見出し画像

長縄 〈意味にとって教育とは何か2〉

昨年度のヒット作が長縄だったのはめちゃくちゃ意外だった。

みんなで一斉に飛ぶやつではなくて、次々と飛んでは抜けてを繰り返し、大きく八の字を描きながら子どもたちが永遠に飛んでいく、あれ。
苦手な子もいて、(どうかな〜)と内心思っていたけど、最終的にはみんなが「めちゃくちゃ楽しかった!もっとやりたい!」という最高の結果になった。

思えば、僕が小学生の頃、長縄は苦しい時間だった。僕は得意だったから楽しかったけど、苦手な子は苦しそうな顔をしていた。
何事も大事なのはやり方で、それ次第で全然変わるのだと思っていたから、いくつか工夫してみた。

まず、結果にこだわるとしんどくなる。
だから、レベル分けをして、自分の成長になるべくフォーカスさせて飛ばせることにした。
要するにルーブリックを設定した。
レベル1は、フツーに飛べるレベル。
レベル2は、前の人と感覚をあけずに飛べるレベル。
レベル3は、それをずっと繰り返すレベル。
このレベル分けを最初に示して、少しでも自分が上に行けるように工夫することにした。

次に、長縄が飛べない子の原因を考えてみた。
すると、ほとんどがタイミングの取り方が間違っていることに気づいた。。
本当は長縄が地面についたタイミングで、縄を追いかけるように入らないといけない。
けれど、苦手な子達は長縄が地面について、「スペースができた」と思ってから入るから、ワンテンポ遅れてしまし、向かってくる縄にぶつかってしまう。
なので、入るタイミングを体感してもらう必要がある。
苦手な子は、僕が後ろについて体をポーンと押してあげた。
慣れてきたら「ハイ!ハイ!」と入るタイミングを声で教えてあげた。
10回くらい練習すると、自分でタイミングを掴んで飛べるようになっていった。

その他にも、長縄があたるかもしれないことに恐怖感を持つ子がいた。
あの回っているやつが当たったら「痛そう」と。
ぐるぐる回っている長縄が怖くて仕方がないらしい。
この子には、まずは長縄を地面に置いてそこをまたがせることから始めた。
慣れてきたらだんだんと長縄を動かして、「ゆ〜びんやさん」みたいな感じで飛んだり、先に真ん中に立たせてから長縄を回して飛ぶ練習をしたりした。
そうすると、だんだん恐怖心がなくなってきたようで、結構飛べるようになっていった。
結局、長縄を一番楽しんだのはこの子で、家で親に興奮しながら「長縄楽しかった!」と話したらしい。
体育嫌いだった我が子が興奮しながら話す様子にびっくりした親御さんから、感謝のメッセージが来た。
結果ではなくて、自分がどれだけ成長できたかという意識づけは、思いがけずに良い思い出を作ることができて僕も嬉しかった。

そして一番大事だったのは、「ネガティブなことを言わない」というルール。
僕は、スポーツは楽しまないと意味がないと思っていて、まあプロを目指すような集団は激しく批判し合えばいいかもしれないけど、一般人にはその必要はないと考えている。
だから、他の人がミスしても冷やかしたりからかったりするのを固く禁止した。
代わりに「ドンマイ!」とか「おしい!」とかアドバイスをするように子どもたちに求めた。
体育が苦手な子で、周りの冷ややかな視線を恐れている子は非常に多い。
だからこのルールは結構大事なのだけど、こういってもできない子を冷やかしたくなる子はやっぱりいる。
そんな時は、冷やかす子に意識をおくのではなくて、教師がめちゃくちゃ大声を出して、「いいぞ!!」「おしい!!」と気合でネガティブな雰囲気を吹き飛ばすのが大事だ。
実際、誰よりも大きな声を出して、盛り上げていたのは僕だと思う(笑)
これが安心感につながったらしく、「周りからバカにされなかったから初めて体育が楽しかった」という子もいたので、作戦は成功だろう。

体育のいいところは、なんといっても成長が目に見えてわかるところ。
苦手だったものが、ちゃんと練習すれば飛べるようになるという感覚は子どもにとって大きな感動体験だ。
その感動体験が周りにも伝播して、一体感が生まれる。
こうした子どもたち同士の「分有」が、クラスの雰囲気をつくっていき、卒業式の雰囲気につながっていくのだと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?