神髄
神髄
木星の全周をオーロラが覆う
ものごとの始まりを考える時、
わたしは宇宙のビッグバンを思う。
無音の超爆発は、
無限に開花する襞。
衛星イオがそれを見つめ
襞の内側に銀河が根をはり、
開花で散らばった木っ端微塵がわたしらと成る。
おそろしいことに、
襞の開花は今も続いている。
神の衣服のようだと思う
だから嘆くな。
他者の言葉も取り巻く環境も、
開花の副産物でできたただの屑だ。
傾けるべき声は、
お前の心にしかない。
ガリレオが見つめた土星の環は
生き物の成長を考える時、
わたしは植物の内部を思う。
決して外には聞こえない音を立てて、
ぎりぎりと言っている。
水の氷でできていて
成長とは目に見えないものだ。
植物の花が多彩なように、
その色彩も目がくらむほど多様だ。
深紅がいいと言うものもあれば、
氷点下の青がいいと言うものもある。
その空隙では83の衛星が
成長の色はじつは選べるものではない。
君の小さな細胞はすでにその色を決めていて、
あとはどう育むかだ。
いつも凍えている
肉厚でもいい。
可憐でもいい。
決められた色を誇って、
花は咲くだけだ。
その奥に天王星
自分というものについて考える時、
わたしは欲望を思う。
あの星に手を、
光り輝かせて。
衛星にはシェイクスピア
やおら吹く風も欲しい。
降り注ぐ日光も欲しい。
けれどそれらは求めるものではなくて、
与えられるものだ。
ダイヤモンドの雨が降り
どしゃ降りの雨の日に、
与えられるものは窓を濡らす雨音の世界。
星風の夜に、
与えられるものは天を打ち震わせるアリア。
星の脊髄はズレている
だから焦燥に駆られるな。
与えられるものだけを美しいと思えばいい。
そう思える心こそが、
お前の強さに変わる。
月はその面を
ものごとの終焉を考える時、
わたしは月を思う。
たとえばあるポップスターの歌詞は、
幸せで、訳わかんなくて、自由に、さみしく、
そう混乱している。
いつも表側しか地球には見せない
あらゆる心の状態は同時にあって、
混乱の中を人は生きる。
生涯の果てに辿り着きたい場所は、
水の止まった湖のような、
その理由はたったひとつ
たったひとつの澄み切った心境。
月はきれいなばかりの自分を、
地球にいつも見て欲しいから、
その面を表しか見せない。
裏側がどんなに汚れていても、
あの美しい月を見ればわかる。
ハートの髄を剥き出しにしたあの輝きは、
このままここで終わってもいい、
いつでもそう思える心境ゆえの、
たったひとつの澄み切った覚悟だ。