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育休父が、子育て支援センターに行ってみた話

私の住むまちでは、子どもが生まれたすべての家に助産師や保健師が派遣され、産後の体調や子育ての悩みを相談することができる「新生児乳児訪問」という行政サービスが実施されている。

そして先日、我が家にも保健師の女性が訪問に来た。
久々の客人につき、有り余るホスピタリティを全力で披露したいところだったが、勘違い変人野郎と思われること必至であるため、はやる気持ちをクールに抑えた。私はわきまえのある男なのだ。
せっかくの機会なので、寝かしつけのことや夜間のミルク対応のこと、それから母乳のことなど、私と妻それぞれ気になることを一通り相談してみた。専門的な知見から助言を貰えたことはもとより、久しぶりに外の人と会話ができたことで、ほんの少しだけ心が軽くなった気がした。

いまの時代、ネットを使えばわからないことは大抵調べることができる。しかしながら、あれこれ調べるうちに膨大な情報量に不安を煽られることも少なくない。
どれだけ時代が進んでも、人間というのは、人に話をする、人の話を聞く、こんなごくごく基本的なコミュニケーションによって心が救われる生き物なのかもしれない。

保健師の彼女と熱心にコミュニケーションを取っていた折、一つ情報を得た。どうやら我が家の近くに「子育て支援センター」という場所があるらしい。
子育て支援センターとは、乳幼児の子と子を持つ親が交流することができる場所のことだ。市区町村において、公共施設等の身近な場所で行われていることが多い。

育休を取ってからというもの、ずっと家の中にいるため私の足腰は鈍りに鈍ってしまっている。いまの私がアシタカなら、ヤックルに飛び乗ることは疎か、全力疾走も出来ず冒頭2秒で足首を捻挫した末、祟り神にやられているだろう。30歳を過ぎたおじいの運動不足とはこれほど恐ろしいことなのである。
というわけで、足腰の健康増進という大義名分を掲げ、家から徒歩10分の子育て支援センターへ行ってみることにした。

初めての子育て支援センター。初めてのパパママとの対面。人見知りの私には考えただけで頭を抱えたくなるような状況だが、男に二言はない。いや、本当は二言でも三言でもしたい。しようか迷った。しかし、最終的には腹を括りその門を叩いた私は、相当に偉い。

着くと、他のママたちはまだ誰も来ておらず我々だけだったが、程なくして続々とママと子がやって来た。気づけば7組のママと子に囲まれており、パパは私1人のみである。初めてづくしの状況に加え、他にパパが1人もいないとは。まさに絶体絶命である。

頭を悩ませた結果、しばし人間観察に徹することで自衛を図ることにした。

観察をしていると、一つ気づいたことがある。
初対面であるママたちは、仲良くなるスピードがとてつもなく早いのだ。
相手の子を見て、「何か月ですか?」と言う。この一言さえあれば、あとは子どもの話で会話が途切れることはない。ママたちには、出会う前からこの共通言語が存在するのだ。
きっと、つわりに始まりお産を経て子育てに至る時々で、色んな苦しさを味わってきた仲間であるという大前提があるからだろうと、私は想像した。
ママって凄い。

結局、最後までパパは私1人だけだった。
だがそれでも、ママ同士の会話を聞いたり、他のママが子に接する姿や、我が子より少しだけ先輩の子らをたくさん見ることができたし、センターのスタッフの方々も大変あたたかく迎え入れてくれて、心がレンジでチンされたようにほっこりした。これが無料で体験できるというのは、やはり行政サービスって有難いなと思う。

他の施設でも、子育てに関する色んな支援を行っていたり、パパ同士の交流の場を提供しているものもあるらしい。こんなにも有益なサービスが身近に溢れていることに、親になって初めて気づいた。
子育てをしていると、日々気づきの連続だと感じるが、子育て支援センターに来てみて、よその家庭のママのことや、育児世代に提供されているサービスのことなど、少し広い視野で気づきを得ることができたと思う。

何事も経験である。一歩踏み込むことで見える景色が、きっとあるのだ。

次こそ、パパ友、ゲットだぜ。

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