格闘
エディトリアル・デザイナー。
まあ直訳すると「編集モノのデザイナー」。
言ってみれば、書籍や雑誌など編集された媒体をデザインする人ということで、一般的には印刷物全般に対応するデザイナーのことを言います。
じゃあ、Webデザイナーと何が違うのか、というと、デザインする場所が紙面上(誌面上)ではなく画面上だといういうことだけで、ことデザインレイアウトという意味では大差ありません。
ただ、WebデザインはWeb上の動きや仕掛けや、Webに載せるための様々な制約や決め事に沿ったデザインとなり、エディトリアル・デザインは、印刷するための様々な制約や決め事に沿ったデザインとなるわけです。
Webという比較的デザイン上の制約の薄い媒体でデザインをすることは、デザイナーにとっても割と自由度を確保できるデザイン作業です。
でも、Webデザインから始めたデザイナーは、印刷物のデザインが出来ないことがあります。
いや。出来ないことはないのですが、エディトリアルという比較的制約の濃い媒体でデザインすることに慣れてないので戸惑うことがあるのですね。
一方、エディトリアルデザインをずっとやってきたデザイナーは、コーディングが出来ないという最大の欠点はありますが、ことデザインの範疇ならなんでも出来ます。
これはデザインというものの全てを経験してきたかどうか、という経験率の問題であって、決してWebデザイナーの方がエディトリアルデザイナーに比べて劣っている、という話ではありません。
実際にセンスや発想という意味では、Webデザイナーがエディトリアルでは表現できない素晴らしいデザインをたくさん生み出していることは事実ですから。
ただ、エディトリアルデザインは、手にとって誌面を捲るという行動を考慮して考えられた匠であって、ポスターや壁画広告などの一発ビジュアルを生み出すグラフィックデザインとも違います。
あくまでも読み物をどうグラフィック視野に落とし込んでゆくかの作業となるわけです。
しかし、エディトリアルとはいえ、グラフィックデザインの手法や考え方を排除する謂れは全くないと思ってきました。
実際に僕はいかにエディトリアルデザインを、グラフィックなコミュニケーションツールにするのかということと格闘してきたと思います。
文字のジャンプ率を高めて、インパクトや雰囲気を演出したり、文字を小さく載せて空間を生み出すことによって、全体の印象を格段に良くしたり。
そういう努力とか試みにも至らない、ごく当たり前のレベルでそれらを実践しているわけです。
ここでなぜ「格闘」という表現をしたかというとですね。笑
まあ、デザイナーが赤と言えば赤なんだよ、というルールが通用しない世界がたくさんあるのです。笑
ディレクターの拙い好みだけが支配する案件が結構あるんですね。
もちろんそこで喧嘩別れする男気溢れるデザイナーもいるのでしょうが、まあ僕はあくまでも芸術家ではなく商業デザイナーという立場でもありますから、そこはクライアント側に立つディレクターの要望にも応えてゆくことは大切な仕事でもありますからね。
だからこそ「格闘」という風情になってしまうのです。笑
デザイナーが赤と言えば赤、にしとくのが、その媒体とクライアントにとって100%幸せなことだと、デザイナーは常に思いながら、指示通り青にする日々を「格闘」しているのです。w
今年も「いいデザイン」が出来たらいいなと思います。
忖度に塗れたこの感性をもう一度思い出して、「格闘」してゆきたいと思います。