作詞メモ① 撞着語法
撞着語法とは「臆病なライオン」「公然の秘密」のように矛盾する複数の表現を内包した表現のことを言います。
オクシモロン(oxymoron)とも言いますね(余談ですが私はオクシモロンという言葉を以下の曲で知りました)
私はこの撞着語法が大好きです。多義性、曖昧さ、グラデーション、そういったものを含んだ繊細で賢明で優しい表現であり、固定観念や一様な思考から離れた自由で詩的な表現だと思うからです。
今回は撞着語法の例と魅力、実際に活用する上での注意点などについてまとめたいと思います。
(※あくまで素人が自分の思考を整理したものですのでご了承ください。)
撞着語法の例とその魅力
私の好きなBUMP OF CHICKENは撞着語法的な表現を多用することで知られています。
以下はその一例です。
上記の例では「聞こえない言葉」+「呟いてる」
と「皆集まって」「全員ひとりぼっち」で、撞着語法がダブルで使われています(贅沢ですね)。
2行目では「皆集まって」という通例ポジティブな言葉が前にあることで後ろの「全員ひとりぼっち」の孤独感が強調されるほか、「皆集まって」「ひとりぼっち」という矛盾する2つの言葉が一行に組み込まれていること自体が不思議な感覚や面白みを生んでいます。これが撞着語法の魅力です。
撞着語法の使い方
撞着語法は単なる対義語ではありません。
たとえば、
「小と大」「真実と嘘」
これらは単に対義語を並べただけであり、大抵の場合は単純で、大味で、チープな表現になります(もちろんこれらが映えるときもあるでしょう。太字のゴシック体のようなものです)
撞着語法的な表現は、以下のようなものです。
「小さな巨人」「優しい嘘」
まず、「形容詞」+「名詞」になっていることに注意してください。単に「名詞」+「名詞」で並列に並べたときに比べて表現に深みが増したと思います。
次に、2つ目の「優しい嘘」に注目しましょう。「嘘」の対義語は「真」「真実」であり、「優しい」は対義語というわけではありません。しかし、「嘘」という言葉は一般にネガティブな意味を持ち、「優しい」というポジティブな言葉と結びつきにくいものです。この2つを結びつけることで表現に幽深な色を持たせることができています。
この「優しい嘘」という表現は「本当の嘘」「正しい嘘」とするより良い表現になっていると思わないでしょうか。その理由は単なる対義語的な表現から離れた「捻り」にあると思います。
赤と青 → 赤い青 → 燃えるような青
生と死 → 生きた死体 → 生きた化石
上記の例では「赤い」ではなくそこから連想される「燃えるような」という修飾語、「死体」ではなくその性質を持った「化石」という名詞にそれぞれ表現を置き換えています。この連想ゲーム的な「捻り」が表現に奥行きと深みを持たせる本質です。
まとめ
・撞着語法は矛盾する言葉を一つの表現に組みこむこんだもの。
・撞着語法は単なる対義語の並列ではない。
・「捻り」が良い撞着語法の本質。
以上になります。
読んでくださりありがとうございました。
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