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富山から全国へ!城端麦酒の多彩なクラフトビール
富山県南砺市にあるビール醸造所「城端麦酒」《じょうはなビール》。
ホップの効いたコクのあるビールからライトなフルーツビールまで、幅広いクラフトビールのラインナップが魅力で、地元ではもちろん、全国的に人気を博しています。
3年前、容器を瓶からアルミ缶に一新して売り上げがさらに好調に。取締役工場長の山本勝さんにお話をうかがいました。
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どのような経緯でビール醸造をスタートしたのでしょうか?
我が家はもともと車の板金業を営んでいたのですが、父が突然「地ビールをやってみたら面白いのでは」と言い出したのが始まりです。
酒税法改正で全国で第一次クラフトビールブームが起こり、それがちょうどひと段落した頃だったと思います。
特にビールに思い入れがあったわけでも無く、この辺りではまだ誰もやっていなかった。この業界がどういうものかさえ全く知らない状態でのスタートでした。
当時はインターネットもSNSも普及しておらず、情報も簡単に手に入りませんでした。とにかく何から始めて良いかわからない。最初に少しだけコンサルタントの方に基本を教えてもらいましたが、あとは何とか独自の方法でビールを作ってきました。
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ビジネスが広がったきっかけは何でしたか?
「城端麦酒」を始めた頃は板金業と二足のわらじで、設備も小さなドラム缶サイズの寸胴鍋とガスバーナーだけを揃えた小規模なものでした。
無理にビールを売りに出ることはせず、毎月開催される地元のお祭りの出店で売るぐらいだったと思います。
8年ほど経った頃、県外のビール会社と一緒にイベントをやろうという話が持ち上がりました。
少しずつ業界同士の繋がりができ始め「城端麦酒」の名前も徐々に知られるようになり、大阪のクラフトビール会社から「旧設備を使ってみない?」と声をかけていただいたことをきっかけに、醸造設備を整えたことで県外への出荷を増やすようになりました。
2020年には実家の隣に新工場を建てた際、地元の方々に量り売りができるよう直売所を作りました。
この同じタイミングでコロナ禍が始まり、お祭りやイベントがぴたりと止まってしまいましたが、量り売りでお持ち帰りされるお客様が増えました。南砺市の市長にもお越しいただいてSNSで発信いただき、直売所の知名度が一気に広まったのがありがたかったですね。
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「3rd PLACE」ではホップ畑の景色を見ながら
ゆっくりビールを楽しめる
2021 年にパッケージを瓶からアルミ缶に変えたそうですね。
イベント巡業が無くなり工場にいる時間が増えたので、設備を見直し、まだ持っていなかった充填機を導入することにしました。
では瓶と缶のどちらを選ぶか。
迷わず「缶が良い」と即決しました。
それまでは瓶ビールを販売していたので「わざわざ缶に変える意味がわからない」というお客様もいらしたのですが、私たちは缶には大きなメリットがあると確信していました。
まず、瓶と比べると保管や冷蔵のスペースが確実にコンパクトになります。瓶6本入りサイズと缶12 本サイズの箱は、ほぼ同じぐらいの大きさです。ご家庭の冷蔵庫で保管する際、瓶よりも収まりが良いのはお客様にとって好都合です。
常連の方からは「瓶よりも気軽にお礼品や手土産に持って行けるようになった」と大好評でした。
売り場でも以前の2倍の量を置けるようになり、1 年後には特に販売場所を増やすことなく、瓶で販売していた時より売り上げが3倍アップしました。
以前、缶に変えることを懸念していたお客様(もしくは業界の方ですか?byアルミ協会)に「こんなに売れるようになったよ!」と胸を張って言えました。
正直なところ、自分でもアルミ缶に変えてここまで上手くいくとは思っていなかったですね(笑)。
ブルーやピンクのカラフルなビールは、缶に変えて中身が見えなくなるのはデメリットではないかという意見もありました。でも最初に見えないからこそ、グラスに注いだ時の驚きやワクワク感が強くなったので良かったと思います。
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多彩なラインナップのクラフトビールはどのように生まれるのでしょうか? 今後の展開も教えてください
新商品が生まれる時は、急な思いつきから始まります。
ある日ハッと新しいアイディアを思いついたら、マーケティングも試作もせず、出来上がるまでがとても早い。例えば「グレートブルー」というビールを出す際に「青いビールが売れるか?」という意見がありましたが、とにかく作ってみたらヒットしました。
新商品作り以外でもこのような感じで仕事をしています。周りからは「よくそんなに思い切ったことができますね」とも言われますが、まずは何でもやってみないとわからないですよね。自分たちで体感的に得てきた感覚が頼りです。
こうしたスタイルは変わることなく、これからも続いていくと思います。
数年後この近くに大型レジャー施設ができる計画があるそうですので、この地域の人の流れもこれからどんどん変わっていくでしょう。その時には、何か新たな展開ができるといいですね。
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