何を書こうか、という余白の時間が生まれるノート Shikibun 木のノート
信州経木Shikiで作った木のノート「Shikibun(しきぶん)」を2022年の春に出してから半年が経ち、色々な感想をいただいている。一番多いのは、間違いなく「もったいなくて使えない」というものだ。「気軽に使ってくださいね」と言ってきたけれど、最近は、「もったいなくて使えない」もいいなと思い始めている。
何を書こうか、何を描こうか
今や日本で紙は高価なものではない。だから僕たちはアイデアを出したり、メモをしたり、落書きをしたり、絵の書いたり、文章の下書きを殴り書きしたりすることができる。
ノートを前に、はじめに何を書こう、なんて考えることは随分少なくなったのではと思う。
世界一周旅行中にインドで1ヶ月過ごした。そのときにインドの集落の小学校に行って子どもたちの授業を見学させてもらったことがある。
小さな子どもたちは紙ではなく、小さな黒板を持って、そこに文字の練習をしていた。
少し大きな子になると、ノートを使って黒板を板書する。紙は、「文字」の練習に使うのはもったいないと考えているのかな、と想像する。
日本でも、手間をかけて和紙を作っていた時代には、何かを書くのには躊躇いがあったのではないか、と思う。僕らもハガキを前にしたり、いい便箋を前にすると、書き出しに少し悩む。
それはなんだか失敗の許されない感じがあるからかもしれないし、手紙を出す相手の顔を思い出しながら悩んでいるのかもしれない。
いずれにしても、逡巡する時間や一歩立ち止まるような時間が生まれるプロダクトっておもしろいじゃないか、と思い始めている。
何かを「書く」、何かを「描く」前の余白を楽しむプロダクト。ペンを持って、「ふんふん」と悩みながら何を書こう、誰に書こう、と考える時間を楽しむノート。それがShikibun 木のノート。
ノート一冊一冊、一頁一頁が違うもの
木のノートは、原材料からものづくりまで全て一連で繋がっていて、それは地域資源と地域の作り手によって生み出されている。
やまとわの木こりチームが隔週で伊那谷の山のアカマツを収穫しにいく。その丸太を職人が四角く製材し、一枚一枚の経木に削る。その経木をバックオフィスチームが整え、干す。2-3日かけて乾燥したら取り込んで裁断して整える。
ここまでが僕らの仕事。
経木が仕上がったら、日本で唯一という手製本工房の「美篶堂」さんに経木を持ち込む。そこからまた製本職人さんの手によっていくつもの工程を超えて1冊1冊ノートになっていく。
一冊ごとにノートの表情はもちろん断面も違うし、木の性格も違う。個性的で生き物のよう。同じ伊那谷に、美篶堂さんがあったらかこそできたノート。
ノートを開いて、何を書こうかと考え込む経験は僕にもある。まずは字が下手だから、字の練習からした方がいいんじゃないか、とか考えてしまう。今回、Shikibunを一緒につくってくれている美篶堂さんの丸背のハードカバーノートだ。
イベントでご一緒したときに、その作る過程を見せてもらって、欲しくなって買ったノート。美しいそのノートに何を書くのがふさわしいだろうか、って考えて、「んーんー」と唸っていた、緑色のカバーのノート。
結局何を書くのかに使ったのか。それは、お会いしたときにでもお話ししましょう。代わりに、Shikibunを何に使っているか教えてもらえると嬉しいです。
Shikibun 木のノートはオンラインストアから購入できます
やまとわオンライン