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蝶が舞ったら桶屋が儲かるのかもしれない

あれは5月のこと。駅から徒歩2分、近隣住民のライフラインであるスーパーが7月から無期休業に入るとの噂に、地元民がざわついた。私にとっても駅から自宅の間に位置しており、遅い時間まで営業をしていたこともあって大変便利で重宝していた。建て替えなのか、完全閉店なのか、地元の情報が集まるお店に聞いても誰もその実情は知らない。無期休業とは…。

閉店までの1週間は数年前のパンデミック初期や地下神殿と呼ばれる水路が活躍した大型台風を思い出させる有様で、私がよく手にする商品も、一生買わないであろうものも一斉に棚から消えた。計画的に在庫処理をしているのだから当たり前だが、スーパーがいつも通りの姿をしていないことがこんなにも不安を煽るのだと、何だかとても悲しい気持ちになった。

ここ以外のスーパーが無いわけではない。駅の上には価格帯が少し高めのスーパーがある。また、駅の反対側には廉価なスーパーもある。しかし駅上には鮮魚がほぼ売っていない。廉価なほうのスーパーは量が多いものの品質や添加物に懸念がある。あらためて、これまで18年もお世話になってきた、くだんのスーパーは品揃えも品質も価格帯もちょうどよかったのだなと思った。短期の休業ならまだしも、いつ再オープンとなるかも、再オープンがあるのかさえわからない中で、私は7月以降の食料品や日用品の調達のフローを見直さなくてはならなくなった。

実はこの休業となるスーパーには系列店が近所に存在した。立地は私の家から駅に対して右90度方向に歩いて8分程度のところだ。近いと言えば近いが、用事のない方向に位置するという地理的な抵抗感があってこれまで訪れたことはなかった。当然、仕事からの帰宅の途中に立ち寄ることもせず、さらに私は車や自転車を持たないため、大量の仕入れは元気が余ってないとできそうもない。

ただ背に腹はかえられない。私のごはん生活の危機なのだ。狩場の下見はせねばなるまい。

そんなこんなで、その自宅から8分のスーパーを訪れてみた。これまで通ったところよりも広く、そして買い周りしづらい店づくりだった。前のスーパーは小ぶりではあったが、人の流れをよく計算しており、カートを押す人がいたとしても正面からぶつかることはあまりなかった。こちらのお店では動線というものがなく、人に、カートによくぶつかる。カートを押す人も多い気がする。人にぶつかるたびに、おじさんやおばさんに舌打ちされる(気がする)。肩身がせまい。品川駅なら流れにまかせて歩けるがカオスの渋谷駅は歩けない都会ビギナーのような気持ちになった。

ただ、驚きをもって気づいたことがある。こちらのスーパーのほうが(広いからということもあるだろうが)品揃えが豊富かつ割安なのだ。その理由はすぐにわかった。互いに数分しか離れていないのに、駅近の店舗は単身世帯が多いエリアで、こちらはファミリー層が多いエリアなのだ。その分、お肉や野菜のロットが多い。いいことのようにも思えるが、普段からお惣菜作り置きで冷蔵庫パンパン問題に頭を抱えている私には新たな難題でもあった。これまでのスーパーより行きにくくなった分、こまめな買い物もしづらい。庫内に余裕がないことで、作り置きどころか、まとめ買いもできなくなるかもしれない。とうとう買わねばならないのか、ファミリー用大型冷蔵庫を…。

冷蔵庫の購入は今後検討するとして、とりあえず当面は面倒でもこのスーパーにお世話になるしかなさそうだ。一週間分のまとめ買いは出費も多く(均せば変わらないだろうが1回の支払額に目が飛び出る)、荷物は重くて心が挫けそうだ。それに真夏の昼などに買い物に行ったとしたら、冷凍食品は全滅必至だ。もしかして、もしかしたら、冷蔵庫よりも自転車を買った方がいいのかもしれない。いややっぱり冷蔵庫か…。

スーパーが一つ閉まるだけで大騒動。バタフライエフェクトという言葉が頭をよぎった。私が散財しないうちに早く近所のスーパーに再開してほしい。

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