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素数日

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いつの頃からか覚えていないが、厚洋さんが逝ってからの日数を数えるようになった。このnoteをを始めたのは、一年以上経ってからのこと。 命日だけではなく、記念日も思い出していたが、…
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2020年6月の記事一覧

636日 会いたくて

636日 会いたくて

636日め。会いたくて泣いた。
もう泣かないと思っていたのに
           身悶えして泣いた。
           声を上げて泣いた。
100万回生きたトラ猫のように泣いた。

 厚洋さんとの思い出を忘れないように
              noteに書く。

 世の人からは、馬鹿な女だと言われるかもしれないが、亡くなった厚洋さんにまだ会いたくて、思い出を辿っては、泣いている。
 出版

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ひとつだけ。

ひとつだけ。

 ひとつだけ実ったグミ。
 野苺や木通を採って来ては、子供のように
「いいだろう。酸っぱいぞ!」って、口に入れてくれた。少ない中でのお裾分け。
 グミの渋みと甘さも…。
自然の甘さと酸味が大好きだった厚洋さんのグミの実がひとつだけ実った。

 樹齢20歳の大きなグミの木を5年前に切った。
 小学校五年生の国語に大川悦生氏の「お母さんの木」と言う物語が入っている。
 出征した五人の息子の代わりに

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夜雨の紫陽花

夜雨の紫陽花

 雨の夜の紫陽花が美しい。 
 夜の美しさを感じられるのは日本人ならではの感性であると聞いたことがある。
 夜桜・蛍狩・お月見・夜風・星月夜・雪月夜
 読者の方の中には、もっと素敵な夜の美しさを知っていらっしゃるのではないかと思う。  
 外国の方は、「月夜」=「オオカミ男」と感じるらしい。怖いので「夜が美しい」なんて思わないのだそうだ。(随分前の話なので、今は夜も元気に出歩いてるようだ。)

 

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会いに来る花

会いに来る花

 人が亡くなる前に会いに来る花。
 毎年、赤・黄・ピンクと色鮮やかに咲いていたグラジオラスが、突然咲かなくなった。
 一昨年、グラジオラスを大事にしていた母が逝った。母を送るように咲いたグラジオラスは、全て真っ白だった。

 その年の藤の花は植えてから10年ぶりに咲いた。薄紫の花房は、皐月の風に手招きをする様に薫った。
 母は、
「咲いてくれたのね。」
と言った。
「待っててくれてありがとう。」

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クリスタルの雨と吐き気と「あなたに会いたい日」

クリスタルの雨と吐き気と「あなたに会いたい日」

 ああ。雨が降っているなぁ。
 縦に降っている雨音だ。
 屋根に染み込むように降っている雨音だ。
 雨音を聞きながら 伸びをする
 寝返りを打って 雨音を聞く。
   もう少し寝よう。
   吐き気と痛みがこないうちに
   気持ちよく寝たい。
 右脇を下にしながら雨音を聞く。

 カーテンを開けたら
     クリスタルの矢が
 青い紫陽花を射抜いているのだろう。
 出掛けなくてはいけないのに

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俳句の庭

俳句の庭

 愛しい人が愛した庭は、季節の移ろいを感じられる様に作られている。
 作り初めは、彼が真愛のために植えてくれた花木と草花だった。
 野の花を水彩で描く事が好きだった真愛のために野の花を(言葉は悪いが)盗んで来ては、移植してくれた。
 彼の具合が悪くなって家にいる事が多くなってからは、真愛が庭作りを引き継いだ。
 彼の部屋から見える様に季節の花を配置した。
 彼が亡くなり気がついた。
 2人で作った

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