大河ドラマ『青天を衝け』をもっと楽しめ!~鹿島茂さんの渋沢栄一関連書籍一覧~
NHK「歴史秘話ヒストリア~渋沢栄一 時代を開く」に仏文学者の鹿島茂さんが出演されていて、驚いた人も多いのでは。実は、ALL REVIEWS主宰者の鹿島茂さんは渋沢栄一の伝記の他、渋沢栄一やその周辺の人物にまつわる著作を数多く書かれています。
仏文学者が書く幕末・明治史は視点もユニーク。『青天を衝け』の鑑賞の手引きとしても活用できます。
渋沢栄一関係
まずは、渋沢栄一の伝記。大河ドラマに合わせて、ムック本も出ています。「道徳的であることがもっとも経済的である」という帯の惹句も鹿島さんが書いたもの。
別冊太陽出ている渋沢栄一関連の写真集の監修も鹿島さんはしています。渋沢家の家系図も出ていて便利。指揮者の尾高忠明や競馬評論家の大川慶次郎も渋沢の子孫の方なのですね。尾高忠明は『青天を衝け』のオープニング曲を指揮しています。
渋沢栄一の晩年の談話集、『青淵回顧録』の現代語訳。冒頭は「富者の要務」。
いまどきの富豪はとかく引っ込み思案ばかりしていて、社会のことは実に冷淡で困ります。
コロナ禍で、「今の富豪」に何ができるか考えていただきたい言葉です。
お子さま向けには学習マンガ版「渋沢栄一」があります。
徳川慶喜関係
『本当は偉大だった 嫌われ者リーダー論』には徳川慶喜の評伝が所収されています。西郷隆盛と大久保利通の死後、評価された徳川慶喜。晩年、渋沢栄一が組織した『徳川慶喜公伝』編纂委員会「昔夢会」に慶喜は必ず出席していました。渋沢栄一は徳川慶喜の名誉回復にもつとめてました。
『嫌われ者リーダー論』にはナポレオン三世の下、パリ大改造に乗り出すオスマンの伝記も所収されています。
パリ万国博覧会関係
渋沢栄一の運命は1867年にパリ万博のために幕府が派遣した訪欧使節団に参加したことにより大きく変わります。パリ万博は日本が初めて参加した国際博覧会ですが、鹿島さんは20年以上前に注目しています。
博覧会開催を主導したのはナポレオン三世。そのナポレオン三世の伝記。
パリ万博は幕府と薩摩が参加したことでも知られていますが、幕府と薩摩の対立をうまく利用しのし上がろうとした怪人フランス人モンブラン伯爵を主人公とした小説がこちら。モンブラン伯爵、大河ドラマに出てくるのかな?
おまけ
ALL REVIEWS友の会では毎月1回、鹿島さんをホストとするノンフィクション本の読書対談を開催しています。今般、過去の対談を集めた本が出版されました。
本に所収されている対談のうち出口治明さんとの対談(『論語』)と磯田道史さんとの対談(『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』)で渋沢栄一について、内田樹さんとの対談(『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』)でナポレオン三世についての言及があります。
磯田さんとの対談で鹿島さんはこんなことを言っています。
渋沢栄一の実家は藍玉製造を仕事にしていたんですが、藍玉製造の方法のことは今の百科事典には何も出てこないですよ。だけど昔の、平凡社が最初に出した頃の百科事典にはちゃんと出てるんです。
【記事を書いた人】くるくる
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入会すると、日本を代表する書評家、鹿島茂さんと豊崎由美さんのお二人がパーソナリティーをつとめる、書評YouTube番組を視聴できます。
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