L'amour suprême 22. 浮気女
「わたしです」
インターフォンに向かって和音が声をかけるとロックが外れる音がした。誰も出てこないのでドアを少し開けて隙間から顔を突っ込み、もう一度名乗った。ミレイの声が天井から聞こえてきた。
「ごめんなさい、いまちょっと手が離せないので奥へどうぞ」
インターフォンに向かわずに部屋の中から直接玄関とやり取りができるような仕掛けがあるらしい。
「はーい、お邪魔しまーす」
和音はどのくらいの声でミレイに聞こえるかが分からなかったので大き目の声で返事をして玄関にあがった。
化粧ポーチをなくしたことに気づいたのは綺音の家を訪問してから一週間ほどたってからだった。リップクリームを探さなかったらもっと時間が経っていたかもしれない。まず綺音に連絡した。
「あるよ、学校にもってく?、笑」
「それはダメ。取りに行く」
「ミレイが預かってくれたから、彼女のうちにあるよ」
意外な返事だった。
「ボクの家においておくとすぐどこかにいっちゃいそうだからね」
和音は、女もののポーチがあるのを見られると困るような客人が綺音にいるのか、と思ったが、すぐに、それはないかな、と思い直した。綺音のいうとおり確かに彼の性格だとよくわからないものは捨てちゃうか、どこかに放り込んでしまって忘れそうだ。また仮にそういう客人がいるにしても綺音は別に困らないだろう。和音は彼女気取りが自分にはあまり似合わないと思ったし、面倒にもなったので考えるのは止めた。結局はミレイに会える口実ができたことがすべてを不問に付していた。不問に付すって綺音くんが悪いのが既定じゃない、悪いのはどちらかといえば強欲なわたし、と和音はテヘペロだった。わたしホントにビッチだわ、と自嘲しながらも、もしかしたらこれってミレイともやってみたらっていう綺音くんの差金?だったらしょうがないから乗ってあげようか、とかなり自分勝手な理屈も発明していた。
廊下の突きあたりに明るいすりガラスの扉があったので、お邪魔します、とつぶやきながら和音はノブを下ろして扉を押した。そこは南向きの明るい居間だった。テーブルとその両側にソファーがおいてあり、左の奥にキッチンとカウンターがあった。正面は全面がガラス張りなので午後のこの時間でも部屋は光にあふれていた。窓の向こうは緩い下り斜面に沿って緑に囲まれた住宅が並び、谷の向こうにここと同じような高層マンションが二つ背比べのようにそびえていた。右側の部屋はトレーニングルーム兼書斎のようだった。壁は本で埋まり、南側の奥に書き物机があるだけで、あとのスペースには器具が並んでいた。視線を移すと天井から吊られたミレイと鉢合わせした。和音は目を見張った。ミレイは真っ白なレオタード姿で鉄棒のようなものにぶらさがっていた。
「エクササイズをしていたから。ちょっと待っていてね。今日の分をすますわ」
ミレイは懸垂を繰り返した。ぴっちりそろえて伸ばしたむきだしの腿に筋肉が張り詰めるを和音は見ていた。ボニーテイルにまとめた髪がからだが上下するたびにパタパタとはためいた。大きく開いた襟ぐりに汗の粒がついていた。ミレイはまっすぐ前を見つめ、口を少し開けて呼吸をしながら腕を屈伸した。まっすぐにした下半身が空気をすくってかき回すような動きを繰り返した。見ている和音にも思わず力が入る動きだった。
「はい、おしまい」
そういいながらミレイは鉄棒からぱっと飛び降りた。
「お待たせしました。これをちゃんとしないとデブになっちゃうの、おばさんだからね」
そういってミレイはタオルを取って首筋を拭きながら面白そうに笑った。整った美しい笑顔だった。しかし、今日のミレイには飾らない、ぶっきらぼうといっていいほどの親しみやすさがあった。自宅にいて気を遣わないからだろうか、でもこんなおばちゃんぽいミレイさんもおもしろい、と和音は思った。
「用事はわかってる、ちょっと待ってて」
ミレイはタオルを首に下げたままスタスタとキッチンに向かい棚を音を立てて開け閉めした。ミレイさん、別人みたいにちゃきちゃきしてる、ほんとうに親戚のおばさんみたい、と和音はうれしくなってしまった。
「はい、どうぞ。ゴム、追加しといたわよ」
ミレイは化粧ポーチを和音に手渡してニヤッと笑った。和音は声を出さずにどうもといってポーチを受け取り、そのままもじもじした。隠しポケットに入れてるから普通は見つからないんだけどな、それともカマかけられてるのかな、と判断がつきかねたせいだ。
「ありがとうございました」
ゴムの件はあとでチェックだ、こないだは使わなかったから、と和音は思った。
「どういたしまして」
「お茶出すわね」
ミレイはにっこりしていった。和音はミレイの出してくれた暖かいウーロン茶をすすり、ミレイは冷えたスポーツドリンクを小気味よくのみほした。一息ついた二人は話のきっかけをさがして少しだけ口を閉じていた。それぞれに伝えたい思いがあった。
「なんでミレイさんが預かってくださったんですか」
和音は結局ストレートに聞いたほうが自分の知りたいことにたどりつけると判断してこう質問をした。
「綺音さんがどうしてもわたしから和音さんに渡してほしい、というものだから」
ミレイも綺音の意図を分かりかねているようだった。
「わたしはまったくいいのよ。和音さんとも会えるし」
ミレイさんはにっこり微笑んでから黙って眼で語りかけてきた。わかってくれる?といっているようだった。
「わたしもお会いしたかったんです、いろいろ教えてもらってうれしかった」
和音は思った通りを口にした。
「それだけ?」
ミレイの眼にはさっきから別の光もあった。和音はそれに気づいていたがあえて見なかったのだった。するとミレイの方から訪問の本当の理由を明らかにしにかかった。こんなにぐいぐいと詰め寄られるなんて、と和音は戸惑った。戸惑いはやがて静かに本心に収束した。
「いえ、ミレイさんと」
「?」
ミレイは黙ったまま次の言葉を促すように少し首をかしげた。上くちびるを舌がちらっとよぎった。
「ミレイさんにお話があったんです」
和音は思い切っていった。
「なにかしら」
「ミレイさん、綺音くんのパパですよね」
「どうしてそう考えたの」
ミレイは挑発するような調子で和音をうながした。
「最初はふと思っただけでした。ミレイさんと綺音くんってよく似ているんです。そしてあの写真を見て確信しました」
「そうか、わかっちゃったか」
ミレイの挑発的な笑顔から温かみが去って眼に力が宿った。しかしそれも一瞬で消えてあとにはさびしげな微笑が口元に残っていた。
「少し長い話になるの」
そういってミレイはソファに腰かけた。和音は床にすわった。午後の日差しが暖かかった。このままお昼寝したら気持ちよさそうと和音は思った。ミレイはまっすぐ前を見たまま話し始めた。
「わたしは孤児院を抜け出してからは何でもやったわ。そうしなければ生きられなかったから。盗みもやった。それでもいつも食べ物がうまく手に入るとはかぎらないから飢えていることが多かった。ほんとうにどうしようもないときは教会にいったわ。神父のお話を聞けばパンと牛乳を出してもらえた。お話の間じゅうからだをまさぐる手さえ我慢すればね。もちろん嫌だった。でも空腹にはかえられなかった。神父はわたしの髪とからだは恩寵だといっていたわ。そういう日々が続いてあるとき思ったの。わたしはパンをいつでもどこでも手に入れられるんじゃないかということを。それからはどうやってからだを売って暮らすのかを勉強したわ。教科書は街にあふれていた。今でも憶えているけれど初めての客、立派な風采のお役人だった、は銀貨をくれたうえに貴重なアドバイスをくれたわ。『自分を大事にしろ』って。おかしなアドバイスよね。学校に行けたのもお客の伝手。このお客は女学校の先生をしている叔母さまだったわ。卒業して綺音のパパに拾ってもらった話はしたわよね。パパはとてもいいお客様だったの。わたしを気遣って自分のところに置いてくれた。パパ専属になったわけね。ある晩ママがわたしを部屋に呼んだの。ママはパパが女性をうまく相手にできない体質であることと彼女が自分の結婚生活を維持するのには子どもが必要だということをわたしに打ち明けてくれたわ。ママは貴族の家系で実家がパパの美術の仕事のパトロンだったの。ママはパパを深く愛していた。それともパパの作品を愛していたのかしら。だからパパに愛されなくても別れることはできなかった。ママはわたしに愛の技術を教えてほしいと頼んできたの。子どもをつくるためパパを最後まで導けるようにと。その日からわたしはパパと交わりながらママには愛の技術の授業をしたの。そしてある日わたしがいつものようにママの寝室に行くとパパとママがわたしを待っていたの。その晩は三人で愛しあってわたしのお手伝いでパパをママの中で最後まで導いたわ。パパは疲れて眠ってしまった。わたしはママに導かれてそのまま部屋を抜け出して客用の寝室に向かった。そこでママは確実に妊娠するためにいまわたしに抱かれたいといったの。わたしは驚いたわ。わたしはママにレッスンはしていたけれど最後まではいっていなかった。そこまでは必要ないというのに加えて心のどこかにパパに遠慮があったのね。ママの言葉は子どもが欲しいという必死な思いの現れだったと思うけれど、同時にレッスンを受けるうちに高まってきたわたしへの思いを遂げたいというのもあったでしょう。わたしはこの家族の行く末を考えて躊躇したけれど結局ママを抱いたわ。わたしは好きなママと愛しあえてとても幸せだった。こんなわたしだったけれど、ママのこともパパのことも大好きだったの。すべてはその大好きっていう気持ちに従っただけ、と今は思ってる。そしてママはめでたく妊娠したの。パパは気づいていたと思う。ほとんど抱いたことのない女との一回の交渉で子どもができるとは思っていなかったでしょうから。子どもはみんなから祝福されて生まれてきたわ。わたしはまだ十九だったのよ。わたしはその子が愛おしかった。だからわたしにできる限りの愛を注いだし、これからもそうするわ」
和音は自分の思いつきがある家族の秘密を暴いたと思っておののいてしまった。
「わたしと綺音ってそんなに似ているの?」
ミレイは和音を見てそうたずねた。
「似てます。ちょっとした表情やなんかが、すごく。でも...ちょっといいにくいな」
和音は自分で言い出したもののうまく説明できるか自信がなかった。
「いいわよ、遠慮しないで」
ミレイは理由が知りたかった。
「あの時の、喜んでいるときの表情がそっくりなんです」
「わたし、和音さんとプレイはしたけれど最後までした覚えはないわ」
納得できないミレイは眉をひそめた。
「あの、わたしがしゃぶってあげているときの表情や反応がほとんど同じなんです」
和音は一気に話した。勢いがないと最後まで話し通せそうになかったからだ。
「セックスの最中ってあんまり相手の顔って見られないんです。自分も盛り上がっちゃってるから。でもフェラチオの時はしてあげている相手の反応が知りたいから何度もよく見るの。ミレイさんと綺音くん、反応がほんとにそっくりなんです。アレの形もサイズは違うけどよく似ているし。お二人を近くでじっくり見ているわたしにしか分からないと思いますけど」
「形って?」
ミレイも恥ずかしそうだった。
「男の人って自分のアレをよく知ってるつもりでしょうけど、自分では見えないところもたくさんあるのはあんまり意識しないですよね。女は見ようと思えば全部見れますからね。つまり見えにくいところでもよく似ているということです!」
和音は真っ赤な顔で必死に解説した。ミレイは和音がふうふういいながら話すのをまじめな顔で聞いていたが、突然笑い出した。
「そうか、二人を微に入り際に穿って見て比べていた和音ちゃんには分かっちゃったか」
比べていたなんて、そんな、改めてそういわれると恥ずかしさで死にそうな和音だった。ミレイの話ではこれまでも綺音にはセックスフレンドがいたのだがミレイとともに関係を持つには至らなかったそうだ。だから二人をしっかり見比べたのは和音が初めてだった。
「隠しておく必要はもうないと思うのだけれど」
ミレイは言った。それでもどこかにまだそこにふれるのにためらう自分がいた。ミレイと綺音のロールプレイにはアイデンティティをはっきりさせたくないという意図もあったのだろう。
「綺音くんはもう知ってるんですよね」
和音は念のためにたずねた。
「知ってるとしても顔には出さないわ」
わたしたちにはいろいろな顔があるから、とミレイは胸の中でつぶやいた。「それにしても和音ちゃん、すごい観察眼と嗅覚ね。尊敬するわ」
ミレイはこの娘の底知れなさをまざまざと感じていた。
「わたし、こっち方面は敏感みたいなんです」
和音は無邪気だった。自分の能力に自覚はあまりなかった。
「でも、自分のことについては意外と鈍感?」
「かもしれません。自分で自分がまだよく分からないし」
ミレイはソファから立ち上がって和音の前に立った。そして、トレーニングウェアの腰から腿、腹から胸へと肉づきを確かめるように両手をすべらせた。最後に股間のふくらみをつかんでゆっくりと握った。そこを揉みながら和音に視線を移して婀娜っぽい笑みを浮かべた。鉄棒にぶら下がっているのを見た時から和音はミレイの股間から眼が離せなくなっていた。ぴっちりとしたショーツでおさえているがそのふくらみは明らかだった。ミレイはトレーニングウェアの肩を外した。ゆっくりと時間をかけて和音を見つめながら汗ばんだからだからウェアをはがしていった。ウェアが肩から外れて下りてゆくにつれ、まずぶるっと弾き出されたのはたわわに実る乳房、続いて押し上げられたへそが愛らしく鎮座するウェストが現れた。ショーツが現れた時、和音は静かにミレイに寄り添って、ウェアが床に落ちる前にミレイの凶暴なふくらみにふれていた。指が雄々しい起伏をなぞった。ミレイが無言で微笑んだ。これ、すごい、はち切れそう、和音は息を呑んだ。和音はミレイが意味ありげな微笑みを浮かべた表情でうなずくのを見てショーツのゴムに手をかけた。ぶんと音を立てるような勢いで宙に半円を描いて男が姿を現した。和音はその急激な出現に息を呑んだ。ミレイのは長かった。すごい、和音は意識しないまま唾を呑んだ。わたし、舌なめずりしているわ、と和音は思った。和音の手は知らず知らず男に伸びていった。だって、こんなの見たら、がまんできないわ、思いながらためらいなく男に手を添えてそっとなでていった。しなやかな茎を下りながら、ああまだ根っこにつかない、と和音はふるえた。ようやく根元に到着すると和音はそこで止まらずにスロープに導かれるまま後ろへと向かった。柔らかな小毬を手のひらに収めて力具合に気をつけながら揉んだ。初めてミレイが吐息をもらした。和音は手のひらで毬を包みながらもう少しだけ奥に指を這わせてはずみのある筋肉にさわった。もう少しで女にふれるのね、と和音は思った。和音はそのまま指で筋肉をたどって谷間の泉にたどりついた。筋肉には煮こごりのような湿り気と粘りがあった。ミレイのため息が熱かった。
「ね、奥までさわって」
ミレイは和音にもたれてくちびるを求めた。和音が応じるとミレイはすぐさま舌を割り込ませた。和音は息苦しさにあえぎつつミレイの興奮を受け入れた。張り出した乳房に汗が光った。和音はゼリーをかきわけて探索を進めた。弾けるような筋肉が和音を迎えて、初め少しだけ抵抗したあと心を入れかえたように静々と奥へ吸い込み始めた。和音は指を折り曲げながら秘蹟を求めた。ミレイの果汁があふれ出た。
「そこよ、知ってるの?」
ミレイはほとんど和音に抱き止められながら眉を上げて、なぜ、という顔をした。
「綺音に教えてもらってしてあげた」
和音は正直な子だった。
「もうっ、ずるい、わたしにもして」
ミレイは中年女の欲求不満を顔つきに剥き出し、鼻を鳴らしてわいせつな行為をせがんだ。和音がそこを爪先でつつくとミレイは恥ずかしげもなく甘い嬌声をあげてからだをうねらせた。あまりに張り切った双丘のうねりのせいで和音は放り出されそうだった。ミレイはたびたびひきつけを起こしたようにからだを突っ張らせた。和音は爪先の愛撫でこれだけ反応することに驚いていた。うらやましいわ、と和音は素直に思った。
「ああっ、いくわ、うんっ」
ミレイは太肉の双丘をぶるぶるとふるわせて絶頂を極めたようだった。
「これをお願い」
紅潮したミレイはテーブルに手を伸ばして奇妙な形のガラスのオブジェを手に取った。それは真ん中がふくらんでずんぐりとした十センチメートルほどの置物だった。
「入れて」
和音はそれを手に取って眺め、これをっていうけど入るのかな、といぶかった。
「大丈夫よ、いつもしているから」
和音の表情を見てミレイが微笑んだ。一番ふくらんだところは五センチ以上ありそうだった。ミレイはからだうねらせてソファに移った。そして仰向けになってエイナスが和音に向くように両足を開いて高々と上げた。
「いやらしい」
和音はつぶやいてみた。だって、わたしだったら絶対そういってもらいたいから、と和音はミレイのみだらな姿態に自分を重ねていた。
「いわないで、恥ずかしいわ」
ミレイは長まつげを伏せていやいやとかぶりを振った。中年女らしい手慣れた演技だった。こういう言葉でまた燃えるんだわ、和音は底知れない欲望にすこし鳥肌が立った。わたしもこうなるのね、きっと、そう思うと怖気と喜びがいっぺんに湧いてきてお尻がキュンキュンした。もう少し濡れちゃってるわと思った。和音はミレイにいわれるままにそれをローションで濡らした。ミレイは時おりうっと息をついて仰け反りながら自分でエイナスを揉みほぐした。それはエイナスにあてがわれると少しだけもぐり込んだ。そのまま押してゆくと思った通り一番太いところでなかなか入らなくなった。ローションをたっぷりと使っていたがだめだった。和音は力を緩めた。TVで見たアニメで、かわいいいも虫が口を広げて大きなボールを呑み込もうとして往生しているシーンを思い出した。軟体動物の捕食シーンのようでもあった。すき間からはじゅくじゅくと液がしみ出していた。みんなお尻にヒルみたいな気味の悪いものを飼っているんだわ、そう思うと和音の背中の毛が総立った。もう一度力を入れてみた。
「きついわ」
和音がいった。
「いいのよ、そのままぎゅうっと押して」
いわれるままに和音を力を加えた。するとあるところで抵抗がなくなり嘘のように筋肉はそれをすっぽり呑み込んだ。薄く広がった口は再びきゅっと閉じて柄の部分を咥えた。ちょうど底面で蓋をした格好になった。
「すごいわ、でも可愛い」
和音はからだの柔軟な吸引力に驚いた。底面の裏側には宝石のような切子のあるガラスがはまっていてきらきらと青く輝いた。ミレイは自分でさわって感触を確かめた。
「ふだんはほとんどこれを入れているのよ、その方が感度がよくなるの、してみる?」
座り直したミレイだったが、言葉の通りそのペニスはさらに力強く反り上がっていた。和音はミレイの誘いよりもその反り上がったペニスから眼が離せなかった。もう、こんなに見せつけて、どうしろっていうのよ、と和音はごくりと唾を呑んだ。この長いのを ... 少しだけ食べてももいいかしら、ねえ綺音くん、いい?和音は心の中で問いかけた。もちろん綺音からは何の返事もなかった。和音はソファに腰かけたミレイを見つめつつ床にひざをついた。綺音くんゴメンネ、エッチな彼女で、と胸の中で謝った。ペニスは和音の思いからは、いやあらゆるものからまったく独立して目の前にそびえていた。和音はそっと丸い頭に口づけをして薄いくちびるを開き、あわあわと呑み込んだ。プラグを呑む筋肉と同じ動きだった。ミレイは積極的に誘惑に応じた和音に満足して奉仕に身を任せていった。この娘、こんなにじょうずなのね、ああ、くせになるわ、ミレイの心は和音の熱心な動きとともにとけていった。和音は例によってすぐにリミッタを外して速度制限をなくしていた。 ほどなくしてからだを震わす射精が訪れたが脈打つ男は力を失わなかった。どこまでも空に伸びていた。和音はミレイのエキスを口でたっぷりと受けとめ、飲み下して満足していた。ああ綺音くんとまた少し違う味、すごく濃い、きっと種がたくさんいるんだわ、和音の想像力が精をいただく喜びを彩った。ああ、ほしいわ、和音は素直に思った。これで愛されたらどうなるのかしら、和音はそう考えるだけで眼の奥が熱くなった。
「ねえ、こんなに大きいのにどうやって収めているの?」
和音は知りたかった。わたしだったらとても取り扱えないわ、と思ったからだ。異性になる難しさを知っている和音ならではの興味だった。
「ふだんは小さいのよ、だからショーツに入るのよ、血が燃えるとこうなるの」
ミレイは誇らしげにペニスにふれた。
「いま燃えてるの?」
答えはわかり切っていたが愛の技巧としてこの質問は必要だった。挑発されているのを分かっているのに涎をたらして犬っころのようにすがってゆくのね、弱いわ、わたし、和音のため息はもう吐息のような熱を持っていた。
「燃えてるわ、和音と二人きりだから」
ミレイに呼び捨てにされて和音はのどをつかまれたように息が詰まった。胸の鼓動が高まった。ああミレイ、ちょうだい、わたしにそれを、焦らさないで、おねがい、和音は目蓋を閉じた。祈るような気持になっていた。
「わたし、これをまだ知らない」
神様、綺音くん、ごめんなさいと和音はペニスを両手でつかんだ。両手でつかんでもまだ先端が出ていた。
「いいのかしら、ほんとうに」
ミレイは意味ありげな流し目で和音を見つめた。ひどいわ、ミレイさん、わたしを弄んでる、和音は情けなくなったが鼓動は高まるばかりだった。
「だって、知りたいからぁ」
和音の言葉に甘ったるい響きが交じった。無意識のうちにからだを捻じって科をつくっていた。
「離れられなくなるかも」
焦らすミレイ。すごいのよ、これ、狂うわよとミレイのまなざしが告げていた。これ和音ちゃんのアソコにぴったりと収まって子宮の中まで食い込んでいくわよ、どうするの、するの?、和音の妄想の中のミレイがみだらな仕草で迫った。容赦なく突かれて和音はひいひいいっていた。
「ください、意地悪しないでぇ」
和音は切なく鼻を鳴らしてせがんだ。
「脱ぎなさい」
ミレイは和音に命じた。和音は立ち上がるとためらいなく制服のホックとボタンを外し始めた。スカートを落として下着とソックスだけになるとミレイを見た。
「それも」
ミレイは下着を取るように命じた。和音はふるえながらブラジャーを落とし、ショーツを脱いだ。ソックスを脱ごうとすると「脱がしてあげる」といってミレイが和音の手を引いた。和音はソファに倒れ込むように腰かけた。お尻にレザーが冷たかった。ミレイは自分の乳房で和音の太ももをおさえつけるようにして手を伸ばし靴下を脱がせた。からだが密着したせいで和音の情感が昂った。裸になったことも気にせずミレイの首に手を巻きつけてくちびるを求めた。二人は胸をぴったり合わせて口を吸いあった。
ミレイは和音のささやかな胸のふくらみをゆっくりと揉みあげて感触を楽しんだ。
「かわいいわ」
ミレイは乳首を舌で転がしながらささやいた。
「もっと大きくなりたい」
和音はミレイの重い乳房に憧れていた。ミレイのタッチに鳥肌が立った。乳首をギュッとつかまれると背中が反り返りそうな刺激が走った。
「いいのよ、これで、あなたはこのからだがいいの」
和音は不服げだったがミレイの指と手のひらの愛撫にまた生まれたての小鹿のようにわなないた。
「わたしにも吸わせて」
和音は攻守交代でミレイの乳房を持ち上げて自分の顔の前にもってくると葡萄のような乳首を吸った。ミレイの肌は乾いた草のような香りがした。
「かわいい」
ミレイは乳首に食いつく和音の短い髪をくしゃくしゃっとかき回した。和音が感極まったように愛らしい喘ぎ声をあげた。二人はまたくちびるを合わせ舌をからめた。和音の手はミレイの乳房をつかんで放さなかった。ミレイがふれるまでもなく和音の女は熟し切りすでに果汁を滴らせていた。あふれた神酒は和音の白い太腿に透き通る流れを成して伝った。
和音は獣の姿勢を取った。服従するかのようにミレイに向けて双丘を掲げてすべてをさらした。抵抗をあきらめて雄の思うままに堕ちた牝猫のように。日陰の植物の茎のように青白く輝く和音のからだの中心に毒々しいラフレシアが咲いていた。生臭い匂いは自分の匂いだった。和毛はすべて露でなぎ倒され真っ赤な花弁や雌蕊やがくが外に剥き出しになっていた。和音は喘いだ。ああ寒いわ、内臓が外に出ちゃってる、温めてほしい、熱いアレで、と願った。 ミレイは和音の股の間にひざをついて崇めるように頭を垂れ、祈りの言葉をささやくと和音の花に押し入ってった。和音は白い畝が走るか細い背中を反らせて嬌声をあげた。
「最初からこれが目的だったのね、悪い子」
ミレイは和音の背にのしかかって耳元でささやいた。ミレイの腰は和音にぴったりとはりついて蠢いていた。和音はあまりの圧迫感と充足感に声を出せなかった。切なげに眉を寄せて眼を閉じミレイの無慈悲なピストン運動についてゆくだけだった。和音の意識しないところでからだはミレイを受けとめて奥へといざなった。突かれるたびにつながりは深くなって和音の内臓に食い込んだ。和音ははじめてのその衝撃に恐怖を感じた。こんなところまできたら、こわい、どうなっちゃうのわたし、和音は声にならない叫びをあげていた。
「大きい、すごぉい」
和音は律動に揺さぶられる苦しい息の下でささやいた。
「和音ちゃんのお宮に直接種をまくこともできるわよ」
ミレイは自分が和音の奥に届いていることに気づいていた。張り切って輝くミレイの男に和音の内臓は果汁を浴びせやさしくキスをしてきたからだ。
「ああっ、ほんと、とどいてる」
和音は腹の中を探られてその不気味な感触に慄いた。こんなに深くはこわいわ、もう後戻りできないわ、和音は今になって怖気づいた。しかし愉楽の波は立ち止まることを許さなかった。ミレイの一突き一突きで溺れて流される運命だった。ミレイは腰を引いた。ああ、いやいやいや抜いちゃ、いや、和音は声にならない叫びをあげ、乳房を奪われた赤ん坊のようにむずかった。再びミレイは打ち込んだ。和音は吹き飛ばされて声を失った。そしてもう一度ペニスは退き、勢いよく最深部まで突き通された。和音はのけぞった。汗と涎が飛び散った。声にならない絶叫が響き、からだを裏返しにされるようなおぞましい快感とともに子宮が開いた。ミレイは和音を串刺しにしたまま和音の足を抱えてからだを仰向けにした。油にまみれた軸がくるりと回った。そしてその体勢で呼吸を整えて二人の衝動がシンクロするのを待った。待つ間にそれぞれのなかで何かが大きく膨れ上がってきた。
「ね、おねがい、突いて、また突いて」
和音が髪をかき上げると汗の玉が散った。そしてさらに重圧のピストン運動が始まった。和音がはげしくゆれる中で眼を開けて見下ろすと自分の足とミレイの胸の間からキッチンが見えた。その光景は真ん中の黒いシャフトで二つに割られていた。シャフトが沈むとシャッターを切るようにキッチンの景色はブラックアウトした。同時に和音に快感の波動が届いた。そして再び景色が見えた。シャッターのスピードはどんどん上がった。酸っぱいような生臭いような匂いが強くなった。ミレイの汗が和音の乳房に滴って谷間を流れ、溜まりをつくっていた。和音は杭のように自分の両側に屹立しているミレイの腕を思い切りつかんで指をからませた。爪が食い込み血がにじんだ。和音の双丘はバネの入った生き物のようにミレイを追いかけて跳ねた。しなやかな筋肉の運動の内側は蕩けた肉汁と油にまみれた焦熱地獄だった。
「いいのっ、ねえっ、中に、中にして、このままくださいぃ」
和音は自分でも何をいっているのかがもう分からなかった。本能が勝手に和音の脳を操っているようだった。
「いいの?」
ミレイは集中力が急に緩み始めたのを知った。わたしも耐えられないわ、と思った。じわじわと下の方から快感が湧き上がってきた。
「だって、ほしいから、あなたのが」
そうこれがほしい、これで、いっぱい、ねえ、出して、出してぇ、和音は本能と欲望の濁流に呑まれていた。
「いくっ」
和音がささやくように告げた。腰をよじるとパッと火花が散った。散った炎はどこまでも落ちていった。静かな絶頂だった。和音の女が強くけいれんした。鼓動がリセットされたようになった。
「あっ」
ミレイは肺から空気を出し切るように声を上げた。和音の器官が突然ミレイを振り絞ったのだった。甘くペニスを弄っていた器官がいきなり搾乳機のように吸い出しにかかったのだった。
「あっ、でるっ」
ミレイは自涜にふける子どものように何もできないまま精を吹きだしていた。そんな、そんな、こんな風にもらしてしまうなんて、ミレイは強い腰の痺れを感じた。
「ああっ」
ミレイは自分でも驚くような声で立て続けに鳴いた。失禁したような解放感におぼれた。ミレイは和音の胸に倒れ込んだ。
「こわいわ、あなた」
息を整えたミレイがささやいた。和音の眼は涙にまみれながらもいたずらっぽく光った。ミレイは切なさが急激に強まって和音をかき抱いた。
「ああ和音、好き、好きよ」
ミレイは知らないうちに涙をこぼしていた。微かな記憶しかない母の温もりがよみがえった。
「わたしもこれが好きになりそう」
和音は真っ赤な頬に晴々とした表情を浮かべてミレイを抱きしめた。和音の小さな乳首が汗の玉を光らせていた。
「ゴム、けっこう補充しといたから一枚くらいいいわよね」
ミレイはそういって腰をもちあげてちらりとペニスを見せた。乳液のたまった極薄がぷっくりとふくらんでいた。和音はあっと悔しがった。ミレイは体位をかえるタイミングで手早く避妊具を身につけていたのだった。
「ひどい、ミレイさん」
ミレイの下で和音はふくれた。
「綺音のオンナなんでしょ?よその種を仕込んでかまわないの?」
そういいながらミレイはすわってコンドームを脱がせると手際よく始末した。そして、髪を一度さっとかき上げてまっすぐ和音を見た。
「わからないわ、でもあの瞬間はあなたのがほしいって願ったわ」
和音は先日の綺音との深夜の交わりのときに小さい命が宿ったことに早や気づいていた。だから、今日はなしでもよかったのにと残念がったのだった。和音は知識と経験をしっかりと活かし切るタイプだった。
「それはまた今度ね」
ミレイは素知らぬ顔で物騒なことをいった。和音のゲリラ作戦は阻止したがいつまでも阻止できるか自信はなかった。ミレイはあらためて和音の床上手ぶりに舌を巻いた。まるで制御できないまま射精させられた和音の力量に、先天的なものもあるのね、勉強になるわと認識を改めていた。和音にこっそりと「床詩人」という綽名を賜った。そして、絶対またしちゃうわとミレイは胸の中で舌を出しながらこっそりと確信した。二人は重ねたスプーンのように寄り添って心地よい余韻にひたっていた。
「このままこっちにもする?」
和音を抱いたミレイは和音のバックドアのあたりに手をそよがせた。
「こっちは綺音くんにしてもらいたい」
綺音とこっそり約束していた。和音は女子でもあんなに乱れるのかを知りたかった。
「そうね、ほぐしかたはわかる?」
ミレイはすきあらば和音をものにしたいようだった。
「そこから教えてもらうわ」
嘘つきなわたし、それはすでに免許皆伝なのに。
「ん、ちょっと妬ける」
ミレイは鼻にしわを寄せて眼を細めた。
「ミレイさんもそんなこというのね」
和音はその表情が可笑しくてクスクスと笑った。
「だって綺音のこと好きだから」
「わたしもよ、それからミレイさんのことも」
「うれしい、なんかジーンとしちゃうわ。また入れてあげたくなっちゃう」
ミレイはまたうっとりとした表情になって和音を見つめた。眼に星が光ってる、と和音は思った。
「ねえ、じゃあ入れて、ミレイのxxxxx」
和音も思い切り色っぽい表情を作ってみたが、それよりも言葉のインパクトが強烈すぎた。
「和音、あなた淫乱かも」
ミレイは貴族のご婦人のように口に手を当ててお下劣な物言いに仰天していた。
「たぶんそう、自分でもそう思うもん、アレが好きでたまらないの」
和音は自分の言葉に酔ってどんどん盛り上がるタイプだった。あぶないなあ、アタシ、と思いつつ。
続く