子育てパニック 歯磨き
スマホ歴3ヶ月。孫は1歳半。お互いにどうして良いやらドタバタしていた頃の2人である。
離乳食の最中で、日本語が通じているような宇宙人であった。
ママが第二子の出産のために入院して、息子の家で孫との3人暮らしになった。
厚洋さんの49日の法要を済ませて、お骨と一緒に行ったのが、初めて息子の家に行った日だった。孫と一緒の部屋で過ごすのも、ばぁちゃん業も初めての日だった。
初孫が産まれて、息子も嫁さんを連れて何かと我が家を訪れてくれていたが、厚洋さんの具合が悪くなり、息子の仕事も忙しくなり、更に嫁さんの第二子の懐妊で、しばらく会えないでいた。
厚洋さんが亡くなり一人ぽっちの真愛を心配して、息子の嫁さんは大きなお腹で我が家に泊まってくれた。
しかし、いつ生まれるか分からない状態で、車に乗せるわけにいかない。更に、母親を早く亡くしていいる嫁さんの母親代わりをしなければならない。(第一子の時には、おばさまに世話になったというが、気が利かない義母だったのである。)
もう一度幼児の面倒を見るなんてやれるか分からないが、厚洋さんがくれた機会だと思って、
「真愛で良ければ、暫く世話をさせて。」
と言えた。
慣らしのために何度か一晩泊まっては帰ることをした。何度目だったろうか。厚洋さんの誕生日に産気付き、翌日めでたく出産。
その後一ヶ月近く、孫と一緒に息子の家で過ごしたが、ママがいない入院中が大変だった気がする。
離乳食の作り方は、おつまみ作りより楽だった。おむつの取り替えも、寝かしつけも暫く通って練習した甲斐あって上手くできた。
1番困ったのが、歯磨きだった。
ママはいとも簡単に上手に磨いているのだが、真愛がやると噛むだけでちゃんと磨かせてくれない、磨けていない気がした。
厚洋さんも歯周病が酷かったし、息子も綺麗な歯並びだがむし歯で苦労していた。要するに、歯磨きのさせ方が下手な真愛だったのだ。
口腔内の衛生が寿命と大きく関係しているのは、厚洋さんが亡くなってから気づいたような間抜けな真愛である。嫁さんとしても母親としても残念な女である。
息子の嫁さんは素晴らしいママだった。
しっかりと口腔内ケアの大切さを理解し、息子にも孫にも実践させていた。
だから、真愛が見ている間に「むし歯」ご出来たらどうしようという不安もあった。
きっと、真愛の磨き方は、前歯の上唇小帯をゴシゴシと触っていたかもしれない。
それでも磨かせてくれていたから良かったもののそこが痛くて「歯磨き」=「痛い」と思ってしまう子もいるそうだ。
春爛漫の桜の下で、ママの作ったお弁当に
「いいお顔!」をしている孫たちは、2人ともむし歯がない。歯並びも美しい。
4歳9ヶ月と3歳3ヶ月。
上は、保育園にも通っている。
もちろんむし歯が無いのは、ママの努力の賜物である。我が家に泊まりにきても、しっかりママが歯磨きをしているし、自分でさせた後、「仕上げ磨き」をしている。
真愛と2人でお留守番をした孫も、そろそろ乳歯が抜けて、永久歯が生える頃をむかえる。
真愛が小学校の教員をやっている時、保健の先生から「歯の磨き方・大切な下顎の第一大臼歯」の話を聞いたことがある。
乳歯と永久歯には構造上の違いも存在し、歯は最も外側にエナメル質があり、その下は象牙質で覆われているが、乳歯は永久歯と比べると、エナメル質と象牙質が薄くなっているという。
子どもの歯である乳歯は、ある時期を迎えると大人の歯である永久歯へと生え変わる。
最初に生えてくる大人の歯は、第一大臼歯と呼ばれる奥歯。
6歳に生えてくることが多いため、6歳臼歯とも呼ばれている。
(上の孫がそろそろ体験することだ。)
そして、乳歯から永久歯への生え変わりは、一本一本ゆっくりと生え変わるので完了するのが12歳・6年生ぐらいになるのだ。
小学校入学から卒業まで、保健の先生が苦労する「歯磨き」である。
分かっていたようでも、頭だけの真愛だった。
厚洋さんの癌がわかり、入院中の口腔内ケアをして(えっ!こんなに歯がなかったの?)
「口の中に人の手が入ると、気持ちが悪くて吐き
気がするから、歯医者は嫌いだ。」
と言って歯医者さんには行かなかった人だ。
歯周病と癌発生率の関係も知らなかった二人だった。小学校の先生でありながら…。
永久歯は下顎の第一大臼歯から生え始め、続いて、下顎の前歯が生えてくる。
中切歯と側切歯と呼ばれる前歯で、下顎が生えそろうと、今度は上顎が生え始める。
この時点で、子どもの年齢は7歳程度。
その後の生えてくる順番には、何パターンかあるが、一般的には第一大臼歯と前歯が生えそろうと、第一小臼歯が生え、続いて、犬歯、第二小臼歯、第二大臼歯という順番で生える。
六歳臼歯は完全に生えるまでに約1年かかるので、その間は手前の乳歯より背が低く、普通の磨き方ではハブラシの毛先が届かず、むし歯になり易いという。
子どもの健康を守る大切な歯だけに、むし歯にならないように、生えはじめの小さい歯のときからきちんとケアしたいという。
磨いてあげているママに聞いてみた。
「歯磨きは、もう自分でさせるの?」
「はいかな?いいえかな?
自分で磨かせても仕上げ磨きは私が見ます。」
素晴らしい回答が返ってきた。
生えたての永久歯は、まだ柔らかくてむし歯になり易いので、まだまだ仕上げ磨きはしなくてはならない。
最後の12〜13歳頃までは、仕上げ磨きをしてやった方が良いとは言え、修学旅行でママの代わりに先生がチェックなんて…。
イジメにあいそうである。
そこで、高学年になると保健の学習でもやったが、歯垢が赤く染まる歯磨き粉を使って「自分の磨き方のチェック」をさせる。
子供用の電動歯ブラシを使わせるのも手。
今では親のスマホと連動する製品もあるらしい。多少のお金はかかるかもしれないが、健康な歯を維持することは【癌予防・成人病予防】である。
真愛は、孫と一緒に過ごして歯磨きの難しさとママの努力の賜物である事に気づいてから、歯医者さんに歯のお掃除をしてもらうようになった。
最初は3ヶ月おきだったが、今では一ヶ月毎に行っている。
お婆さんの歯でも変化は多く、硬いものを食べて欠けてしまったり、治療したところが弱ったりする。
息子のお友達の歯医者さんのホームページに
「お茶をしに行くように、気楽に行こう。」みたいな言葉が載っていたが、素晴らしい事だと思う。
喫茶店に入って払う料金を、一回ぐらい歯医者さんにまわすことが良い。
チョコレートやグミを食べるのが大好きな真愛である。むし歯のリスクも大きい。
と思っていたら、食べ物に問題があるのではなく、食べ方に問題があった。
ダラダラ飲んだり食べたりがいけないのだ。
糖分を含む食品が口の中にとどまる時間が長ければ長いほどむし歯リスクも高くなるという。
外出先で歯磨きができない時は、水でうがいをするといいという。
小さな子はうがいができないので、水を飲ませるだけでも良いそうだ。
うがいは口の筋肉のトレーニングにもなるので、「グチュグチュ」うがいをするといい。
こんなに頑張っても、むし歯ができ易い年齢は、中学・高校生であるという。
部活動でスポーツ飲料を飲んだり、テスト勉強中にお菓子を食べたりする機会が増えることに加えて、「親の手」が離れてしまい歯磨きが手薄になるのである。
なんだか凄くよく分かる。
真愛のむし歯が多くなったのは、就職して自分で好きなものを買えるお給料をもらい、夜遅くまで仕事をしながら、コーラとポテトチップとポッキーを食べていた教員の頃である。
いくら磨いたって、長期間食べ物が口に入って居れば、むし歯にもなるし、おデブにもなる。
おばあさんになってからでは、気づいても遅いのだ。
孫たちが、ママの手から離れて中学校になっても真愛のようにはならないで欲しいと願う。
ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります