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エミール・ゾラはハード・ボイルドの源流~小田光雄×鹿島茂、小田光雄『近代出版史探索外伝』(論創社)を読む~
2022年1月の月刊ALL REVIEWSノンフィクションは、ブログ記事『出版状況クロニクル』で知る人ぞ知る小田光雄さんをお迎えし、小田さんの『近代出版史探索 外伝』(論創社)を読み解きます。
農村出身で郊外消費について研究してきた小田さんは、19世紀の都市消費と地方の生活を描いたゾラに興味を持ち、『ルーゴン=マッカ―ル叢書』の編集と翻訳を手掛けています。
対談は、課題本の第一章「ゾラとハードボイルド」から始まります。
※対談は2022年1月30日に行われました。
※対談はアーカイブで視聴可能です。
英語圏で人気のゾラ
市井の大読書家である小田光雄さん。ゾラを翻訳、論考するにあたり、自分の読書体験からゾラと後世の作家のつながりを推察しています。田舎で育ち、郊外消費を研究してきた小田さんにとって、ゾラは『大地』で地方を、『ボヌール・デ・ダム百貨店』で都会の消費を書いたゾラは近代の生活を書いた作家として注目すべき人。他の作家、特に米国のハードボイルド作家にも影響を与えているはずと推理。
「ゾラは英語圏でも人気がある。映画もゾラ原作のものは面白い。バルザックの映画化作品はあまり面白くない」と鹿島さん。ゾラ作品は映画を通じても米国に伝わっているのではないかと指摘します。
小田さんはゾラの影響を受けている作家として、ダシール・ハメットやウィリアム・フォークナーの名前をあげます。例えば、フォークナーの登場人物の土地への執着は、ゾラの『ルーゴン=マッカ―ル叢書』の『大地』があると考えています。農村部の人の土地への執着はフランスと米国で共通している、と小田さん。
フォークナーがどのような影響を受けていたか、ダシール・ハメットがいかにフランスで愛されているかなど、お二人の話は、自由自在に飛んでいきます。
さらに、ゾラ論の他、謎の作家佐藤吉郎『黒流』と「黄禍論」、コミックスに「青い」という概念が多いという「ブルーコミックス論」から青林堂の話などにつながっていきます。
知識が無尽蔵にあるお二人。書籍のデジタル化に悲観的な小田さんの話も興味深いです。
なお、鹿島さんがドゥ・マゴ賞の審査員を務めたときの小田さんの受賞作が『古本屋探索』です。
対談の詳細はアーカイブ動画をご覧ください。
共同書店PASSAGEを準備中です!
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【記事を書いた人:くるくる】