我が子、新生児を卒業する。
育休を取って2週間が過ぎた。光陰矢の如しという言葉があるが、激動のこの2週間はまさにそれであったように思う。
仕事をしていた日々を思い返すと、そこそこ責任のある業務をこなし、それなりに忙しい日々を送っていた。
しかし、育児における「忙しい」というのは、仕事のそれとはかなり違う。
連続する未知の事態への対応であり、またそれが日常であるからだ。
とてつもなく早く過ぎる育児の時間感覚に私は戸惑っていたが、そんな私には目もくれず、今日もお構いなしにオギャア!オギャア!と我が子は元気に泣き叫ぶ。
だがそれでいいのだ。大人のちっぽけな憂いなど気にせず、そのまま進め!
親であるからにはそれくらいの気概を見せたいものだが、べっちょりと黄色く汚れた我が子の尻を何度も見ると、ため息を漏らしたくなる瞬間もある。ふぅ。
こうして慌ただしい毎日を過ごし、気づけば1ヶ月という月日が経った。そう、我が子は「新生児」を卒業し、晴れて外出できるようになったのだ!
記念すべき最初の外出は、近所のスーパーへ。
初めての外の世界はどうだい?そんなにすやすやと眠っていては勿体無いだろう?初めての音、光、空気を存分に味わってくれたまえよ。
心の中でそんな言葉をかけながら、いつものように買い物を終え、帰路についた。
その夜、事件は起こった。
我が子が夜になってもずっとぐずっているのだ。腹が減っているわけでもなく、便を漏らしているわけでもないのだが、怒り狂った暴君のように泣き喚いている。どうしたと言うんだ。突如変貌を遂げた我が子に困惑していると、妻がこう言った。
「これ、メンタルリープかもね。」
...なんちゃらリープ?はて。
私の脳内で◯◯リープと検索してヒットするのは、超胸熱SFボーイミーツガールアニメ(小説)として広く知られる「時をかける少女」の"タイムリープ"くらいだ。
思わず「未来で待ってる。」なんて口走りそうになったが、頼れる夫としてのメンツを軽はずみなボケで潰すわけにはいかないため、ぐっと堪えた。そしてすぐさまスマホで検索してみた。
メンタルリープとは、定期的に起こる赤ん坊の「ぐずり期」のことのようだ。
このぐずり期、最初の到来が生後5週頃と言われており、まさにいまの我が子がその時期だ。
初めての外の世界で色々な刺激を受け、急速に五感が発達することに赤ん坊自身がついていけず、大いなるぐずりを発揮するとのことだった。
そうか。我が子は苦しみながらも、成長しようとしていたのか。そう理解できれば、私の気持ちも、何故泣き止まないのかという不安ではなく、頑張れ我が子よという応援に変わった。
一つひとつ、知らないことを知っていく。親も子も共に成長していくのがきっと子育てなのだ。
さあ、明日からも黄色い尻を丹念に拭いていこう。父も成長するぞ。そう臍を固めた一日であった。