終わり初物
「初物75日」
「初物を食べると75日長生きできるわ!」
大正生まれだった母は、その季節の初物を食べる時必ずそう言った。
「初物」という考え方は、「江戸時代にさかんに言われた」ことで、落語や川柳の中にもその事が面白おかしく語られている。
昨日、北海道の義妹から「アスパラガス」が届いた。
厚洋さんは、アスパラガスが送られてくると、必ず「アスパラガスの網焼き」を楽しんだ。新鮮な初物アスパラガスは、柔らかくて筋がなく焼くと美味しい。
故郷から送られてくる初物の味は、懐かしさ・嬉しさ・切なさもあって厚洋さんは饒舌に「初物」の話をしてくれた。
(話のネタ 小学館)を書いたほどの雑学博士だから、毎年聞いた。
「目に青葉 山ほととぎす 初鰹」って言って
ね。これが江戸の夏の風物詩というより、江
戸っ子の心意気さ。
そりゃ、歌舞伎でも『髪結新三(かみゆいし
んざ)』を見ても分かるだろう?
誰よりも早く初物を喰う。1番がいいんだ。
『女房を質に入れても初鰹』って金が無くて
も食べたい初物なんだね。
初任の時の山口校長が好きでさぁ。
『オイ、奧平、かつお買ってこい!』
って言われてね。俺は好きじゃないけど
一つ返事で買いに行ったさ。Maaが貞元に教
生に来たのも来たのも初夏だったなぁ!」
夏の初物をおつまみに出すと出てくる話だ。
なんとなんと、今年の初鰹は、1ヶ月遅れで今日、水揚げされたとのこと。
嬉しそうに美味しそうに食べながら晩酌をする彼を見るのが嬉しくて、
「これ初物よ。」
って、必ず偉そうに言った事を思い出す。
昨日は、一人で「アスパラガスのバター炒め」にした。
お店で買うアスパラガスの切り口は、乾燥して硬くなっているものが多いが、送られてきたアスパラガスは、切り口がまだしっとりしていた。
日本の四季は、3ヶ月でOne seasonなので 「75日」というと、2ヶ月と15日。
要するに季節の到来よりも15日前あたりが、走り物、初物の季節なのだ。
初物を頂く時は、東の方向に向かって笑いながら食べると良いとも聞いた。1番新鮮で栄養のある物だから、エネルギーの象徴である太陽の昇って来る東を向き、幸せな事だから笑顔で…。
免疫力アップになる事間違いなしだ。
ところが、義妹にお礼の電話をすると
「良かった。ごめんね。遅くなっちゃって、
アスパラガスはもう終わりなのよ。」
って言われた。
『終わり初物』だ。
野菜や果物で、多く出回る時期が過ぎてから成熟したものを、初物と同様に珍重していう言葉。 穏座(おんざ)初物。末の初物とも言う。
丹精込めて育てたものは、最後までしっかりと収穫する。真愛が育てた「さやえんどう」「ソラマメ」も最後まで頂いた。
「ああ。これで来年までは、買って食べなくちゃ!缶詰や冷凍かな?」って思うと本当に貴重・珍重の思いが分かる。
アスパラガスは、終わり初物だった。
最後の晩餐⁈
おっと!最高の晩餐になった。
そして、思い出した「中島みゆき」さんの
ー終わり初物ー
こんな言葉を 今どきわかる人がいるかしら
言葉は変わる 暮らしは変わる
今では 何んて言うかしら
あなたに届けたくて 今日のうち届けたくて
急いだ理由(わけ)を手紙に書いて
預けてゆくから 読んでね
終(おわ)り初物(はつもの) 季節見送り
手に入ったから おすそわけ
終(おわ)り初物(はつもの)
明日(あした)にはもう
どこにもないから おすそわけ
過ぎゆく季節 嘆くより
祝って送るために
ひとり娘のあの子が 遠い国へゆくらしい
いろんな理由(わけ)がそれぞれあって
掛けうる言葉が足りない
見送りにはゆきません
仕事を続けています
預けておいた包みの中に
借りてた詩集も入れました
終(おわ)り初物(はつもの) 季節見送り
手に入ったから おすそわけ
終(おわ)り初物(はつもの)
明日(あした)にはもう
会えなくなるから おすそわけ
過ぎゆく季節 嘆くより
祝って送るために
終(おわ)り初物(はつもの) 季節見送り
会えなくなるから おすそわけ
過ぎゆく季節 嘆くより
祝って送るために
過ぎゆく季節 嘆くより
祝って送るために
亡くなった厚洋さんを思って嘆くより
厚洋さんが素晴らしい人生を
真愛にくれた事を
祝って 終わり初物頂きました。
ブルーベリーも旬になりました。
ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります