【日常にアルプス_1月4日】移住は4年目から
Good Morning Alps!
おはよう伊那谷。
2025年1月4日 土曜日
伊那谷から権兵衛トンネルを越えて木曽谷へ。中央アルプスの向こう側に行くと御嶽山が近くなる。年始の木曽福島スキー場は混んでいて、朝から夕方までずっと御岳山頂には雲がかかっていた。でも2024年も2023年も2022年も2021年も、冬も春も夏も秋も、私は何度も御嶽山を見に来ている。いつも御嶽山は堂々としていてかっこいい。だから今日その姿が見えなくても別にかまわない。
2021年2月、大阪市中央区から長野県伊那市に引っ越してきた。大阪市の中では小高い場所(上町台地)の海抜約40メートルから、長野県伊那市高遠町の標高約700メートルへ。「海抜」から「標高」へと言い方も変わっていた。
もうすぐ移住5年目に入る私が、最近思っていることを自分勝手に言うよ。
「移住は4年目から」
移住はごく個人的な体験だ。移住の背景も、家庭環境や仕事や経済や価値観といった前提条件も、移住の目的も、移住後のあり方も、私のケースは私にしかあてはまらない。移住後も今もそう思っている。もし移住を考えている他の人に役立つことを言えるとしたら、「伊那市、雪あんまり降らんけど気温差めっちゃあるし、雪道じゃなくて凍結はけっこう怖いよ」くらいかなと思う。
移住1年目の人
移住1年目の人は、なんかしらんけど、発信したがる。使命感なのか、自分が見つけた「好き」を伝えたいからなのか。発信者としてテンションが高い。長野県が大好きな観光客とほとんど変わらない。いやむしろ「私は長野県でこんな暮らしをしているけど、きみはまだ都市で疲弊してるの?」的なマウントを無意識にとりがちで、とても無邪気だ。
移住前に住んでいた場所や都市への否定的な言及は移住促進や転入促進の広報ではマイナスになる。自分と似たマインドの移住憧れ層(移住ターゲットの顕在層)だけを見ているからなんだろうな、と思う。この層が持つやる気と行動力をどう活かすかが転入促進広報のポイントじゃないかと思う。
移住2年目の人
移住2年目の人は、四季や年間行事を一巡しただけあって、説得力を増している。生活にも慣れて、地域にも馴染み、行く店や場所も増える。
移住3年目の人
移住3年目の人は、「去年は」「一昨年は」と個人的な体験や主観のソースが増える。でも本人は「移住してきたんです」と自己紹介するし、土地へのリスペクトを持って暮らしている人が多いように思う。自治会などのコミュニティではじめての役を担う機会も出てくる。謙虚さ、責任感、安定感。移住を検討している人にとって、移住3年目の人こそ、親しみやすさと頼りがいある先輩になるんじゃいかなと私は思う。
そもそも、見知らぬ土地で生活を落ち着かせるためには時間が必要だ。移住1年目でテンション高めに発信していた人の中には、いつの間にか静かになり、自分の暮らしづくりに勤しむ人もいるし、「思っていたのと違う」と出ていく人もいる。3年暮らしている人はそこそこ土地にマッチしているように感じる。
移住4年目以上の人
移住4年目になると、移住直後と環境を変えている人も多い。転職したり、畑仕事が本格化したり、逆に農を離れたり、引っ越したり、家族構成が変わったり、コミュニティを変えていたり。3年過ぎてもその土地に居続ける人は「定着」フェーズに入っているんじゃないかと思う。
たとえば、土地に根ざして活動する「地域おこし協力隊」の任期は3年で、そのまま住み続ける人もいればあっさりと離れていく人もいる。個人的には、この定着フェーズに入った移住者で、SNSなどで発信している人の脱力ぶりが私はいちばん安心する。実際、私が移住してすぐに始めたTwitterで、よく見ていたのは松本に移住して4年目の方のツイートだった。
個人的体験を個人的体験として発信していて、スノボもおいしいお店もお酒も市民農園での収穫も、なんだかとても楽しそうに見えた。4年後、私もこの人くらいカジュアルな移住者になれたらいいなと思っていた。
私はもうじき5年目を迎える。私なりにこの土地に「定着」しつつある気がする。定住と言い切る気分ではないけど、ここはわりと好きだし、今の生活もわりと好きだ。誰かの役に立つ体験なんて何ひとつ持っていない。でも、私にとっては必要な4年間だった。