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君はシュープリーム。
夢は、しみじみと驚くようなことを連れてくる。眠る私を時間旅行に誘うように。
夢の中。デート中。
私は峯田和伸と池袋にいた。ご飯を食べ、お酒を飲み、西口側の駅構内を愉しい心地で彷徨していた。このあいだ、彼が住んでいる高円寺で飲んだ時は、アパートにお邪魔してもちゃんと終電で帰宅できたのに、今日は帰りたくないし、帰らせたくなかった。
人生初の『このまま流れでお泊まり』っていうのを敢行する為に、箱入り(っぽく)育てられた私は、池袋駅の公衆電話から母が待つ家に電話を掛けるのだった。
目が覚めて『付き合って初めての!このままの流れでお泊まり』という、現実ではもう味わうことが許されていない甘い瞬間をフニャフニャと噛みしめる。この先、峯田和伸と私がどうなったかも私は知ってる。お相手が峯田和伸ではないだけで、それ以外は20数年前のあの夜と全く同じだったから。
彼は峯田和伸以上に遠い遠い人だけど。
峯田和伸は、テレビで見れるが。
彼とは何にも繋がっていないので、近況も確認しようがないし、生き死にすら定かではない。
生活圏もリンクしていないから、すれ違うこともまずない。
池袋の夜だって、心の引き出しの奥の奥の奥、何なら、からくり引き出しの二重底の中にしまわれているような淡さ。だけど、からくり引き出しにしまいこみ、なかなか取り出せないくらい大切な夜。