顔で拍手をしたりしていた。
 真愛は、フリーレーンに入って、クールダウンのための水中ウォーキングを始めた。
 数回すれ違ったが、挨拶を交わしただけだった。当然、真愛にも彼女の笑顔がプレゼントされた。
 その後、2人はジャグジーに向かった。
 そこでもプールに来ているおばさまたちがチビちゃんを可愛がった。歩きながら気になるジャグジーを見てしまう。
 おばさま第二集団が、名前を聞いたり、年を聞いたりしているのだろう。
 遠くて聞こえないが、チビちゃんの周り中が笑顔になるのだから「可愛い!」といっているのだ。
 何度も同じ事を聞かれているのに、神対応をしているのだろう。お父さんもニコニコしている。

愛想が良い

 我が孫も他人様の前で大人しく、いや、愛想が良いのでよく可愛がられる。
 コロナ禍の前であったため、ショッピングモールでエレベーターを待っている時に、
「こんにちは。」と言われ、
片言で「こんにちは!」と返した。
 その一言で、おじいさんに可愛がられ、
「良い子だ。可愛い!」
といって飴玉をいっぱいもらった。
「ありがとう!」
なんて可愛いお辞儀も付け加えてしまったものだから、袋ごともらった。
 真愛祖母さんにしてみれば自慢の孫だった。
きっとあの子もそうなのだろう。
子どもの笑顔は周り中を幸せな気分にさせるのだ。

爽やかな日

 親子は小プールに行ったが、そこを使ってエクササイズをするためにたったの5分で出てきた。
 プールサイドを歩く時にも、大きな声を出さないようにお父さんに何か言われている。
「シー🤫!」って仕草が見える。
 頷いた女の子も「シー🤫!」って仕草をする。可愛い、そして素敵な子育てをしていると感じた。
 そんな素敵な子を育てたママは、プールサイドが見えるラウンジにいる。すでに1時半以上が経過している。
 最初は父子に手を打って見ていたが、そのうちスマホで何かをし始めた。
 しかし、必ず数分毎に目を上げて、父子を探す。目が合えば必ず笑顔で手を振る。
 手を振りあう親子は見ていても可愛いものである。
 最初に見た時は、優しそうなお母さんという感じで、美人だとは思わなかったが、人はその人の所作を見て「美人」「美しい人」と思うのだろう。
 笑顔が大変美しく素敵な女性である気がした。
 さて、泳ぎ終わった真愛はウォーキングを済ませて、ジャグジーに入った。

 さて、小プールから出て来た親子は、ウォーキングレーンに戻り、バタ足をしていたが、お父さんも泳ぎたくなったのだろう。
「お父さんが泳ぐので、
「ここから動いちゃダメだよ。」
といったのだ。
 女の子は、プールサイドに腰をかけさせられると、ビート板を胸に抱いてじっとしている。
 パパの元気な泳ぎを見て、口を開けながら何かを言っているが、叫ぶわけではない。
 元気よく水飛沫をあげてクロールを泳ぐパパがカッコよく見えたのだ。
 驚いた後、ニコニコちっさな手を叩いていた。
 パパはターンをして戻って来たが、コースを間違えて、スタッフさんやお客さんに指摘されてしまった。
 女の子は、その姿もじっと見ていた。
 戻って来たパパは恥ずかしそうにチビちゃんに何かを言っている。
 チビちゃんの笑顔。
 意味を理解し、苦笑したとしたなら凄い。
 大人の神対応である。
 それを見て感心していた真愛の所(ジャグジー)にチビちゃんとパパがやって来た。

爽やかな日

 本当にお馬鹿な真愛は、さっきから何度も繰り返し聞かれている質問をしてしまった。
「お利口さんね。
 お兄さんではないですよね?(父親です。)
 若いパパさん。大学生って思っちゃった。
 ごめんね。
 そうそう。お嬢さん。
 とってもお利口さん!感心しちゃった。
 パパが泳いでいる間、
 ずっとじっとしていたものね。
 偉いわ。
 おいくつなんですか?」
「ほら。年は幾つですかって?」
「5歳です。年中です。」
 はにかみながら答える女の子は可愛い。
 褒められているのが恥ずかしいという仕草も何とも愛らしい。
 おばあさんはついつい言ってしまった。
「あなたは、本当に幸せ。
 素敵なパパと優しくて綺麗なママがいて。
 お一人なんですか?」
 困ったばあさんだ。
 人のプライベートにすぐ踏み込んじゃう。
 そんな嫌な婆さんにも神対応のお父さんと娘さんだった。
 親子3人で、ホテルに泊まってプールに遊びに来たという。
 バスで来たので、日長プールで遊んでいたそうだ。
 困ったばあさんは、ホテルから歩いていける有名なパン屋さんやちょっとした公園がある事を知らせた。できるならば、この親子に近くの坂東三十三札所の高倉観音に連れて行ってあげたかった。
 そのくらい魅力的な親子なのだ。
「毒親」なんてnoteに書いたが、そんな親もいるだろうが、こんなに素敵な親子もいるのだ。
「楽しいお話をありがとうございます。」
「こちらこそ、素敵なご家族に出会えて
 幸せな気分です。
 じゃ。バイバイ!」

 二人より先にジャグジーを出た。
 そして、帰り際、ママのいるラウンジを見ると…。

素敵な家族

 なんと!
 ママは、文庫本を読んでいた。
 スマホではない。
 本を読んでいるんだ。
 すでにページは半分以上過ぎている。
 この知的な女性の母親としての素晴らしさ。
 いや、素敵な人間が素敵な子育てをするんだと納得、納得であった。
 我が家に帰って来ると、青い空に白い雲が浮かび、大地に真っ白い百合の花が咲いていた。
 なんだか、あの家族をそのまま表現したらこんな風なんだろうなと思って写真を撮った。
 素敵な家族だった。

ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります