菜月海

歌になるまで

菜月海

歌になるまで

最近の記事

この旅の先で

実家から最寄駅に向かう、朝8時前。 通っている音楽専門学校の全時間割のなかで最も難しくて、最も好きなのが、水曜日の1限だ。 徹夜で修正した楽譜を全員分印刷し、授業開始と共に演奏が出来るように準備しておく。 いつもより早い時間に歩く見慣れた町は、私の心を映したように、不安定で、煌めいている。 家から徒歩1分の必ず通る小さな公園は、小学生の頃に水風船を投げ合う遊びをした場所だ。 私は絶望的に体を動かすことにおいての才能が無く、よく水風船を投げても相手に届かず地面にベシャッと

    • 浮遊

      夏休み、1日を浪費し、時刻はもう17時になろうとしていた。 垂れ流しているテレビから、スーパーニュースアンカーのオープニングが流れてしまう時間だ。 あの音楽を聴くと、たちまち「もう今日も終わりですよ」と叱られている気になり、まだ手をつけていない宿題や、ママに頼まれたのに干しっぱなしの洗濯物や、本当は今日遊んでいるはずの、喧嘩してしまったあの子のことが、頭から離れなくなってしまう。 急いでリモコンを手に取り、金曜ロードショーで放送されたナルニア国物語の録画を点ける。 何