子育てパニック 箸の持ち方
朝ドラ「カムカムエブリバディー」を見ていて気がついた。「箸を上手に使える子は、上品な子」だったということ。
ヒロインの安子さんが、嫁ぎ先の義母に
「息子が戦死したことはアンタのせいじゃ!」
と責められ、居た堪れず、娘「るい」を連れて家を出る。
しかし、疲労困憊、腕の骨折を機に嫁ぎ先に出戻る。その食事でのシーンで義母が言う。
「るいちゃんは偉いね。
お箸の使い方が上手じゃ。」
すると、安子さんの味方である次男坊が
「そうじゃ。
義姉さんがしっかり躾けたからな。」
と空かさずフォローする。
真愛も小さい頃、よく褒められた。
「片親で育っているのに、行儀が良い。
お前周りもしないし、
何より、お箸遣いが上手だね。」
お行儀が良ければ、大人に可愛がられる事を知っていたので、狡い真愛は「完璧な上品な子」だった。更に、自分の生活を見下されることがない事も分かっていた。
「武士は食わねど高楊枝」いや、「箸に始まり箸に終わる」
落ちぶれはしたが、良家のお嬢様だった母の意地が真愛のお箸遣いを完璧にした。
当然、お箸のタブーもみっちり躾けられた。
食べる物も少ない食事だったので、教え易かったのだろう。
1. 直箸(じかばし)
テーブルを囲んでいる時に、取り箸が無いとそのまま自分の箸で取ってしまう。箸を逆さにして持ち手側で取るなんてダメダメ。
まず取り箸がないか確認し、できたらお願いする。どうしてもない場合は、周囲の人の了解を得たうえで、直箸で取る。
2. 逆さ箸
箸を上下逆さにして用いる「逆さ箸」のほうが、直箸よりも良さそうだが、衛生面でも嫌。
しかし、地方では逆さ箸で漬物を取って回すなんて事ザラ。母の上品は鼻持ちならない行為でもあったと思う。
3. 持ち箸
箸を持ったまま、その手で器を持つ「持ち箸」
箸はいったん置いてから器を取らせられた。
ついついやってしまうのは「寄せ箸」である。
叱る母も上品を求める厚洋さんも居ない今は、ちょっとやってしまって、怠惰だと思う。
4. 渡し箸
皿や椀のフチに箸を“橋”のように置いておく「渡し箸」箸は箸置きに。
箸置きがない場合は、箸袋の上に。
誰かに食事を振る舞う場合は、箸置きを添えることを忘れないことだ。
真愛の嫁ぎ先は、箸立ての中にドーンと箸が詰まっていた。ちょっと引いたが、その家にはその家の家風がある。
ドーンと立てられた箸立ての中に、「これは真愛ちゃんのよ。」と赤い箸が入れてあったのがすごく嬉しかった。
(ああ、私はこの家の家族になったんだ。)と。
無理矢理ルールだと強調することもない。
美味しく食べられれば、良いのだ。
葉っぱの上のカレーを手で食べる事がルールだってある。
因みに、厚洋さんは、真愛の箸置き派になった。お高い料亭に通っていたので、箸置きが好きになったのだ。沢山の種類の箸置きを買ってきては、季節を楽しんだ。
5. 撥ね箸(はねばし)
「あっ、嫌いな物。
これはちょっと横にどけておこう」
このように箸で嫌いなものをよける「撥ね箸」は、食への感謝が足りない残念な所作。
真愛の嫌いな物は、イクラやウニ、高級食材なので、小さい頃には出てこなかった。
「ご飯のお代わりは、ご飯を一口残し、食べ終わ
ったら蓋があれば蓋をし、蓋がなかったら、
ご飯粒一粒を残しなさい。」と言われた。
未だにその意味がわからない。
好き嫌いなく感謝して食べなさい。
この心はしっかり刷り込まれた。
6. 迷い箸
貧しかった真愛がやりそうだったから、何度もいったのだろう。色とりどりの美味しそうな料理が並んでいると目移りしてしまい、「どれにしょう?」「こっちもいいなぁ」と箸を行ったり来たりさせてしまう「迷い箸」
母は、「作った人は、みんな嫌いで食べるものがない。」と思うかもしれないと言った。
7. 空箸(そらばし)
手を伸ばしたものの、「やっぱり、こっち!」と取るのをやめてしまう「空箸(そらばし)」
迷い箸にも似ている所作だ。
8. 探り箸
鍋や汁物、丼など、自分好みの具材から食べようと箸で探りたくなり、箸で料理をかき回す「探り箸」はマナー違反。
見た目にも汚らしく、周囲の人に不快な思いをさせるという。
しかし、厚洋さんの作ってくれたお味噌汁は、一回かき回して沈んだ美味しい具を先に食べる癖がついた。母も厚洋さんの朝ごはんが好きで、真愛と同じようにやっていた事を思い出す。
作ってくれた人の温かさを感じて食べられれば「幸せ」である。
9. 拝み箸
箸を両手で挟んで、拝むようにして「いただきます」の挨拶をする人がいる。
丁寧な所作に見えるが、修行僧でもあるまいに、お粥と香の物だけではない、沢山お料理あるでしょ?って訳だ。
箸の先を隣の人に見せるのは失礼という理由もあり「嫌み箸」に数えられるそうだ。
10. 刺し箸
箸ではなかなかつかみにくい食材。
落語ではないが、里芋は掴みにくい。
子供たちならズブっと箸を刺して食べていても愛嬌のうちかもしれないが、真愛はしっかり挟んだ。なんと言っても小豆を箸で30個数えさせられたら、上手くなると思う。
ブスって刺して、中まで火が通っているかしら?なんて、嫌味な姑ではないのだから、きちんと挟みたい。
11. 指し箸
箸の先で料理を指して「これ、おいしい!」
会話の途中で箸を人に向けて「そうそう、それがね!」これはみんな「指し箸」
指をさされるだけでも嫌がる人がいるのに、食事中に箸を向けられるなんて失礼極まりない。
ところが、厚洋さんは晩酌中、真愛との大激論となり、箸で真愛の頭を叩くことがあった。
お酒を付けて、テーブルの上に字を書くことも…。真愛はそう言う厚洋さんが大好きだった。
箸の使い方なんて、ルールなんてどうでもいいような気がする。
食事をしている相手がどう思うか、作ってくれた人がどう思うか、相手の心を思いやってのことなら全てOKなのではないだろうか。
12.寄せ箸 前述3で。
13. 涙箸
汁物を口にする時など、箸から汁がポタポタと落ちていることを「涙箸」
汁を滴らせて食べている姿は見た目には品が良いとは言えないそうだ。
歳を取れば箸からポタポタ垂れるのではなく、口の端からぽたりなんて事にはなりたくないものだ。
14. ねぶり箸
「ねぶる」とは、箸を「なめる」こと。
箸についた「煮凝り」をペロッとなめる仕草。美味しければ美味しいほどやってしまいそうな事
人前では控えましょう。
箸の汚れは正式には懐紙を使って拭き取る。
15. 握り箸
2本の箸を握ってスプーンのように用いる「握り箸」
箸を使い慣れていない幼児によく見られる。
真愛は、これをしなかったのだ。
完璧であった。(数少ない自慢話)
16. 合わせ箸
料理を箸から箸へと渡すことを「合わせ箸」
これは、絶対にしちゃダメ。
火葬の際に遺骨を箸から箸へと渡して骨壷に納めることから、料理においては縁起が悪いとされているのだ。
出来れば一生「合わせ箸」なんてやりたくない。
17. 立て箸
茶碗に盛ったご飯に箸をまっすぐ突き立てる「立て箸」
これも「仏箸」とも呼ばれ、葬儀などで亡くなった方に向けてご飯に箸を立てお供えするからだ。
真愛が厚洋さんに影膳をお供えする時は、箸置きを使ってしまう。まだ、亡くなってないんだね。
18. 叩き箸
誰かを呼びたいからと箸で器や茶碗を叩いて「おーい!」「すいませーん!」。
大人が食器を楽器扱いするのは恥ずかしいこと。あらゆる方面に失礼とのこと。
厚洋さんは宴会で、チャンチキおけさを歌いながら、楽しく叩いていたねぇ。
チャンチャチャ チャンチャチャ
チャンチャチャチャチャ チャチャチャって
19. 噛み箸
幼い子供ならありがちな、箸を噛んでしまう「噛み箸」
別に、箸咥えて新聞読んでていても、可愛いけどね。人の前ではするなと言うこと。
ドダイ、新聞読みながらがいけないらしい。
厚洋さんも、真愛も本を読みながら食べてたこと多かったかな。
真愛なんか、給食を食べながらテストの丸つけやっていた。
大人になってからの方が、お行儀が悪くなったかもしれない。おっ?この事に関しては、子ども達に「いけない事」と教えなかったなあ。
20. ちぎり箸
両手に1本ずつ箸を持って、ちぎるように料理を切り分けていく行為。硬い肉や魚を切り分けたい時に、ついやってしまう人も。
これも子供なら可愛いものだが、大人がやると不恰好。キレイに切りたい時には、ナイフを借りよう。でもなぁ、そりゃ料理が硬くて!とかもう少し細かくって文句をつけるような物だからね。
厚洋さんは、「小さく切ってくれ!」とか「もっと薄く切れないの?」なんて文句タラタラ。
食べにいった先で、塩と胡椒で自分で味付けしてた。不届きな奴だったんだなあ。
なぜ母は作法を尊重したのだろう。
なぜこんなにも箸のタブーがあるか?
それは、「食を共にする相手を不快にしない」という、古くから伝わるおもてなしの心があるからなのだと思う。
相手を思いやる心が有れば、どこの国のどんな習慣でも理解することができると思う。
さて、我が孫達もそろそろお箸遣いを教えている頃だと思う。
お箸の持ち方を教える時期は、二つのポイントがクリアされてからだ。
⓵運動能力
つまり手先・足先まで脳からの指令が伝わらな
くては遣らせたくても出来ない。
両手を広げて片足で3秒間静止が出来れば、身体
の隅々まで脳がコントロールできている証拠。
おじいさんおばあさんが、ふらふらするのも、
体幹がしっかりしないのも、脳との関係ですか
ね?
ジャンケンのチョキがちゃんと出せるのも大事
細かい指の動きが出来るかどうかの目安。
スプーンの持ち方も、手のひら全体で柄を握っ
ていたのが、鉛筆持ちが出来るようになったら
箸の持ち方を教え始めるサインだそうだ。
⓶言語能力
「お父さん指とお母さん指です持ってね。」
「お兄さん指を曲げて…。」なんていう言葉が分
からん時に教えられるわけがない。
特に、「曲げる」「伸ばす」という動きが言葉
で理解でき、動かせることが肝心。
真愛の上側の箸の可動域はちょっと自慢できる。今回は、子供用の箸を使ったが菜箸でも、もう少し長めのものでも動かせる。
箸の持ち方を指導する時には、その子に合ったサイズで挑戦させてみよう。
(NPO法人お箸プロジェクトの平沼さん曰く)
子ども用箸ではなく、「ひとあた✖️1.5」の長さが良いそうだ。
夏休みになると子どもたちとそうめん流しをやるのが好きだった。学校の竹林から孟宗竹を切り出し、半分に割き、節とささくれを取って繋ぎ合わせる。
余った竹で自分の箸を削らせた。
人より多く、人より早く取りたいために「長め」に作る子もいた。
さて、そうめん流しが始まり、沢山の素麺を止めたとしても、薬味の入った竹の器に入れる事が出来ず苦労していたのを思い出す。
なんでも、自分の身の丈に合ったものが良いのだ。で、「ひとあた✖️1.5」である。
平沼さんは挿絵を使って
「箸の持ち方と動かし方」を表記してくれていた。
もし、この時、薬指と小指が一緒に動いてしまうようであったら、スポンジなどを握らせて2本の指を固定させると上手くいくようである。
と、開設されていた。
更に、「遊びの中で物を掴む練習」をさせる事だという。
おお!我が母の偉大さを感じたが、
「豆などの硬い掴みにくいものは避け❣️
柔らかいスポンジやコットンボールで練習を
するのが良い」そうだ。
母の特訓は?であり、完璧なのは真愛の努力だったのかしらん?
ー 「出来た」という喜びの積み重ねが大切 ー
そうだ。
真愛の場合は、他人様からの褒め言葉であったのだ。何事も「褒めて,褒めて、自信をつけさせる事」が上達への栄養剤なのだ。
で、箸の持ち方について書いているうちに、思い出した事がある。
箸の持ち方と鉛筆の握り方の関係。
鉛筆の握り方と文字の書き方の関係だ。
書簡・「文字が話す 愛してる」で登場した教え子君はどうしているのだろうか?
ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります