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ニャンコの喘息

 今月で10歳になったはにゃんこの具合が悪そうなのだ。厚洋さんがメールアドレスに入れるほど可愛がっていたチャーちゃんの呼吸が荒い。
 我が家に来てから一年だったあたりで、
“ケホッケホッ”と咳をした。
 厚洋さんと一緒に寝たあとでするので、
「あなたのタバコのせいです。
 チャーちゃんが喘息になったら可哀想。 
 きっとあなたの副流煙のせい!」
と、文句を言った事がある。
「猫が肺がんになんかなるもんか。」
と言っていた厚洋さんが、肺気腫を患った。

 厚洋さんの闘病中は、チャーちゃんにも会えず寂しがっていたので、病室にはチャーちゃんと真愛の写真を飾った。
 看護婦さん達が、写真を褒めると、
「チャーちゃんだ。
 可愛いだろう?
 同居人だ。怖いぞー!」
と、私の前でもふざけていた。
1000日前のことである。

「チャーは、元気か?」
と心配する彼に、
(喘息が酷くなっている。)
とは言えなかった。
 彼は大腸癌で様々なところに転移をしていた。手術で大腸全摘して、人工肛門をつけたらという考えもあったが、「肺気腫」を持っている人の手術は出来ないと大病院の若い医師に言われてしまった。
 死を待つ床についた彼に、「チャーちゃんが喘息で苦しそう。」とは言えなかった。
 チャーちゃんの凄いことは、彼が「外泊許可」をもらい1日だけ帰ってきた日がある。
 その時は、彼のベットの周りをウロウロし、ベットの足元で寝ていたが、一度も喘息のような発作は起こさなかった。
 チャーちゃんと真愛と三人で寝た数日後、厚洋さんは、ひとりで逝ってしまった。
 それから981日。
 どうも具合が悪そうだ。

 発作が起きなければ、家の中の一番快適なところに陣取って、真愛の活動を監視する。
「食べ過ぎないこと。
 スマホの見過ぎもダメ。
 少し運動したら?」
と。
 自分だってこのニ年で丸々と太り、お腹を揺らして歩くようになった。

 作業妨害だってする。
 どうも、真愛の視界に入りたいらしく、ついて回る。
 しかし、余り歩き過ぎると、息切れがするようで、口呼吸をする。
 安静にしていれば、ちょっとは戯れるし悪戯っ気もでるのだが、そこはニャンコなので、
動いては、ハァーハァー。
休んで、動いては、ハァーハァー。
 見ている方が気が気ではない。

 厚洋さんがいなくなり、独りで泣いている真愛に寄り添い、励ましてくれた最愛の同居猫である。
 彼女の具合の悪さは、我が事のように「不安」を大きくする。
 自分が来月手術を控えている事もあり、離れて暮らすのが不安だ。
 一昨日のブラッシングで、首輪のところの毛が抜けているのを発見した。首輪の端があたって擦れてしまったようだ。安物買いがいけない。
 そこで和布の残り切れで、首輪を作った。

 少しは楽になったのだろうか。

 横になるのだが、十分もしないうちに、座ってじっとしている。
 相変わらず、喘息の発作のような咳もする。
とても、心配なのだが、
 よく食べて、でっかい〇〇〇をする。
 真愛の入院と一緒にチャーちゃんも動物病院のホテルに入る。
 その時に、きっと、真愛以上のお金がかかる病名を言われそうだ。
 彼女のために貯金を切り崩さないとなあ。
 それでも、元気で長生きしてほしい。
 厚洋さんとの思い出のニャンコだから。

ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります