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メールを打とうとしたら、「だけ」という文字の予測変換に「ダケカンバ」が出てきた。

ずいぶんと渋い予測をしてくれるものだと思ったが、懐かしい言葉でもあった。

昔、1シーズンだけ、尾瀬の自然ガイドをしたことがある。
「ダケカンバ」はそのころ覚えた言葉だ。

かんなの削りくずのような薄い皮を幹の表面にひらひらとつけて、山の中のそこかしこに伸びていたダケカンバは、尾瀬沼周辺では、ある意味、最も印象的な木だ。
しかしながら、同じ「尾瀬」という言葉で認知されている、標高の200m低い尾瀬ヶ原では、ほとんど見ない。シラカンバばかりである。

白い美しい幹をさらすシラカンバに比べると、かんなくずか、かつお節のような赤茶けたびらびらを、いっぱい幹にくっつけているダケカンバは、粗野な印象で観光客ウケはしないだろうと思う。
でも、どこか野生の逞しさを感じるものがあり、実際そうのようである。

「パイオニア植物」という言葉も、この頃覚えた。
山火事のあと、何もなくなった荒れ地に真っ先に芽吹き、のちに続く植物たちの場所を整えていく役割を果たす植物だそうだ。そして、役割を果たすと枯れていく。

ダケカンバも、真っ先に芽吹く仲間のひとつで、陽射しの好きな陽樹であるそうだが、森ができ始めてからの日当たりの悪くなってきた場所でも、結構逞しく生き延びる。
萌芽更新により、一度根付いた土地にはしぶとく根を下ろし続け、しなやかに曲がる幹は、雪の重みに耐える力も強いらしい。

ダケカンバ、岳樺。逞しくしなやかな山の木。

もう何年も見ない、何年も使わない、山の木の名前に、意外なところで出会った。


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