Developer② USトップデベロッパーGreystarについて~日本デベとの対比~
1.Greystarとは
米国のマンション関連業者団体であるNational Multifamily Housing Council(NMHC)は例年全米のマンション関連の業者ランキングを出しているが、これによるとTop Managers(プロパティマネジャーのこと)、Top Builders、Top DevelopersでGreystarがトップとなっている。
Greystarは全米を中心にグローバルに展開する不動産会社であり、Property Management, Investment Management, Development and Constructionの3セグメントにより構成されている。
Greystarは上場しておらず(上場してないのに世界最大というのもすごいが)、Yahoo!ファイナンス等に情報がないので以下Wikipediaの記事から抜粋して引用する。
2.GreystarのInvestment戦略と日本のデベロッパーとの比較
上記の通りGreystarはProperty Management, Investment Management, Development and Constructionの3セグメントにより構成されている。
Investmentセグメントの最新のAUMは58.2Bドルとなっており、世界不動産AUMランキングでも50位前後とかなり巨大なキャピタルを擁している。
投資戦略で特筆すべきは"Develop to Core"である。御存知の通りアメリカは金融緩和の影響で主にインダストリアルアセットを中心に異常にキャピタルゲインが高まっており、出来上がりの物件を外部から購入するハードルが非常に高まっている。
そこで各マネジャーは開発物件を取得案件として混ぜることで取得価額を下げ、高いリターンをあげようと腐心しているわけだが、Greystarは出自がデベロッパーであることからその開発能力を投資ビジネスにも生かすことができるわけである。
また、アセットタイプも自らが得意とするMultifamilyが大半を占め、次いで学生住宅となっている。エリアについては基本北米をベースとして、後述するがAPACリージョンも増やしつつある。
なおGreystarは出自がデベロッパーなので、Investment Managementもその開発ノウハウを生かして運用を行っているわけだが、基本的に上記3セグメントは独立しており、どれが主で従とかの階層構造はない。
一方日本の不動産業界は三井不動産や三菱地所等の総合デベロッパーを頂点とするヒエラルキーがある。
例えば三井不動産がスポンサーであるJ-REIT銘柄のNBFが三井新宿ビルを三井不動産から1700億円で取得した件が話題になった。不動産界隈では「1974年竣工のおじいちゃんビルを傘下のNBFに買わせることで自らのバランスシートはスッキリして開発資金ゲット!そしてNBFはCAPEX大丈夫か?やはりREITはゴミ箱」などとお祭りになったわけだが、この件に見るようにJ-REITはソーシングルートをほぼスポンサーに依存しており、したがって本体が作った物件をREITに売って資金を得て…と言ったような本体の資金調達のためのハコとしての側面が強く、明確に主と従の関係があるわけである。
3.アジア投資
Greystarは実は日本も対象エリアとするファンドビジネスを展開しており、2020年に"Greystar Japan Multifamily Venture"をローンチしている。また日本も投資対象とするAPAC MULTI-FAMILY VENTURE Iを2022年にローンチしておりひょっとしたら今後日経不動産マーケットでGreystarの名前が出てくるかもしれない。
なおファンドマネジャーのボイド氏の興味深いコメントがあった。
要するに中国と豪州では賃貸住宅の供給が少なく、政府の支援もあるため開発事業を展開する余地があることからGreystarの開発能力を活かせるとのこと。
逆に日本はデベロッパーによる開発能力が高く、政府による支援も少なく参入障壁が高いため、Greystarの開発能力を活かす余地が比較的少ないということを示唆しているかもしれない。仮に日本に投資をするとしてもMultiafmilyの取得・リノベと言ったコア・バリューアッド投資を主で行うのではないかと思われる。
なお余談だが、日本でプロロジス、GLPと言った物流分野では外資勢がメジャープレイヤーだが、コレは物流分野は当初は大手デベが未参入であった、いわば間隙であったからという事情がある。
そういうわけで開発事業については日本は参入障壁が高い国と言えるわけだ。