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愛着障害

愛着(あいちゃく、あいじゃく)は慣れ親しんだ物事に深く心を引かれ、離れがたく感じる事を言う。
 だからこの歳になるまで、「愛着」とは物に対して湧く感情だと思っていた。
 亡き厚洋さんの色褪せた作務衣は愛着があって捨てられない。
(側から見れば馬鹿みたいな事だ。
 とって置いても、厚洋さんがまた着ることは
 絶対ないのに…。
 彼の使っていた物は、捨て難く後生大事に
 とってある。)
 そういった物に対して使うのが「愛着」だと思っていた。
 因みに、仏教における愛着は煩悩の一種。
 これに対応するインド古語はたくさんの種類
 があり、基本的な働きとしての愛着をパーリ 
 語でローバ(lobha)といい、
 伝統的に「貪」と漢訳される。
 意味は、ある対象を気に入るという原始的で
 単純な心の働きを指す。
 対象への拒絶である瞋(dveza)、
 無関心である痴(moha)とあわせて三毒とも 
 言われ、苦しみを生み出す原因として扱わ
 れるという。
 「愛着」は「拒絶」」「無関心」と同レベルの【毒】なのだ。
 漢訳された「貪る」っていう表現がとても分かりやすい。

ニャンコの爆睡・頭を支えて攣ってしまった腕!

 ところが、「愛着障害」という言葉を目にした。
 和歌山大学の米澤好史先生は、
「愛着とは、特定の人と結ぶ情緒的な絆のこと。」という。
「愛着 attachment」
 誰か特定の人ときちんと繋がっているという思いがある事で心は安定し、困難な事にも挑戦する意欲が湧く。
 また、愛着が持てることで、不安やストレスを上手にコントロールしながら他者とうまくコミュニケーションすることができるそうだ。
 人は特定の人と愛着を形成する事で、社会生活をする上で不可欠な力を育むとも言われる。
 この「愛着」の力は、幼少期だけでなく大人になってからも必要なものでもあるそうだ。
 多くの生き辛さの原因につながることもあるらしい。

飛び込む

 真愛は、母乳が出なかった。初乳には沢山の栄養があり、「しっかり飲ませると賢くなる」と聞いていたので、マッサージまでしたのに、タラリと数滴出ただけ、
「このオッパイは、パパのもんだなぁ!」
とY丸病院の先生に笑われた。
 乳腺が脂肪に圧迫されていたらしいが、側にいた厚洋さんも真愛も赤面だった。

 翌年の夏。
 プールが始まり飛び込みを教える頃になって、厚洋さんが話してくれた。
「真愛。
 すでに遅いが、赤ちゃんを母乳で育てるのと
 人工乳で育てるのとでは、随分性格が違って 
 くるらしいぞ。
 プールの中に母親が入って、手招きすると、
 母乳で育った子は、母親に向かって飛び込ん
 で来るが、
 人工乳で育った子は、怖がって飛び込まない
 そうだ。
 その差を補うために、たくさん拓を抱かない
 とダメだね。俺もいっぱい抱いてやる。
 俺が取ったおっぱいの分な!」
 彼が「愛着障害」という言葉を知っていたわけではないが、「親子の絆→母の腕に抱かれて母乳を飲むこと」と捉えていたようだ。
 40年以上も前のことだが、はっきりと覚えているし、拓が中学生になるまで真愛の頭の隅っこに引っかかっていたことだった。

 愛着に問題を抱えた子に見られる行動として
 特定の人との絆がない分自分が守られるか不安なため疑心暗鬼が続く。
 愛情欲求ご強く、自分に注目して欲しいがために、大きな声を上げたり、問題行動を起こしたり、目立つ事をしたり周囲の気を引く。
「私には出来ない」とネガティブ発言が多い。
などが挙げられる。
 現在の教育現場では、困った行動が続いた場合は、発達障害と考えて関わることが増えているが、その中には「愛着の問題」も併せて持っていることも多いという。

フキの下の神様 コロポックル

 息子は家族中から愛されていたのだが、本人に伝わっていたのだろうかと、真愛の不安と後悔を鮮明に蘇らせられた話だったが、よくよく読んでみると、
「愛着」
・特定の人と気持ちや感情でつながる
 情緒的な絆のこと。
・親に限らず、誰でも特定の人になりえる。
・乳幼児期だけでなく、
 何歳になっても形成できる。
と記されていた。
 人は人と繋がっていると心が安定し、困難な事にも挑戦する意欲が湧くのだ。

 人工乳で育った我が息子も、お父んの静かな愛情とお母んの激しい愛情で繋がっていたらしく、色々あったが良い男に成長し、素晴らしい伴侶に出会い、「心は安定し、困難な事にも挑戦する姿を見せている」のだ。

 今、愛しい厚洋さんを逝かせてしまい、「特定の人と結ぶ情緒的な絆」が無くなってしまった真愛は、「愛着障害」なのだろうか?
 子どもではないので、もう情緒は安定しているのだろうか?
 亡くなった厚洋さんを今だに思い続けていることが「愛着」なのかもしれない。

亡き夫と繋がる気持ち

 もう直ぐお盆だからこんな記事が目に入ったのかなとも思う。
「愛着障害」という言葉。

ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります