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俳句の部 独占

 以前にも書いたが、教員を退職してから公退連と言う退職公務員連盟に入った。
 年に数回お便り(新聞)が来る。
 全国、千葉県の退職公務員の様子が書かれている。
 役員の方々は大変だと思うが、いろいろなものに目を向けたいと思っている真愛にとっては、小さな新聞もどんな広告も発見があるので面白い。嬉しいたよりである。
 新聞や〇〇便りには必ずと言って良いほど、歌壇ある。
 俳句・短歌・川柳等々面白い。
 このnoteの中にも俳句を紹介してくださる方がいて楽しく読ませてもらっている。
 母や厚洋さんの影響である。
 自分でも捻るが人前に出せるほどのものでは無い。(と言っておきながら、最近Instagramに写真に添えて俳句を載せている。笑笑)
 心動かされる何かを見ると写真が撮りたくなり、その写真にその時の思いを添えるのだ。
 要するに、俳句だけでは力がないので、映像化できない真愛なのである。
 もっと季語集を読み、比喩・倒置・体言止め・対句・反復・省略・呼びかけなんて技法を学べばちょっとはましな句が作れるのだろう。
 厚洋さんは丁寧に教えてくれたが
「技法なんて小細工は致しません。
 自分の思いを鼓動と言葉に乗せるだけです」と言って馬鹿にされた。
 真愛にとっての宗匠は厚洋さんで、学級通信に載せる俳句も彼に一捻りしてもらった。
 母は、短歌が好きで、結構綺麗な仮名文字で短冊に書いて楽しんでいた。真愛が小4の時に母の行く短歌の会に連れていかれ、出されたお菓子が魅力的で何度もついて行った。
(友蔵について行くまる子ちゃんと同じである。)
 中学になると、町内の有線放送で真愛の作品が紹介された。その頃好きだった男の子に
「お前、結構上手いんだな。」
と褒められて「詩歌」がさらに好きになった。
 彼の苗字が同じだったと言う理由で
 石川啄木にハマった。
 後々、啄木が釧路の新聞社にいたことを知った。同じ釧路の新聞社にいた厚洋さんも啄木の暗さが好きなことも分かった。
 縁とは不思議である。

大森浜の啄木と

 今回の千葉県退職公務員便りの俳句の部。
 なんとなんとなんとである。
 すべてが君津支部の方々だった。
 聞いたことのある校長先生の名前が並んでいた。
 ふと思い出した永嶌みね子先生。
 若い頃から朝日歌壇に投稿し、何度も一席をとっていた。
 みね子先生は音楽の先生で、君津の音楽部会の重鎮である。
 ど素人の真愛が指導をした合唱に対して
「あんた、頑張ってるわね。
 いい子達育ててるわよ。」
と、いつも褒めてくださった。
 みね子先生に褒められるとやる気が出る。
 30年間も合唱指導が続けられた。
 子どもの声質と選曲が合うと良い感じの合唱ができる。毎回、選曲の時は厚洋さんに相談していた。
「今風の流行りの合唱曲ではなく
 お前の学校の子の声にあった歌。
 子どもが気持ちよく互いの声が聞ける曲」
 合唱の指揮なんてした事がない彼だが、
「基本は合図だ。
 バラバラな気持ちや音をひとつの和声に
 するために…。お前はよく聴け!
  尻は振るな!」
と助言してくれた。
 だから、みね子先生に褒められるのは彼のお陰でもあった。彼が亡くなり真愛は懐かしい合唱曲を聞き、みね子先生のお宅に伺った。
 その時に先生の短歌の素晴らしさを知った。
(女性部の大会では、先生の言葉使いの巧みさと美しさ・力強さで同志たちを鼓舞していたのは、短歌を作り続けていたからだと思った。)
 その後入院され、病院に遊びに行くようになった。
 残された時間を過ごす中で
「あんたの絵は綺麗だわ!」というので、先生の掲載された短歌に真愛の絵をつけて描いてみた。

みね子先生の歌


 短歌の後に真愛の書評も書かせてもらった。
「これ!いいわ❣️
 これ、出版しましょう!」
と仰ったが、
「焦らず、ご家族と相談して…。」
とお茶を濁したが、
 先生の朝日新聞に掲載された歌に真愛の絵をつけて、先生の講演内容とか全国女性の会への原稿を載せて、手作りの本を10冊ほど作った。
 彼女の好きな真っ赤な表紙。
 先生は病床で泣いて喜んでくれた。
 その2週間後に亡くなった。

 厚洋さんが亡くなったときに泣きつきに行った先生だ。
 ご自分用に買った大好きなシャインマスカットを真愛に渡すと
「これを食べて、もう泣くのはやめなさい。
 あんたが生きて大好きだった旦那のことを
 伝えたらそれが1番良いことよ。
 何があっても笑顔を絶やさずに
 あんたらしく生きなさい。」
と言ってくださった先生だ。

 与謝野晶子な歌を読まれる歌人だった。

 君津!
 私が教員をずっと続けられてきた君津は言葉を大事にする先生がたくさんいたのだ。
 そんなことを思いながら懐かしい先生たちの俳句を読んだ。

 コスモスの戦(そよ)ぎし庭に郵便夫
 朝露の草に紛れし野の仏  
        君津支部 伯ヶ部喜久男氏
 年越しに社誘う竹灯篭
 もみじの手豆零しつつ福は内
        君津支部 鈴木 毅氏
 えにしえの恋歌の碑や夏薊
 満月や真横にジュピター引き寄せて
        君津支部 百戸 三郎氏
 卵頭へ一筋下りし蜘蛛の糸
 沙羅一花茶事懐かしや躙り口
        君津支部 石井朝子氏

 君津支部ご独占である。
 真愛も厚洋さんも国語部会だった。
 君津支部の国語部会から数回、全国大会に行かせてもらった。
 言の葉を大切に集めて、さまざまに散りばめる素敵な地区なのだと思った。
 良い時代に素晴らしい先輩たちに囲まれて幸せな教員生活を過ごしてきたのだとつくづく思う。

ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります