幸せな人にしよう
『南くんの恋人』が終わった。
いつになったら南くんが元の大きさになるのか楽しみに見ていたのだが、愛別離苦の悲しみを見つめ、厚洋さんとの45日の命懸けの恋を思い出した。
前回、南くんから
「俺はもう死んでるんだ」
という衝撃的な告白以降、ちよみちゃんは南くんを思う気持ちがますます強くなっていく。
明確にしたく無い「死」「別離」が、何も出来ないもどかしい自分の無力さを突きつけられ堪らなく切なくなるのだ。
いつ別れが来てもおかしく無い不安も耐え難い。
ある日、南くんは父親からの提案で、病院で詳しく調べてもらう事になる。
一方、ちよみちゃんや南くんが不在の堀切家では、チャコおばさんが幼少期に、亡くなった母親が小さくなって会いに来てくれたという思い出話を語る。
死んで出てくる小さい人!
厚洋さんは小さい人になって出て来てはくれなかったが、真愛の右肩にいた気がする。
大先生が「そう言うこともあるよね。」って肯定してくれた事が嬉しかったし,亡くなった人は色々な方法で心配をしてくれているのだと思えて嬉しかった。
しかし、ちよみちゃんの家族は更に不安になる。
病院帰りに2人は大きなケーキを買って帰ってくる。
「自分と同じぐらいのケーキが
食べたかったんです。」
と明るく言う。
そして、南くんは堀切家の人々に、なにも分からなかったと伝える。
「僕は、実際はもう死んでる。
そういうことです」
と語る。
ケーキを美味しそう食べ、明るく振る舞う南くんが切ない。
それを見ているちよみちゃんも切ない。
それを知った母親がちよみちゃんを別の場に呼んで、その胸の切なさを抱きしめて励ます。
「でも、一番悲しいのは南くんだから…。」
と言うちよみちゃんが強いし、真愛もそうだった。
逝ってしまう彼との時間を最高のひと時にしたい。1分1秒無駄にしたく無い。
死を前に明るく振る舞う愛しい人。
愛しい人との死別を前に悲しんではいけない愛しい人のために「最高の時間」を作りたい。
ちよみちゃんや家族は、南くんに残された時間を一緒に精一杯過ごそうと誓い合う。
たくさんの思い出を作っても近づく「死」の不安と悲しみ。
そんな時、母親が東日本大震災の時の映像を見た時に大先生が語ったことを話す。
「悲しい とっても!
悲しい事は起きちゃうんだね。
何の前触れもなくどうしようもない悲しい
こともある。
人間は進歩して悲しいことを止めることも
できるようになった。
自分たちの力で止められることもちょっとは
出来る。止めるべきだとも思う。
それでもどうしようなく悲しい事は起きる。
そして、悲しい亡くなり方をする。
その人の亡くなり方が可哀想だからって
その人の人生が可哀想だと思うのはやめよう
亡くなり方ばかりじゃなくて
楽しく生きた時のことを思い出そう。
可哀想な人にしちゃいけない。
幸せな人にしなくちゃいけない。
それが出来るのは、生きている人たちだ。」
「私の生きる力を南くんにあげたい。」
と大先生は言った。
そして、
「南くん。あんたは強い人だから
あえて言うよ!
ちよみ。南くんを幸せな人にしよう。
それが出来るのは、
あなたしかいないから!」
「厚洋さんの人生は幸せな人生だった」と今、自信を持って言える。
その人が楽しく生きた時のことを思い出せるのは、真愛しかいない。
亡くなるまでずっとそばにいて、たくさんの幸せな時を精一杯作り、全てを思い出せるから
海の見える思い出のベンチに座って、ちよみちゃんが叫ぶ。
「世界中に自慢したい。
見せびらかしたいな。
だってさ、最高なんだもん。
私の恋人は世界一なんだもん」
と惚気はじめる。
「私の恋人は、
世界で一番素敵な恋人なんです!
南くんって言うんです!」
と叫ぶ。
泣きそうになりながら
「ずっとずっと何があったって…。
私の、私の心の中では南くんが…。
南くんが、
南くんが恋人!」
と。
そうだ。愛しい人は世界一。
その人が好きなのだと全ての人に知らせたい。その人に愛されていた自分を知ってもらいたい。それは、「最高の自慢」なんだ。
「南くん大好きー!」
と叫ぶちよみちゃん。
そうだ!「愛してる💕」よりも
「大好き❣️誰よりも大好き❣️」
この言葉の方が、愛しい人に伝える言葉としてぴったりだと思う。
南くんも「知ってるー!」と返す。
そして、
「ちよみ、俺にも言わせて。
ちよみ、世界で一番幸せになれー!」
と全力で想いをぶちまけて…。
厚洋さんにたくさん言われていたような気がする。
ただ、真愛が気づかなかっただけだ。
素晴らしく幸せな人として生きた厚洋さん。
今でも、幸せに生きている真愛である。
ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります