リサイクル瓦を使った手洗い鉢の開発ストーリー・完成まであとわずか!素焼きまでのプロセスを紹介します
こんにちは。
アルメタックス スタッフです。
今回は、以前お話しした「リサイクル瓦を使用した手洗い鉢の開発」についての続編です。
まず、これまでの経緯についてざっとおさらいします。
1回目の記事では、どうしてアルミメーカーが陶器の手洗い鉢を作ることになったのか、
ブランドコンセプトにあるストーリーのあるものづくりや地産地消の思いについて触れています。
2回目では、瓦を混ぜた陶土という初めて扱う素材での商品開発の試行錯誤の様子や苦労話をお伝えしました。
3回目の今回は、商品化に向けての性能試験をクリアし、手洗い鉢を成形・素焼きするまでの詳しいプロセスを紹介します。
メーカーの仕事に興味のある方だけでなく、陶芸などものづくりに関心のある方に楽しんでいただける内容になっています。
ぜひお読みください。
今までにない「瓦入りの陶土を使った手洗い鉢」は商品化できるのか?
実用化に向けた性能試験の結果は…
前回の記事でお伝えしたように、瓦を混ぜた陶土の成形性や透水性については検証済みです。ただ、それだけでは、洗面鉢が作れるということが確認できたのみ。
商品化するには、これまでにない「瓦を混ぜた陶土」の手洗い鉢が、毎日の使用に耐えうるのか、より厳しい基準で検証を行う必要がありました。
ちなみに、手洗い鉢で一番よく使われている素材は「陶器」。
皆さんもご自宅や商業施設などでよく見かけるのではないでしょうか。
その理由は、以下のようなメリットがあるから。
つまり、検証にあたっては、上記のような陶器のメリットが生かされているのか、デメリットが克服できているのかに注目し、以下のような性能試験を実施しました。
○曲げ強度試験
まず行ったのが、曲げ強度試験です。
この試験は、素地そのものの強さを確認するために実施しました。
というのも、陶器は焼き物なので、ひび割れのリスクがあります。
手洗い鉢を使用する際は、化粧品のボトルやシェーバーなど、硬い素材のものを扱うことがあります。
そういったものの落下により、手洗い鉢が傷つくことを防ぐため、強度をチェックする必要がありました。
その方法は、直方体のサンプル3点を試験機に載せ、上から曲げる力を加え強度を測定するというもの。
結果は、通常の信楽焼と同等の強度があることが判明し、まずはクリア。
○吸水率確認
次に行ったのが、吸水率の確認です。
常に水に濡れている状態の手洗い鉢は、吸水率の低さも大切です。
吸水率が低いことで、水をはじき、汚れにくくなるためお手入れが簡単。
さらには、雑菌の繁殖も防ぎ、清潔な状態を保つことができるのです。
試験ではサンプルを水に浸け、増えた重量を計測し、吸水性をチェック。
その結果、通常の信楽焼の吸水率と同等であることが分かり、こちらもクリア!
○耐薬品試験
さらに実施したのが、酸やアルカリ性の薬剤に対する耐性を調べる「耐薬品試験」。
手洗い鉢は、洗剤を使ってのお掃除がお手入れの基本。
また、化粧品やハンドソープなど、さまざまな性質の液体がかかることもあります。
そのため、洗剤をこすった際の表面の摩耗度合いを確認しました。
薬剤の使用により、塗装のはがれや汚れが生じないかチェックしたところ、異常なし!
以上の試験をすべてクリアし、リサイクル瓦入りの陶土という未知数の素材での商品化がいよいよ見えてきました。
商品化も大詰め!いよいよ手洗い鉢を焼き上げます~成形から素焼きまで職人さんとのチームワークで完成
厳しい性能試験をクリアした後、いよいよ焼き上げに着手します。
理想とする“温かみがありながらもシャープな見た目”というブランドコンセプトにあったデザインを実現するため、信楽焼の職人さんと幾度となく試作を重ねました。
○成形作業
陶器の成形には、さまざまな方法がありますが、今回の手洗い鉢は、自動ロクロを使用し、職人さんの手作りで成型する技法を採用。
自動ロクロ(電動ロクロと呼ぶこともあります)とは、電気の力で回転する台に陶土を乗せ、足踏みペダルで回転数を調整して成形する方法のことをいいます。
難易度が高く、職人さんの熟練の技術が必要な技法ですが、左右対称の円形を大量に作るのに向いているので、手洗い鉢の生産に適した作り方といえます。
試行錯誤の末、土のあたたかみがありながらシンプルモダンなフォルムの手洗い鉢が完成!イメージどおりの仕上がりに大満足です。
理想のフォルムに仕上げるまで、何度もトライしてくださった職人さんには感謝しかありません。
○素焼き
商品製作もいよいよ大詰め、ついに成形した手洗い鉢を素焼きします。
素焼きとは、本焼きの前段階の焼成のこと。
釉薬を掛けずに、本焼きよりも低い温度で焼き上げます。
素焼きをすることで、陶土に含まれる水分量が減り、釉薬ののりが良くなります。
また、土が焼き締ることで強度がアップし、本焼きの際に土の収縮率が低くなる等のメリットがある大切な工程です。
素焼きでも問題なく、理想とする美しい形状に焼きがありました。
残すところは着色と仕上げだけ、完成への期待が高まります!
最後となる第4回では、陶器の色を表現する釉薬作りと最終の本焼きについて紹介します。
リサイクル瓦を使った、これまでにない手洗い鉢の完成を一緒に見届けましょう。
次回もお楽しみに!