これが最後の『石原慎太郎』対談~栗原 裕一郎 × 豊崎 由美、追悼企画・石原慎太郎を〈もう一度〉読んでみた
作家生活60年以上!常に最前線にいた作家
石原慎太郎は22歳の時、二作目の『太陽の季節』で芥川賞受賞と順風満帆の作家デビューをし、死ぬ直前まで最前線で書き続けるという作家生命の長い稀有な作家。
単に、作家生命が長いだけではなく、純文学からエンタメ、ルポルタージュ、脚本、作詞などありとあらゆる分野に足跡を残している作家です。しかも、政治家で都知事。弟は石原裕次郎といろんな要素が詰まった作家。
12年前のイベントでは、栗原さんが絶版となっている小説や文章を国立国会図書館に通ってコピーするという手間暇をかけてます。栗原さんによると、豊崎さんと原書房の大西奈己さん、荻窪ベルベットサン店長長谷川健太郎さん、ライター白坂微恵さんというチームで走り抜けたイベントだったそうです。「今では同じようなイベントはできない」、とお二人は回想します。
この日はまずは石原慎太郎の追悼文の紹介から始まります。追悼文を書いた僅か数日後に亡くなった西村賢太の追悼文も紹介されました。数ある追悼文の中で、「福田和也さんは石原慎太郎の文学の最大の理解者だったのでは?」と豊崎さん。
行為を書くのはうまい、観念を書くと悪文
続いて石原慎太郎の代表作を取り上げ、「小説家」石原慎太郎を分析していきます。まず、取り上げるのは、『完全な遊戯』、『嫌悪の狙撃者』、『殺人教室』。
栗原さん曰く、「石原は行為を書くのはうまい、観念になると悪文になる」。これを受けて、豊崎さんは「観念を書くと『だろうか。』というような無責任な書き方となる。(『嫌悪の狙撃者』のような)行為を書く時は短文で小気味いい。」
豊崎さんは「保守といわれる石原慎太郎がかなり不敬なことを『殺人教室』を書いている」と指摘します。深沢七郎の『風流夢譚』が非常に問題になったのと同じころなのに、石原慎太郎は問題にならなかったのは、栗原さんは「話題になってないからでは」と推測します。
また、石原慎太郎は悪文といわれてますが、ワープロのない時代、川端康成さえ、「てにをは」が変な文章もあるそう。
「ワープロでコピペができるようになった現在、お行儀のよい文章が増えた」と豊崎さん。
対談では、スットコ小説『恋のもざいく』(もざいくは平仮名!)シリーズなど、異色の小説や、映画版では石原良純が出演する『秘祭』なども紹介されていきます。石原慎太郎がお二人に贈った画集の紹介も。詳細はアーカイブ画像でお楽しみください。
収録は共同書店PASSAGEで
今回の対談、収録は鹿島茂さんがプロデュースした共同書店PASSAGEで行われました。スタッフが作業をする中で、対談を行ってくださった栗原さん、豊崎さんありがとうございました。
栗原裕一郎さんは昨年11月に『ニッポンの音楽批評150年100冊』という大変な力作を出されています。こちらもぜひお読みください。
【記事を書いた人:くるくる】