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思考の余白を残すオードリー若林さん

「メディア側はすぐ消費したがるから、タレントを」

星野源さんのオールナイトニッポンにて、ゲスト出演の一期一会について語った若林さん。

「(星野さんのラジオに)ゲストでどうですかっていう話が何度かあったけど、まだ機が熟してないっていうか、タイミングがまだだっていうので、でもホント今日で1番ベストタイミングなんでしょうね」

「もうちょっと早かったら、俺もうちょっと卑屈に下から入ってましたね」

若林さんは、熱を帯びるニッポン放送石井玄さんからの度重なる出演オファーにも、焦らず、時を待ち、事が動き出すまで機を熟成させた。

結果、星野さんのイヤーブック『YELLOW MAGAGINE』での対談、星野さんの結婚、あちこちオードリーでの共演などを経て、高まった機運が2人の奥行きの合ったトークと、胸がすくPop Virusに繋がった。

1回のゲスト出演にも一期一会の想いを抱き、物事の巡り合わせを感じとろうとする若林さんの姿勢は、『とにかく行動』というストロングスタイルの世の中の正義が、パンデミックを機に心のウェルネスへシフトする流れ中で1つの象徴的なスタンスに映った。

一期一会のくだりで若林さんの口から溢れ出たのが、冒頭のタレントの旬を無為に消費しようとするメディアの姿勢への違和感と、唐突に飛び出した弘中アナのオールナイトへの無念だった。

「弘中ちゃんのオールナイトも早かったんだ、タイミングがあれ、多分」

笑いながら冗談めかしていたものの、長く心の奥に引っかかっていたものを取り出した跡が確かに見えた。

文脈では断定できなかったが、2019年8月の弘中アナのオールナイトニッポン0(ZERO)の件で間違いない。

憧れだったラジオの初パーソナリティに、弘中アナは気合十分、景気付けに冒頭から、同じように他系列局からオールナイトに参戦していた佐久間さんの番組を強めに腐すムーブでエンジンをかけていったが、自身のイメージとは裏腹に乾いた空気が流れ、思い描いたデビュー戦とはならなかった。

激レアさんで共演、その年の4月にオールナイトのゲストに弘中アナを招いてパーソナリティデビューのきっかけを作り、佐久間さんとも懇意にする若林さんとしては、内心忸怩たる思いがあったのであろう。

生じうる事象を見据えない安易なオファーへのやり切れない思いと(4月のゲスト出演の段階で危うい若さが滲み出てはいた)、力になれなかった自責の念を、消化しきれずに抱えてきた背中が見える、そんな一言だった。

今、このタイミングで弘中アナが初めてオールナイトのパーソナリティを務めることになったらどうなるか。

重ねた場数と広げたフォームの幅、エッセイ出版等で加えた経験値、確かに前へ歩んだ今の弘中アナが同じ轍を決して踏まさせない。

ラジオの世界観を正確に捉え、リスナーの期待と作家さんの想いを持ち前のピリリと辛い毒で繋げる、そんな記憶に残る一期一会が、弘中アナのラジオへの想いを次に繋げたのではないか。

通り過ぎてしまった弘中アナのオールナイトの未来図が、若林さんに一期一会への想いを新たにさせ、星野さんと大切に創り出した場で、後世に残るPop Virusが生まれた。

目に見えぬ事の連なりを考えさせてくれる。
そんな思考の余白を残してくれる無二の芸人さんだ。


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