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週刊ALL REVIEWS 巻頭言総集編(2020/12-2021/06)

週刊ALL REVIEWSは100号配信を達成しました。楽しみながら休まず作っているうちにあっという間に100号を配信できました。鹿島茂さんから祝辞もいただきました。

ここまで続いたのは、このメールマガジンを毎週読んでいただいている皆様のおかげです。お礼を申し上げます。そしてこれからも応援よろしくお願いします。

この半年分の巻頭言を総集編としてお届けします。巻頭言は古いものから新しいものの順序でならべてあります。途中で新しい執筆担当者も迎えました。その自己紹介も掲載します。

では、お楽しみください。(hiro)

プロフィール

■新執筆担当者の自己紹介
【やすだともこ】
2人の小学生を育てながら働く会社員。副業としてライティングや編集、原稿をより良くするアドバイスなど。生きがいはミュージカル観劇。どうぞよろしくお願いいたします。

週刊ALL REVIEWS Vol.79 (2020/12/7-2020/12/13)

「犬派?それとも猫派?」という会話ってよく交わされますが、私はそんな場面でちょっと肩身が狭い派です。だって勢いが衰えるとは思えない猫ブームにありながら、どちらも好きだから。犬が好きか猫が好きかなんて決められないからです。いつだって友人の顔してやってくる犬と、ツンデレな猫とどちらも可愛いくてたまりません。そう思っていたら、先週のALL REVIEWSでサラ・ブラウン『ネコの博物図鑑』(訳:角 敦子・原書房)
を見つけ、心がざわざわとしました。前書きによれば、猫は肉食獣として身体を適応させてきた、その凄さなどが書かれているとか。どうやら驚きの真実が隠されているようで、この一冊が猫派に落ちるきっかけになりそうなのです。


一方、写真集などではなく“博物図鑑”というタイトルも気になりました。仰々しい題名が猫にはふさわしいことを指しています。毛並みや色艶、たくらんでいる眼差し、自分に関係のないときはまったく媚びない佇まいは、確かにそうかも知れません。猫は凛としているから猫であって、犬のように手なずけようと思ったり、都合のいい友達になろうと思う相手ではないのかも知れません。作者のサラ・ブラウンさんはイエネコの専門家です。猫の本質は何なのか、どうして“博物図鑑”といわれて納得できるのか、この本で解き明かしてくれることでしょう。
そんなことを考えていたら、ナスカの地上絵で新たに猫の地上絵が発見されたことを知りました。全長37mの巨大猫。2000年の時を超えてきた猫ちゃんなのだそうで、上空からの写真では子どもの落書きのように見えるところがまた愛らしい。2000年前に描かれた犬もそのうち見つかったらいいな。
(山本陽子)

週刊ALL REVIEWS Vol.80 (2020/12/14-2020/12/20)

さて今年も残すところ2週間を切りました。
みなさんにとってどんな一年だったでしょうか。本当にいろいろなことがありました。
コロナ禍による日常生活へのインパクトはもちろん、政治や社会においても国内外で様々な変化のあった一年だったと思います。
私たちの生活は不変のものではなく、なにかの拍子に今回のようにパタッと変わりうるもの、ということを身をもって体験した気がします。
それこそディストピア小説のように。

そんな一年を振り返りながら今週の書評チェックですが、大きな話題になった一冊が紹介されています。
カナダの巨匠・マーガレット・アトウッドによる小説『誓願』(書評は中島 京子さん)です。


こちらはテレビドラマ化もされ世界的大ヒットとなった『侍女の物語』の続編として35年越しに出版されました。強権化する昨今の世界的な政治情勢や#MeToo運動など実際の世の中の流れを考えながら読んでいくと、作者アトウッドの慧眼には心底感心させられます。
中島さんは本作を「奪われた知を取り戻す戦いの物語」と評されています。変化のただ中にいる今こそぜひ読んでおきたい作品です。

今週も書評をチェックしながら、とっておきの冬休みの一冊を探してみてください!(Fabio

週刊ALL REVIEWS Vol.81 (2020/12/21-2020/12/27)

「コロナ禍のおかげです」一瞬ドキッとする言葉とともに、SNSで多く見かけたように思うもの。見目麗しく美味しげな料理の写真だ。成長の軌跡を追う1枚目はたいてい悲惨で、皿まで1色で統一されていたりもする。それが2枚目、3枚目を経て、4枚目は「どうだ!」と自信に満ちた鮮やかな彩り。才が目覚めて一気に“料理垢”へとチェンジした人もいた。食卓が華やげば、気持ちも会話も弾む。一皿がもたらす幸福と楽しさを知った者は、きっとさらなる深みにはまっていくのだろう。小説も料理沼への入口のひとつだ。あの作品で主人公が食べていた何々、お菓子、カクテル。オタクであればあるほど、主人公と同じ体験がしてみたい願望がキッチンへと足を踏み出させるのだ。その同一化をそそってやまない本がある。昨年刊行された『魔法使いたちの料理帳』と、先月出たばかり、続編の『Ⅱ』。おもにファンタジー小説や映画のなかに出てくるスイーツを中心に、色鮮やかな写真付きでレシピを紹介する。どの品も見映えが良く、眺めているだけでも楽しいのだが、この本の素晴らしいのは「読ませるレシピ」であること。「沼地の泥のかわりにブラックチョコレートを使ってもよい」など、作品世界に即した無用の書き込みに「わかっているなあ」とうれしくなる。逆に胃袋を刺激されて、未知の作品に手を伸ばしてみたくなったりもする。人間の三大欲求のひとつといわれる食欲を好奇心に変える、悔しいほどに狡猾で見事な本だと思う。スイーツだから、失敗したところでおかずが一品減るわけでもなし、気軽にチャレンジできる。うまくいったら儲けもので、SNSで披露して盛大に「いいね」をもらおう(あなたの写真にももちろん「いいね」をする!)。なんとなく過ぎ去っていき、気がつけばあと3日を残すばかりとなった2020年。先行きは依然として不透明だけれども、新しい年が誰にとっても「まし」な年になればいいと思う。一年の計が元旦にあるのなら、この正月休みは、よく寝て、そしてよく食べ、よく読んで、2021年を迎え撃つ力を蓄えたい。今年も一年、お付き合いくださりありがとうございました。来年もまた、書評がつなぐさまざま新しい世界へと皆様をご案内すべく、メールレター巻頭言担当一同、コツコツ続けてまいります。よいお年を!(朋)

週刊ALL REVIEWS Vol.82 (2020/12/28-2021/1/3)

あけましておめでとうございます。今年も週刊ALLREVIEWSをご愛読ください。2021年最初の巻頭言です。
コロナ禍のなかの新年、どうしても家族の安否のことと、自分の来し方を考えてしまう。そのなかで過去の読書について考えると、私に最大の影響を与えた作家はトーマス・マンだと思う。手元にある文庫本『トニオ・クレーゲル』(角川文庫)の奥付には昭和45年改版第三刷と書いてある。同じ頃に『魔の山』も新潮社の黄色の装幀の世界文学全集で読んだ。


これらは学生の私には教科書がわりの本だった。『魔の山』を通じて、ヨーロッパの文明の概観を学んだような気になれたし、『トニオ・クレーゲル』を読んでいっぱしの悩める文学青年を気取った。「教養部の先生」としてトーマス・マンに私淑していたふしがある。
その後、小遣いをはたいて新潮社の『トーマス・マン全集』を買い、後期作品を学生下宿や会社の寮で、少しずつ読み続けた。『ヨーゼフとその兄弟』や『ファウストゥス博士』は何回読んでも理解できたとは言えないが、それだけにかえって読みでがあり、ところどころは興味深いのだと思えるようにやっとなった。
年をとってからは『詐欺師フェーリクス・クルルの告白』が面白くなった。実業世界の真面目な勤め人から隠退し、年金生活の気楽さに慣れていく生活を始める私にうまく適合した作品なのだろう。トーマス・マンは長い中断の後、晩年に『クルル』続編を書いている時に、詐欺師の生活を書くことに戸惑いを感じながらも、愛着をかんじていたようだ。『トーマス・マン日記』(紀伊國屋書店)を読んでみると、トーマス・マン「先生」が年をとってからも、毎日「勤勉」に大量の資料を調べながら執筆し、病に襲われながらも懸命に生きる姿がうかんで来る。その姿を自分の生活に投影して考える癖がついた。特定の孫を偏愛し、仮住まいの隙間風で風邪をひき癇癪を起こすトーマス・マンの姿にも強い親しみを感じる。
80歳まで営々と書き続けたトーマス・マンの頑張りにはぜひあやかりたいと思う。あと8年でトーマス・マンの歳に追いつくのだが、トーマス・マンの描いた世界をこれからどこまで深く理解できるかが実に楽しみだ。(hiro)

週刊ALL REVIEWS Vol.83 (2021/1/4から2021/1/10)

気づくと明るいニュースを探している、そんな日々が続きます。そして最近では再生や革命といった類の記事が目につくようにもなってきました。チャンスはピンチといいますし、新年の幕開けでもあります。小さなことでいいので挑戦をしたい、なんて思っていた矢先に見つけたのが『生と死を分ける数学: 人生のすべてに数学が関係するわけ』(キット・イェーツ)でした。


著者は数理生物学者でもある数学ライターです。まえがきで“数字を使えばほぼすべての事柄を記述できる“といい、加えて“数学に参加するという正当な権利を奪われて、数学には参加できないと思わされ、数学が得意でないと思い込まされてきた人々を、そのような思いからを解放するための本“といっています。そうか、思い込まされていたのか、と思った素直な私(笑)は、早速手にとったのでした。
本書では裏にある数学を見過ごしたために起きてしまった悲劇的な事例をあげます。ネズミ講、がん検診、メディア統計などどれも、暮らしの身近にあり、いつ我が身に降ってきても不思議ではないことばかりです。数学に惑わされたことで誤って有罪判決となった刑事事件の例には背筋がゾッとしました。また年を重ねるごとに年月を早く感じるものですが、そこに指数が絡んでいるとは思いもしませんでした。
著者はどう考え、捉えるべきだったかをそれぞれの背景も踏まえながら、平易な文章で書き綴ります。なんせ分厚い本です。一読しただけですべてわかるとはいいづらいですが、図解もあり、専門書に比べれば随分とわかりやすい本です。
そもそもすぐ理解できるのなら、この本を開く必要はないのかも知れません。大切なのはそんなこともあるという気づきで、数学的視点をもった人生の生き方をこの本は指し示してくれます。マスメディア、司法などさまざまな権威が数字や統計をもって物申すときに、ふと正しいかどうかと立ち止まれるか。情報リテラシーの点からも知っておきたいことが満載でした。
あなたは2021年の最初にどの本を選びましたか?(山本陽子)

週刊ALL REVIEWS Vol.84 (2021/1/11から2021/1/17)

1月も入って中盤になってくると、元旦に立てた今年の目標もその決心が揺らいでくる頃ではないでしょうか。
こうもコロナ禍で先が見えない状態が続くと、心身ともに影響を受けますね。目標達成はおろか、前を向いて進んでいくだけでも大変です。
知り合いの精神科医の先生に聞いたところ、何事も気負わず、好きなことに気楽に取り組むのが長続きのコツだそうです。

さて今週のALL REVIEWS、個人的に注目したのがこちらの本です。
『図説 化石の文化史: 神話、装身具、護符、そして薬まで』(訳者あとがきは黒木 章人さん)。


というのも、私はイギリスに暮らしていた頃、ロンドンの大英自然史博物館で化石の保存と修復のプロジェクトに取り組んだことがありました。化石標本の展示は当博物館の目玉コーナーのひとつで、現在に至るまで老若男女問わず人気があります。
そんな古生物学棟へ続く長い通路を進んでいくと、行き止まりに小さな職員用のドアがあります。中を通って薄暗い地下に降りていくと、当時研究室がありました。
研究室には大小さまざまな化石標本が保存処置を施されるのを待っていて、さながら恐竜たちの病院のようでした。
懐かしい思い出です。

本書では、化石と人類の驚きの物語をひもといていくとあります。
石器人たちは化石のついた石を手斧にして「おしゃれ」し、ネアンデルタール人は熱心な化石コレクターであったと。中世ヨーロッパ貴族に至っては、解毒剤として化石を「服用」することまでしていたそうです。
科学の研究対象となる前、人類は化石とどう付き合ってきたのか、さっそく今年の気になる一冊になりました。

訳者あとがきで黒木章人さんは「・・・本書の翻訳は、30年近く眠っていた好奇心を目覚めさせ、さらなる知見を広げてくれる、心ときめく作業だった」と書かれています。
皆さんが昔、夢中になったものは何でしょうか。
ALL REVIEWSが自分が好きだったものを思いだす手助けになればうれしいです。
では今週もお楽しみください!
Fabio

週刊ALL REVIEWS Vol.85 (2021/1/18から2021/1/24)

昨年末、私のTwitterのタイムラインにものすごい勢いで流れ込んできた本がある。ブルデューの『ディスタンクシオン』だ。40年以上も前の、しかも「超難解」とされている本がなぜこれほど話題になっているのだろうと不思議に思ったら、名著をわかりやすく解説するEテレの番組「100分de名著」で取り上げられて“バズった”らしい。社会学者の岸政彦さんによる解説はNHKテキストとして入手できる(ちなみに今AmazonではKindle版がセール価格で販売中)。「100分de名著」のプロデューサー・秋満さんは、番組のウェブサイトによると、本著を扱うのにはためらいがあったとのことだ。最大の問題は、一般的な知名度だったという。秋満さんにとっては「ようやく翻訳が出た、社会学の面白さを猛烈な勢いで教えてくれた」本で、90年代初頭にはちょっとした翻訳ブームもあったというブルデュー…このコメントが大変興味深い。まさにブルデューのいう「ハビトゥス」そのものだからだ。私は大学で、社会学を学んでいた友人から薦められて無理やり読んだが、おそらく私が私の世界線にとどまっていたら、出会うことはなく「一般的な知名度の問題」に引っかかっていた部類だと思われる。
「稲妻の一撃」と信じて疑わなかった本や音楽との感動的な出会いの否定に始まり、教養や趣味は生まれによって限定されるという絶望的な状況も、今の社会情勢を見るにつけ腑に落とさざるを得ない。大統領選に絡んだアメリカの分断、そこから日本にまで飛び火してきた陰謀論の横行、そして次は新型コロナワクチンをめぐる対立が起こっていくのだろう。同じ景色を見ているはずなのに、なぜわかってもらえないのか…と頭を抱えることも苦痛も『ディスタンクシオン』は和らげてくれるのだろうか。さまざまな呪縛を逃れて自由の境地に至れるのなら!とはいえ、気軽に手に取るには重たい一冊(お値段もかわいくないし)。ブームだからとポチったところで、永久凍土の積ん読化する恐れは十分にある。そこでまずはこの素晴らしい入門編『ブルデュー「ディスタンクシオン」講義』から読んでみるのはどうだろう。少なくとも『ディスタンクシオン』が何について書かれた本で、何を問題として取り上げているのかが、講義形式でよくわかる。昨年刊行された本ということで、コロナ禍でよりあからさまになった格差社会日本への含意とも受け取れて大変面白い。外出自粛要請、リモートワークの推奨で、リアルに人と会って話すことがますます難しくなっている昨今。さまざまな流言飛語が飛び交い、虚と真が組んずほぐれつするネットに乱されることのない心は、きっと確かな書物がつくってくれるのだと思う。(朋)

週刊ALL REVIEWS Vol.86 (2021/1/25から2021/1/31)

須賀敦子『本に読まれて』(中公文庫)を、「エッセイの形式」の書評のお手本として勉強するために再読した。「エッセイの形式」とはこの文庫本の解説を書かれた大竹昭子さんの言葉だ。


「偏奇館の高み」、これは、永井荷風を思わせる老人を描いた石川淳の短編「明月珠」の書評である。少女時代に麻布に住んでいた須賀敦子が、実際に麻布区市兵衛町の永井荷風の旧居偏奇館跡を訪ねたときの描写から書評を始める。土地勘はあるはずだが、なにしろ半世紀は過ぎているので、何度も道を間違えながら歩く。手に持った地図も古い。
「地図の示す論理につぎつぎと背きながら、私は、早春のような薄日の射す坂道から坂道へと歩いた。」
……須賀敦子は結局なんとか目的地にたどり着いた。偏奇館の跡に、今は荒れ果てた集合住宅を見る。
「人影はなく、五月というのに鳥のさえずりさえ聞こえなかったのは、地区の死を無言で包みたいという死者たちの意志がどこかにじっと潜んでいたのか。」
……「明月珠」そのものへの評価はこうだ。
「蔵書が灰になるのをまのあたりにして立ちつくす丘の上の老詩人を描ききって、どこかギリシア悲劇の主人公を彷彿させる作者(石川淳)の筆の冴えは、稀な感動をさそう、……」
書評の結末部を読む。
「数日後、年譜を繰っていて、あの夜、……荷風の年齢が、現在の自分のそれとおなじだったことに気づいたのは、怖ろしいような収穫だった。」 
1945年3月10日に永井荷風が見たのは東京大空襲の惨害であり、この書評を書くために偏奇館跡に行った須賀敦子が見たものは「膨張経済の崩壊」であった。二人がともに見たのは死の影であり孤独だった。
『「レ・ミゼラブル」百六景』鹿島茂さん)についての書評も読んでみた。


書評の結末は、「これ(挿絵のなかでコゼットが見つめるニュールンベルグ製と鹿島茂さんが鑑定して書いているところの高級人形)に似たフランス人形のエピソードは、たしか『小公女』にもあった。……こう書いてみると、一八四九年生まれの作者バーネットが一八六二年に出版された『レ・ミゼラブル』にヒントを得てこの人形の話を入れたのは確実と思える。」となっている。ここも素晴らしい。そして著者の鹿島茂さんがバーネットの百年後、一九四九年生まれであることも須賀敦子の頭の中にはあるだろう。
書評の役割は、読者を書評対象の書籍を買いに書店に走らせることだという。須賀敦子の書評はその役割を十分以上に果たす。その上で、書評の読者を書籍の存在する仮想的時間空間を縦横に連れ回したうえで、まったく新たな広い世界に向かわせるという役割も果たす。そして須賀敦子にならって自分の人生を懸命に生きながら、そのなかで本に向き合い、人生を豊かなものにしていきたいと思わせる。これは「書評」を超越したエッセイであり、立派な文学作品と言っていい。(hiro)

週刊ALL REVIEWS Vol.87 (2021/2/1から2021/2/7)

番組がなくなって随分経つけれど、私にとって日曜日の午後はずっとNHK FMの『日曜喫茶室』の時間だった。40年ほどの長寿番組だったそうだから同じくファンだった方も多いだろう。一つのテーマを掲げ、その道に卓越したゲストを二人招く。マスター役のはかま満緒さんが話を聞き出していくのだが、喫茶室の常連のお客様の一人として登場するのが安野光雅さんだった。
誰もが知る、時の人だったり、よくもまあ見つけてきたなという方だったり、そもそもゲストの人選からして面白いのだけれど、やはり“興にまかせて“を前提にした話がなんともよかった。二人の話す内容がまったくクロスしないときもあれば、一方の話がずっと逸れっぱなしのときもある。そんな時、安野さんは話を振られると、優しいお声で思ってもみなかった視座からコメントを発されていたように思う。
ALL REVIEWSを遡っていたら、ちょっと前に安野光雅さんの『語前語後』(朝日新聞出版)が紹介されていた。知見とユーモアに富んだ安野さんならではの見聞記。気になったものやこと、数字にまつわる話、ご趣味の碁のこと、読んだ小説まで、毎日の気づきをメモにまとめたようである。(日曜喫茶室の後日談的な話も出てくる)。このスタイルを評者は自分史よりもラクではないか、と書いているがその通りともいえそうだ。文章の長ささえバラバラなのだが、この一見編集されていない感じが日曜喫茶室に似ていて心地よかった。読みたいところから読めばいいと思いながらも、結局最後まで読んでしまったぐらいに。
本を閉じたら、安野さんの不在が急に寂しくなり、『文庫手帳 2021』(ちくま文庫)を手配した。机の上に優しい絵を見かけるたびに、安野さんのお声を思い出している。(山本陽子)

週刊ALL REVIEWS Vol.88 (2021/2/8から2021/2/14)

2月14日から新しいNHK大河ドラマ『青天を衝け』がいよいよ始まりました。
約500もの企業の設立・経営に関わり、日本資本主義の父と呼ばれた渋沢栄一の生涯を描くドラマです。
海外からの評価も高く、経営学者のドラッカーも、「20世紀に日本が経済大国として栄えたのは、渋沢栄一の思想と業績によるところが大きい」と評価していたそうです。
しかし、新1万円札の顔になることが発表されてからやっと興味を持つようになったくらいで、日本の資本主義の父とまで称賛されるこの偉人について、恥ずかしながらこれまでよく知りませんでした。

NHKの担当チーフプロデューサーのインタビュー記事を最近読んだところ、大河ドラマの企画を通すには、まず分厚い企画書を作り、部長に出し、そこからセンター長、局長、役員まで上がり、最後は会長の承認を経てようやく進められるとのこと。制作費も含めてものすごい規模の一大プロジェクトなわけですが、今この時期に渋沢栄一が選ばれたことがとても興味深く感じられます。
コロナ禍前後で私たちの社会は大きく変わりました。
幕末の激動時と今の時代を比べながら、変化に直面する経済人の激闘を楽しみたいと思います。

ALL REVIEWSでは、オンラインライブスクールの第2弾として、渋沢栄一を取り上げます(3月7日/14日と2週連続で開講)
教えてくださるのは、伝記『渋沢栄一』も執筆されている鹿島茂先生です。

コロナでいろいろと自粛が求められますが、気持ちだけは「天命を楽しんで事を成す」の精神で行きたいと思います。

では今週も週刊ALL REVIEWSをお楽しみください!

Fabio

週刊ALL REVIEWS Vol.89 (2021/2/15から2021/2/21)

世界の名だたる映画監督たちが敬愛する日本の監督として挙げるトップはもちろん黒澤明なのだが、同じくらい愛されているのが小林正樹ではないかと思う。生涯で撮り上げた作品の数は黒澤に比べると半分ほどしかなく、なにより人のやさしさや冀望や明るさに満ちた映画も多く見受けられる黒澤作品に対し、小林作品に漂うのは絶望と救いのなさとやるせなさである。黒澤が陽なら、小林は陰だ。しかし人の心の奥底にひそむ秘めたる感情やどす黒い思惑という汚物に躊躇なく手を突っ込み、ドロドロとしたそれに命を吹き込んでエンターテインメントに仕立てあげるというのは、人にたいする希望や愛情をもっていなければできない行為だ。その小林の代表作のひとつ仲代達矢主演『切腹』の原作を含む短篇集が先ごろ出版された。滝口康彦『異聞浪人記』である。『切腹』/「異聞浪人記」は、武家におしかけて庭先で切腹をさせろと詰め寄り金品をねだる狂言切腹が、思いもよらぬ方向へころがっていく悲劇を描く。私たちが期待する、胸すく活躍をするヒーローは出てこない。しかし、魂をうしない形骸化した制度が社会にとっていかに害悪であり、人を蝕むものであるかを突きつけるラストには、力強さと反骨心が感じられ、逆に生きる勇気のようなものがわいてくる。表題作以外も、短いなかによくこれだけドラマティックな展開を盛り込んだものだと、滝口康彦の技巧と手腕にうならされる短編ばかりである。時代劇小説を読んだことがない人にこそ、ぜひ手にとってみてほしい。やるせないことが続く今の世のなか、無力で名も無き私たちがどこにむかって叫んでみても誰も聞き届けてはくれないかもしれない。それでも声を振りしぼる用意はしておきたい、そんな気持ちにさせられる一冊である。(朋)

週刊ALL REVIEWS Vol.90 (2021/2/22から2021/2/28)

『この1冊、ここまで読むか! 超深掘り読書のススメ』(祥伝社)を購入したので、早速「後ろから」読んだ。後ろからと言うのには理由がある。本の最後の【Special Thanks】の項に自分の名前が載っているか早く確かめたかったからだ。この本は、月刊ALL REVIEWSで行われた、鹿島茂さんと豪華ゲストたちとの多くの対談のなかから6つを選んで書籍化したもので、対談後の文字起こしをALL REVIEWS友の会やサポートスタッフの仲間たちが手分けして行ない、私は、鹿島さんと出口治明さんとの「論語」に関する対談の文字起こしのうち3分の1をお手伝いしたからだ。なお、この部分には今話題の渋沢栄一への言及もたくさんある。
奥付の手前のページに他の仲間と一緒に名前が載っている。些細なことなのだが、自分としては誇らしい。一方、本文を読んで気付いた。文字起こし後の文章と比べると、プロの編集者の手が入ったものは、実に読みやすい。「プロの技、恐るべし」である。素人の私としてはその編集の技を分析できたのがとても良い経験になった。この経験ができたのはALL REVIEWS友の会に入っていたおかげだ。
もちろん、本の内容にも目を通した。鹿島茂さんとゲストの対談書評の対象書籍は、次の通り。『NETFLIXコンテンツ帝国の野望』『絶滅の人類史』『論語』『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』『9条入門』。これで、絶対にこの6冊の本を読みたくなる。しかもそれぞれの対談記事の後には何冊かの関連お勧め本のリストが付いている。したがって、この本を1冊読むと、数十冊の本が読みたくなるわけだ。次に本屋さんに行くのが楽しみになる。
最後に読んだ、この本のまえがき(鹿島茂さん)の一節が心に残る。
「ゲストの方々とのトークは本当に刺激的で、ひとりで対象本を読んでいたのでは気づきもしなかった観点や切り口が示されて驚くことがあります。これぞまさしく、対談書評の醍醐味でしょう。」
ALL REVIEWSには多くの対談書評や鼎談書評が収録されている。一味違うこれらの書評を読むのも楽しみになってくる。(hiro)

週刊ALL REVIEWS Vol.91 (2021/3/1から2021/3/7)

先日、大型書店に足を運んだので『この1冊、ここまで読むか! 超深掘り読書のススメ』を検索機で探した。出力したレシートを見ると、文芸の読書論のコーナーとある。棚までいくと遠くからでもわかるような目につくところにあった。手ざわりの良いツルリとした白い表紙。朱色と墨のシンプルな色遣いは実直な印象を受ける。
同書は『月刊ALL REVIEWS』のノンフィクションのパートを書籍化したもので、ナビゲート役を務める鹿島茂さんとゲストとの課題本にまつわるクロストークが文字でおさめられている。そのジャンルに詳しくなくても、噛み砕いて説明されているし、語り口も明晰でスイスイと頭に入ってくる。参考書の実況中継シリーズを思い出したほどだ。
楠木建さんが登場した『NETFLIX コンテンツ帝国の野望』は、NETFLIXの創世記について書かれているものの、“ビジネス本としてもかなり面白く、稀な本“だと紹介されていた。ビジネス本としての条件は“ためになる“だが、できれば“面白くてためになる“がいいと。こういわれると手は伸びずにおられない。このように専門家であり、かつベテランの読み手である方々が登場し、さっと今読むべき良質な本を差し出してくれる、これは『月刊ALL REVIEWS』ならではだと思った。
出口治明さん登場する『論語』の回もよかった。鹿島茂さんがご提案された本だそうで、渋沢栄一さんを読み解くにあたり、『論語』は欠かせないとのこと。歴史の達人ともよばれる出口治明さんの明晰な語り口もあって、どんどん読める。大河ドラマ『青天を衝け』にハマってる者としてはこちらも読まずにいられない。
『月刊ALL REVIEWS』は豊崎由美さんが司会を務めるフィクションの回もあり、どちらもリアルタイム視聴ができるが、書籍として手にとれるのはありがたいと感じた。本だから当然のことなのだが、移動の合間や、ちょっとしたすき間時間にさっと開いて続きを読むことができる。意味がわからなくなれば、前のページに戻ればいい。視聴時間がなかなかとれない方も、まずは『月刊ALL REVIEWS』の紙版・『この1冊、ここまで読むか! 超深掘り読書のススメ』を手にとってみてはいかがだろう。(山本陽子)

週刊ALL REVIEWS Vol.92 (2021/3/8から2021/3/14)

今週も前週に引き続き、『この1冊、ここまで読むか! 超深掘り読書のススメ』について少しご紹介します。
次に何を読もうかと考えるとき、この人のお勧めする本ならはずれなし、と信頼できる書評家が一人でもいる人は幸せです。
ではその書評家が二人いて、おすすめ本について対談をしたら、、、?
ひと粒で何回でもおいしい一冊が、本書です。

冒頭からまずおもしろかったのが、鹿島先生と楠木先生が対談した『NETFLIX コンテンツ帝国の野望 :GAFAを超える最強IT企業』


対談形式のすばらしいところは、おすすめ本をテーマに話題がどんどん広がっていくことです。
映画の作り方今昔から、17世紀フランスの詩人の言葉、そして普遍的な商売の本質へ、と古今東西の様々なトピックを巻き込みながら、本のエッセンスを抽出していきます。

私はNETFLIXの熱心なファンであったにも関わらず、これまで何がそんなに私たちをひきつけるのかを説明できませんでした。
しかしこの対談のおかげで、NETFLIX戦略の要諦に加え、その魅力についても理解することができました。
このように自分一人で読んでいたときは読み込めなかった部分が、対談のおかげで明らかになっていくプロセスがとても楽しいのです。

本書の読み方としてまえがきには、対談の対象本に興味を持った方は、実際にその本を読んでみましょう、そして読み終えたらもう一度、本書をひもといてみましょうとあります。
これに加えて私がおすすめしたいのは、まず最初に対象本を読んでみて、その後、本書の対談を読むことです。
「なるほど、そういう切り口や読み方もあったのか」、と楽しみが増すこと請け合いです。
行ったり来たり、ひと粒で何回も味わってみてください!

では今週も週刊ALL REVIEWSをお楽しみください!
Fabio

週刊ALL REVIEWS Vol.93 (2021/3/15から2021/3/21)

コロナ禍が始まり、自粛の名のもとになんとなく外に出づらい日々が続いている昨年来。自分では思ってもみなかった事態に見舞われた。私はフリーランスで、自宅が仕事場だ。仕事の性質上、相手とはネットのやり取りだけで会うことはおろか電話で話すこともない。ふだんも面倒くさがり屋が祟って人との付き合いは浅いほうで、話し相手といったら家人のみ。こんな調子だったから、コロナ禍だろうが、なんだろうが生活は変わらないと思っていた。実際のところ生活はあまり変わらなかった。ただ、なにかが違う。むしょうに家人以外の誰かと話したくてたまらなくなったのだ。人と活発にまじわらないとはいえ、それなりに「交流」のあったかつての日常を思い出した。八百屋の軒先、クリーニング店の受付、たまに行くパブのカウンター越しに交わすひと言ふた言が、じつは自分の日常の大事な部分を担っていたことに気づかされた。
そんなときに目にとまったのが、武田砂鉄さん評、ぼそっと池井多さん著『世界のひきこもり 地下茎コスモポリタニズムの出現』だ。池井多さんはひきこもり歴35年の中年男性。厚労省によると、「ひきこもり」とは「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6カ月以上続けて自宅にひきこもっている状態」をさすらしい。その定義からいくと、池井多さんが、家から遠く離れアラブやアフリカの国々を転々と放浪したことのある期間も「ひきこもり(池井多さんの言葉では「そとこもり」)」に含めているのはなぜだろうと思ったが、「ひきこもり」を身体的のみならず精神的なもの、社会からの分断だと考えるなら、なるほどなと得心がいく。
読みはじめたばかりの本書だが、世界各国にいる広義の「ひきこもり」生活を送る人々へのインタビューに基づいて構成されている。原因は人さまざまで、富める者も貧しき者も、男も女も等しくひきこもる。このままで良いと考える者もいれば、なんとかして社会とかかわりをもちたいと望む者もいる。後者の人たちとどうかかわるかを考えるとき、ひきこもりは非当事者の私たちの問題にもなる。無意識のうちに消えていった何気ない会話が生活から色をうしなわせたように、社会からこぼれ落ちていってしまった人たちもまた、社会から多様性をうしなわせていくのだろう。しかし同時に、この社会システムになじめず地下に根をはり横にむかってつながりを求めている人たちを無理やり引き抜いて地上にさらすのが正しいとも思えない。容易に答えが出せないことではあるが、その存在を可視化する本書は地上と地下をつないでくれるのではないかと思う。(朋)

週刊ALL REVIEWS Vol.94 (2021/3/22から2021/3/28)

ファニー・ピション『プルーストへの扉』(白水社)を読んだ。翻訳はALL REVIEWSでもおなじみの高遠弘美さんだ。今年の新刊だが、よく売れているらしい。一般読者の立場に立った書き方が好ましいし、『失われた時を求めて』を楽しく読ませるための工夫が凝らされているからだろう。作家プルーストの紹介、プルーストの読み方、プルーストの文体についてそれぞれやさしく解説されている。原著にはない文献目録、プルースト関連年表と固有名詞索引が高遠弘美さんの手で付けられておりその内容が素晴らしい事も特筆したい。
本の発売と時を同じくして、高遠弘美さんによる全3回の有料オンライン講義、「『失われた時を求めて』で挫折しないために」も開催された。有料イベントにもかかわらず200人以上の人が参加したとのこと。『失われた時を求めて』を、高遠弘美さん訳の光文社古典新訳文庫版で「挫折せずに」読み続けている私なので、進んで受講した。講義は3月27日に終了したばかりで正直に言ってまだ消化不良だ。講義の内容が豊富すぎる。幸いにして見逃し配信が一ヶ月間あるので、繰り返し観ている。
観ているうちに悟ったのは、いや教わったのは、私のような一般読者は難しいことを考えずに、純粋に楽しく読むことを心がけるべきということだ。身構えて「理解」してやろうとして読むことは「挫折」につながる。わかるところを拾い読みするだけでも良く、気に入ったところの「自分なりの抜書き」(Mes pages choisies)を作るのがオススメと高遠弘美さんは三回目の講義でおっしゃった。この手法は書評を書く際のコツ(鹿島茂さん筆)にも類似している。
抜書きを実行してみることにした。準備として高遠先生訳の『失われた時を求めて』の電子版も揃えた。読み直しながら抜書きを作るつもりだ。
一番目に抜書きするところはもう決めた。真夜中に主人公が目覚めて不安になるシーン。これとまさに同じ感情を自分も4年前の入院時の夜に味わったからだ。
『プルーストへの扉』では筆者ファニー・ピションが、「藝術作品というのは、藝術家固有の認識方法の力を借りてようやく入ることが許される一つの世界」とまえがきで言っている。高遠弘美さんはニ回目の講義で、この本を訳した理由として、『失われた時を求めて』の読者を「挫折」とは無縁の境地にいざなうため、とおっしゃった。その高い境地に向かって、楽しく『失われた時を求めて』を読み直したい。(hiro)

週刊ALL REVIEWS Vol.95 (2021/3/29から2021/4/4)

市電が通る熊本の市街から西の高い空を仰ぐと、堂々とそびえる熊本城が目に入る。地元の人たちは何かにつけてお城を見上げるのだと聞いたことがある。熊本地震では加藤清正が築城したこの城も被災し、多くの人が心を痛めた。このほど天守部分は復旧工事が終わり、前述のような姿を見られるようになった。地震からこの4月でちょうど5年になる。

そんななか、先週のALL REVIEWSに紹介された伊東 潤著『もっこすの城 熊本築城始末』(KADOKAWA)
にはすぐさま飛びついた。城造りの上手であった武士・木村藤九郎を主人公に名城ができあがるまでの物語が綴られている。


熊本城は知れば知るほど、よくぞこんな城を造ったなと思わされる城だ。例えば武者返しとよばれる高い石垣や、ジグザグに折れ曲がった通路など高い防衛力を備える。そのできあがる過程が小説として楽しんで読めるのだから、こんなワクワクすることはない。まだ序盤ではあるが若き藤九郎が知恵と技術を惜しみなく使い、周囲を巻き込みながら、土木・治水の神様とよばれる清正の意に応じていくさまがドラマチックに描かれている。後半も楽しみだ。
城の完全な復旧までには20年がかかるとされるが段階的に公開されていて、4/26からは天守内部にも入れるようになる。天守からは天気がよければ、熊本のもう一つのシンボル、阿蘇の山々を見ることもできる。(山本陽子)

週刊ALL REVIEWS Vol.96 (2021/4/5から2021/4/11)

少しずつ暖かくなってくると、また自由に旅行ができる日がより待ち遠しくなります。
しかし依然として、コロナ禍影響は収まりそうにありません。
今週も引き続き、読書の世界を旅することにしましょう。

英・Economist誌のポッドキャストを聞いていましたら、アメリカの著名な旅行作家、ポール・セロー氏がインタビューに答えていました。
このコロナ禍で移動が制限される中、旅行作家であるあなたにはどんな影響が出ましたか?と聞かれると、もちろん海外旅行はできなくなった、でも国内を、それもより身近なエリアを訪れることで、「新しい現実」を旅することができた、といった趣旨のことを述べていました。
自分により身近な街や地域を、いつもと違った視点で見つめ、考えることで新しい気付きを得ることができたと。

初めての場所や全く知らない国を訪れるのは、もちろん楽しいし学びもあります。
しかし自分が暮らす街や国を、新しい視点で捉えなおしてみる、これからはこれも新しい旅の形となるのかもしれません。

そこで自分なら、暮らしているこの「東京」をどう再発見するか。
今週ご紹介する『追憶の東京:異国の時を旅する』(書評は若島 正さん)はまさにぴったりな一冊でした。


著者のアメリカ人作家、アンナ・シャーマン氏は、2000年代はじめの十年余りを東京で暮らしました。
この本では、そのとき体験したことや訪れた場所を下敷きに、歴史書でもガイドブックでもない、彼女独自の視点から東京という街とそこに流れてきた時間について、詩情豊かに綴っています。
登場する街は日比谷、日本橋、赤坂、上野・・・とどこも見知ったところばかりです。しかし読み進めてみて自問させられます。
はたして、自分は彼女のように愛情深く東京を見つめているだろうか。
本書が日本で翻訳刊行されるにあたり、著者が日本の編集者に送ったメールには「この本は、わたしの東京への恋文です」と書かれていたそうです。

自分の普段の見方から一度解放されることで、新しい感覚を得てみる。
自分とはバックグラウンドが異なる人なら、この街をどう感じるのだろう、と考えることも、新しい旅の形となっていくのかもしれません。
では今週も週刊ALL REVIEWSをお楽しみください!
Fabio

週刊ALL REVIEWS Vol.97 (2021/4/12から2021/4/18)

コロナ禍が本格化した昨年の今ごろを思い起こしてみる。得体の知れないウイルスに対してまず起こった騒動はマスクの争奪戦だった。お決まりの買い占めから高値転売を経て、本来使い捨てであるはずの不織布のマスクをケバ立つまで洗って使う人まであらわれた。マスクは、ワクチンが兆しも起こってもいなかった当時、命を守るために考えられ得る最善の手段のひとつだった。そんな命綱であるマスクを求めて文字どおり右往左往する私たちを尻目に、お隣の台湾ではひとりの天才の指揮のもと、あっという間に「誰もが安心してマスクが買えるシステム」ができあがっていた。世界に名を轟かせた「マスクマップ」を含む台湾の新型コロナウイルス対策については『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)に詳細が記されている。購入は実名制で行われるため、当然、個人情報保護の問題が出てくる。また、多岐にわたる行政機関と民間を連携させなければならない。それをたった3日で一定の解決を得てシステムを実現したのは高いITスキルの賜物なのだろうが、そもそも政府への信頼がなければ進まないことだろう。皆保険制度をしき、一つの政策に複数の省庁が絡む構造は日本とまったく同じなのに、この差は一体、何なのだろうと考えさせられてしまった。
チップや端末が構築する未来において、もはや個人情報は箪笥にしまい込んでおけるものではなくなる。便利で安全な暮らしとのトレードオフだ。オンラインで英語の教師をしているセルビアの友人は中国の会社とも契約しており、英語学習ブームが続いている中国の老若男女さまざまな生徒に教えている。そこで驚いたのが、と友人曰わく「個人情報をなんでも政府に渡してしまうこと」。生徒たちの話によれば、現状コロナ禍をほぼ制圧し、以前と同じ日常を世界トップクラスで取り戻した政府への称賛と信頼は厚いらしく「体にチップを埋め込んでもいい」という者までいるそうだ(もちろんこれはごく一部の限られた人たちから聞いた話であることはお留めおきいただきたい)。約14億人と日本の10倍以上の人口を抱える国が国として機能するために情報とハイテクによるコントロールは必然とはいえ、他国のことながら、やはり「誰に、どこまで」は気になるところだ。無駄な抵抗などやめてさっさとすべて明け渡し紐付きの完璧な生活を手に入れるのが幸せなのか、不便さと困難付きの“完璧な”自由を謳歌するのを誇りとすべきなのか。容易に答えが出せそうにはない問題だから、百考は一読にしかず。世界最強のIT国家となりつつある中国の今を伝える『中国 異形のハイテク国家』(毎日新聞出版)を次に読んでみようと思う。書き手の赤間清広さんの入念なる現地取材に基づいたフィクション。ALL REVIEWSの紹介ページには抜粋があり、自動運転にかんするエキサイティングな一節を読むことができる。「異形の」というタイトルにふさわしい半端のなさ。大いに興味をそそられる。もっとも、読み終わるころには彼らはさらに先へと進んでいるかもしれないけれど。(朋)

週刊ALL REVIEWS Vol.98 (2021/4/19から2021/4/25)

「私、推しないんですよね。
強いて言うなら、文具が好きなくらいで…」
ALL REVIEWSのファンクラブであるALL REVIEWS友の会では月1回お題を決めて語り合う、オンライン定例会を開催しています。参加自由、発言自由、耳だけ参加もOKな気楽な会です。
そして、今月のお題は「推し」。今年の芥川賞は宇佐美りんさんの『推し、燃ゆ』が受賞し、文学界にも「推し」というワードが飛び交いました。さらに「推し活」(推しを応援する活動のこと)なんて言葉ができるほど、今は何かに入れ込むことが公言できるようになってきたように感じます。一昔前はオタク、マニアと呼ばれて、さらには、何かにハマりこむことが何かおどろおどろしいものかであるように「沼」と呼ばれたり…何かに入れ込むことが恥ずかしい、みっともないかのような風潮すらあったのに。
定例会で文具が好きと打ち明けてくれたNさんは、続いて、文具好きの発端となったという万年筆の魅力について語り出しました。
モノとしての美しさ、個体格差の面白さ、書いたら消せないゆえの緊張感、インクのネーミングと瓶の面白さ…参加していたほかの5人も次々と世界に引き込まれ、オススメのブランドのサイトでその美しさ(とその価格)に驚いたり、昔使っていた万年筆のお手入れをしようと決めた! と宣言する人がいたり、皆が知らなかった、すっかり忘れていた万年筆の世界に魅せられるという大きな渦が巻き起こりました。私は、受験のための通信添削講座の先生をしていた母が、赤インキを入れた万年筆を手に、ひたすら机に向かっていた姿を思い出しました。もうすっかり忘れていた懐かしすぎる1コマです。
そして、結果参加者全員が推し(ミュージカル、金魚、日記読み、瀧川鯉八、糠床などなど…)を披露してはそれぞれに大きな渦を巻き起こし、予定よりも1時間も長く語り合って、4月の定例会は終了しました。好きなものを語ることのパワー、恐るべし。
東京都はじめ一部の都府県では、緊急事態宣言発出ということで、外出も外食もままならないゴールデンウィークになることが決まりました。
ならば、万年筆片手に、気になった言葉を抜書きしながら読書に勤しもうかしら。でもまず、この『万年筆バイブル』の記事で池内紀さんが引用されているように「毎日が、人生が変わる」ような「小さな恋人」をまず見つけなければ!


ということで、今回から巻頭言メンバーに加わりました、やすだともこです。2人の小学生を育てながら働く会社員、たまにライティングや編集、原稿下読みしてより良くするアドバイスする副業をしたりも。生きがいはミュージカル観劇。どうぞよろしくお願いいたします。(やすだともこ)

週刊ALL REVIEWS Vol.99 (2021/4/26から2021/5/2)

ALL REVIEWS掲載の記事で紹介された、エミリー・レヴェック著『天体観測に魅せられた人たち』(原書房)を読んだ。カール・セーガンの『コンタクト』を子供の頃に読んで天文学者になろうと思ったという、エミリー・レヴェックさんが自分で選んだ道を突き進み、困難を乗り越えて観測と研究の最前線に立つまでのサクセス・ストーリーは感動ものだ。自分の経験だけでなく、周囲の天文学者仲間へのインタビューの内容を楽しげに語っている部分も読みどころだろう。訳は川添節子さん。天文学用語の翻訳など困難なお仕事を、見事に成功させたと素直に感謝したい。


この本は何回も読み返すことができた。素人天文ファンの私だが、天文学のおさらいをしながら読むとどんどん面白さが増してくるのだ。面白く読み返すためのポイントは2つだと、おさらいをしながら気づいた。
天体観測のやり方の進歩が1つ目のポイント。21世紀の天体観測では光学式望遠鏡や電波望遠鏡でデータを取得するだけでなく、ガンマ線やX線、そして重力波などの検出器を使って、同時に多様な手段でデータを集める「マルチメッセンジャー天文学」が盛んになっているらしい。
なぜ、そのように多様な手段を使うのかが2つ目のポイント。宇宙のことをより深く知るには、目に見える恒星の姿を調べるだけでなく、その内部構造や生成消滅のメカニズムを調べる必要がある。赤色巨星や中性子星やブラックホールに関しても同様だ。これらに対しては可視光による観測だけでなくガンマ線やX線、重力波などできるだけ多くの観測手段を用いるという。たとえば、2017年には中性子星どうしの合体が、可視光だけではなく同時に重力波でも観測できた。
おさらいの手助けとして、私はYouTubeの各種ビデオと、天文学の論文のアーカイブ(たとえば「天文月報バックナンバー」)を使った。著者エミリー・レヴェックさんの天文学者としての「サクセス・ストーリー」を手がかりにして、難しく見えるビデオや論文のなかのエッセンスを自分なりにすくい取ることができた。
いながらにして観測データをメールで受け取る著者の最近の状況を読んでみると、60年前に田舎の家の二階の窓から手作りの望遠鏡で美しい冬の星を眺めていた自分自身の姿に、捨てがたい郷愁を感じてしまう。
天文好きな人々皆にオススメの本であるのはもちろんだ。そしてこれを読んで天文学を学ぶことを目指す若者が増えてほしいと思う。また、昔の天文学ファンが、もういちど天文学を好きになるきっかけとなるとなおいい。読む人の人生を、大きくまたは小さく変えるような本をとりあげて紹介するのも、ALL REVIEWSの重要な役割なのだろう。(hiro)

週刊ALL REVIEWS Vol.100 (2021/5/3から2021/5/9)

巻頭言の「編集長兼執筆担当」のhiroです。メルマガならびに巻頭言をお読みいただきありがとうございます。

2019年6月に開始したメルマガ「週刊ALL REVIEWS」は今週で100号となります。開始当時から執筆に携わった友の会会員有志メンバーはのべ7名です。お休み中のメンバーをのぞいて常時4名ないし5名が交代しながら書いている巻頭言執筆も100回続いたわけで、メンバー一同、実はわがことながら驚いています。友の会活動の一環として、読書するだけでなく「書いて」楽しんでみようという我々の試みは、一人が書き、他の人から自由にコメントをもらい、必要なら書き直して、結果を巻頭言として毎週発表できる、そんな贅沢かつ楽しい自発的な場所の中で途切れなく続いてきました。読書好きという一点でつながっているが、実は多様な経歴をもつメンバー達が、Slackというツールをメンバー間でオープンなコミュニケーションを取るために使っているのも、長続きの秘訣かもしれません。

執筆の様子を明かす、現メンバー5名へのインタビュー記事が作成されています。5月から6月にかけて公式noteに発表します。こちらもぜひ皆様に読んでいただきたいと思います。

来週は101号が出ます。われわれはまた、楽しみながら巻頭言を書き続けます。(hiro)


「週刊ALL REVIEWS」100号到達祝辞――鹿島 茂

メールマガジン「週刊 ALL REVIEWS」100号到達おめでとうございます。

この場をお借りして執筆を担当されているメンバーの方々、およびメール・マガジン「週刊 ALL REVIEWS」をメールマガジンの登録者として支えておられる方々にこころからの賛辞をお送りしたいと思います。

「週刊 ALL REVIEWS」は2018年の年頭につくられた月額制ファンクラブ「ALL REVIEWS友の会(以下、「友の会」)」の会員有志が2年前の2019年6月18日からボランティアで始めた無料メール・マガジンです。

毎週火曜日に、担当会員が前週にALL REVIEWSから配信された1週間分の書評をダイジェストすると同時に取り上げられた1冊についてのエッセイを巻頭言として添えるというかたちを取っています。

アイディアは「考えて行動するファンクラブ」と銘打った「友の会」の例会でディスカッションが行われたさい、「毎日、書評がTwitterやFacebookで配信されても忙しくて読む暇がない読者がいるはずだから、そうした読者のために1週間分の書評をまとめてメール・マガジンで紹介してはどうか」という提案がなされ、これが有志たちによって実現の運びとなったのです。

私はいちおうALL REVIEWSの主宰者という立場なので、最初のうちは「週刊 ALL REVIEWS」を受け取ると少し厳しくチェックするつもりでいたのですが、すぐに、その必要はまったくないことに気づきました。それどころか、毎週、火曜日の配信が待ち遠しくなってきました。なぜなら、会員有志が持ち回りで書いている巻頭エッセイのレベルがどんどん高くなってきて、いまでは有料にしてもメルマガの登録者は落ちないのではないかと思えるほどになったからです(ご安心ください。有料化はありません)。

こう感じているのは私だけではありません。その証拠に、メルマガの登録者はどんどん増えていって、2020年8月4日についに1000名を超え、いまなお増加しつつあります。私はネットには詳しくないのですが、事情に通じた人の話ではこれは大変な数字だそうです。

しかし、いくら私がこう強調しても「週刊 ALL REVIEWS」の充実ぶりを容易には信じられない方もいらっしゃるかもしれません。そうした方は、巻頭言総集編がnoteで公開されていますから、ぜひ閲覧されていただきたいと思います。論より証拠なのです。

では、いったいどうして、「週刊 ALL REVIEWS」が100回まで続き、しかもその内容が回を追うごとに充実してきたのでしょうか?この場を借りてその理由について考えてみたいと思います。というのも、同じような試みをなさっていられる方々にとって、おおいに参考になるはずだからです。

思うに最大の理由は初期の制度設計が優れていたことに尽きます。つまり、ボランティアが持ち回りで巻頭エッセイを担当するというシステムを考えるうえで、どうすれば永続化できるのか、最初からそれが制度的に考えられていたからこそ、100号まで到達できたのです。なお、私はALL REVIEWSの主宰者ではありますが、「友の会」の活動にはノータッチであり、「週刊 ALL REVIEWS」の制度設計にはまったく関与していません。「週刊 ALL REVIEWS」の初期設定が優れているとしたら、それはこの「制度」の設計にかかわった立ち上げメンバーの力によるものなのです。

それでは、以下に初期設定の優れた点はどこにあったのかを考えてみましょう。

①編集長というポジションを設けたこと
これは当たり前のことのように思われるかもしれませんが、意外に気づかれない重要な点です。しかし、それにはまず、人はなぜ書くのか、いや書き続けるのかという問題を考えなければなりません。

もちろん、書きたいから書く、書くのが楽しいから書くのでしょうが、私の長年の経験からいうと、これは半分の真理でしかありません。本当のことをいうと、書くのは「締め切り」があるからです。私はすでに100冊以上の本を上梓している物書きですが、本質はひどい怠け者で、やりたくないことはすべて先延ばしにしてしまう怠惰な人間なのです。もし、この世に締め切りというものがなかったら、あるいは1冊も本を書かなかったかもしれません。そう、締め切りがあったからこそ、ない知恵を搾って書き続けてこれたのです。締め切りは偉大なり、です。

しかし、締め切りというものがあったとしても、「そろそろ締め切りが近づいていますよ。いついつまでに原稿をあげてください」と催促する編集者というものが存在しなかったら、締め切りはないも同然です。しかし、出稿の催促というのは編集者にとってじつに難しいもので、ときには書き手の感情を害してしまうことも少なくないのです。

「週刊 ALL REVIEWS」には編集者はいませんが、この締め切り催促係といういやな役割を編集長として引き受けてくださったhiroさんがいらしたため、すべてがうまく運んだのだと思います。hiroさんは、ともすれば勇気がくじけそうになる担当メンバーを励ましながらじつに巧みに出稿を促されたのではないかと推測します。「週刊 ALL REVIEWS」がこれだけ続いたのも名編集長hiroさんの尽力あってのたまものです。ちなみに、hiroさんは編集経験などまったくない友の会メンバーです。

②メール・マガジンという「古い」メディアをあえて用いたこと
書き手にとって、「書く」最大の動機となるのは、書いたものを読んで反応してくださる読者の存在です。読者の反応がたとえ間接的にでも伝わってくることが重要なのです。この点、「週刊 ALL REVIEWS」の担当メンバーが異口同音におっしゃっているように、メール・マガジンは意外にも読者からの反応が伝わりやすいメディアだと思います。いまでは、双方向性を謳うたくさんのメディアがありますが、双方向性といっても、あまりに不特定多数に開かれたメディアであると。その不特定多数の読者がほとんど反応せず、案外、片方向性に終わってしまうことが少なくないのです。いっぽう、メール・マガジンは無料申し込みとはいえ、読者の「参加意志」がはっきりとした数字で表されますから、書き手は読者からのレスポンスをはっきりと感じとることができるのです。この点、メール・マガジンは読書と書評という活字メディアに属するものを対象としたALL REVIEWSと親和的だったのかもしれません。

③その週にアップされた書評で触れられた本のうち、最低「どれか1冊」について語るという「緩い縛り」
エッセイを書くときに最も困るのは、どんなことについてでもいいから書いてくださいと注文されることです。完全な自由ほどエッセイの書き手を困惑させるものはありません。その反面、注文が細かすぎるのも困ります。あれもこれも入れてくださいと言われると、「それなら自分で書いたら」と言いたくなるものです。一番好ましいのは、テーマを1つだけ示されることです。なぜなら、自分の頭にあった漠としたイメージが提示されたテーマによって具体的なかたちになって現れることが少なくないからです。

こうした意味において、その週の本全部ではなく、最低どれか「1冊」という「緩い縛り」は制度設計として絶妙だと思いました。これなら、担当となった週の書評で取りあげられた本の中には必ずなにか書き手を触発するものがあるはずです。この「緩い縛り」によって、自分でも気づかなかったものがはっきりとしたかたちとなって現れてくることが多いようです。

④4、5人で持ち回りという適度な頻度
ブログを持たれている方ならだれでも経験されたことでしょうが、1週間に1回の原稿アップというペースは最初は楽なように思えてもいざ実際にやってみるとかなりタイトだと分かってきます。1週間などすぐに経ってしまい、アップしようと思ってもその余裕がないため、たちまちペース・ダウンとなり、そのうち1カ月に1度、最後はブログ閉鎖という事態に至るのです。

この点、4、5人で持ち回りで四週間に1度担当が回ってくるという頻度はじつに的確な制度設計であったと感じました。

また、4、5人で持ち回りという「制度」が、中世キリスト教の共住修道院を成り立たせていたものと同じ効果を生んだのではないかと想像します。つまり、聖アントニウスのように1人で砂漠に隠棲しようと思うとかえってうまくいかないので、小人数で辺地に引きこもったら聖書も仲間と読んだほうが理解が進むし、相互援助と相互監視で共同体の運営が非常にうまくいったというのが共住修道院の起源なのですが、4、5人で持ち回りという制度が共住修道院的な「共同体」を支えたのではないかと思います。

⑤「好きな本について語るという行為」が担当メンバーにとって「読む」から「書く」への橋渡しとして機能した
「週刊 ALL REVIEWS」の担当メンバーは現在、編集長のhiroさん、Fabioさん、小島ともみ(朋)さん、山本陽子さん、やすだともこさん(98号から参加)の5人ですが、山本さん、小島さんを除くとみなプロの物書きの経験はありません(やすださんは元編集者)。しかし、みなさん、本を読むのが好きということにかけてはだれにも負けないという自負の持ち主です。いいかえると、本を読むという喜びを自分だけのものとせずに他の人と共有したいという思いが「週刊 ALL REVIEWS」で「書く」ことへの敷居を低くし、1号分の担当という重荷を軽くしたにちがいありません。ほんとうに、号を追うごとに巻頭エッセイのレベルは高くなっているのです。

最後になりましたが、「週刊 ALL REVIEWS」第100号到達に対してもう一度、今度はフランス語で
MES FELICITATIONS!

鹿島 茂

週刊ALL REVIEWS Vol.101 (2021/5/10から2021/5/16)

最近、オンラインの自慢大会にハマっています。自慢の物差しはあくまで自分。『昨日買ったボールペンが書きやすい』『弟が誰もがよく知る音楽家とお茶をした』『長年放っていた○○を片付けた』など、思い思いに話し、ほかはふんふん頷きながら聞くのみ。今は遠くに行ってしまった雑談の大切さを思います。
自慢したくなるような本との出会いが、これからもALL REVIEWSでもありますように。先週紹介されたなかでの私の“自慢本“は、上間陽子著『海をあげる』(筑摩書房)です。琉球大学教授の著者が未成年少女の若年出産を調査し、支援する日々をまとめたエッセーです。現場に身を置き、当事者と直に接する著者の言葉にヒリヒリとした痛みを感じずにいられません。この悲痛な叫びを受け取る義務が私たちにはあると思いました。


毛色は変わってもう一冊。鹿島茂さんの『週刊文春 私の読書日記』掲載のリード・ヘイスティングス、エリン・メイヤー著『NO RULES 世界一「自由」な会社、NETFLIX』(土方奈美訳 日経BP-日本経済新聞出版本部)です。企業は成長に従い規則や規律に縛られるもの。急成長する同社がいかにイノベーションを重要視しているかがわかります。主軸の一つとして紹介されている“コントロール(規則)ではなく、コンテキスト(条件)によるマネジメント“はわが家で実践予定です。実りを得たあかつきにはもちろん、自慢大会で披露します。 (山本陽子)

週刊ALL REVIEWS Vol.102 (2021/5/17から2021/5/23)

日本は緊急事態宣言も延長されなかなか見通しが立ちませんが、アメリカでは建国記念日の7月4日までに、成人の70%に接種を終えるとの目標を打ち出しているそうです。
主導するリーダーはもちろんバイデン大統領ですが、バイデン氏はオバマ政権時はオバマ氏の兄のような存在だったといいます。
ではあらためてオバマ元大統領とはどういった人物だったのか。
オバマ氏自身に語ってもらいたいと思います。
今週ご紹介の一冊はこちら、『約束の地 大統領回顧録』(書評は前嶋 和弘さん)。
いよいよこの大作を日本語で読めるのはうれしいことです。

私は複雑な政治劇や魑魅魍魎が跋扈する国際情勢をテーマにしたストーリーが好きで、これまでたくさんの作品に触れてきました。
政治家や官僚、諜報員などがひそひそと権力や言葉の力で、表には出てこないパワーゲームを繰り広げるのですが、自分たちが仕える時の政権について愚痴るシーンなんかがあったりします。
2009年からの2期8年間で制作されたこの手の作品で、登場人物たち(イイ者もワル者も)がオバマ大統領について語るシーンで幾度となく目にしたのがこんなセリフでした。

「なんといっても、今の大統領はとにかく聡明な方だからな…」

文末の「…」にはあきらめだったり、希望だったりいろいろなニュアンスが含まれるのですが、当時の大統領の描かれ方に共通していたのは「聡明なリーダー」という姿だったと思います。

膨大な読書量で知られ、年末恒例となった自身が選ぶ「今年のおすすめ本」は世界中の人々のブックガイドになっています。
(ちなみに2020年のリストからは、とある44代大統領の大変よく書けている『約束の地 大統領回顧録』という作品はあえて外しておく、とのこと)
オバマ氏は幼少時からよく旅をしたこともあり、居場所がなかったり、よそ者だった時期もあったことから、読書が大好きになったとのこと。
もともとは作家志望だったのも納得です。

この本を通して、オバマ氏が下した一つひとつの判断の裏にある熟慮に触れることができます。
自分だったらどうするか、はたして同じ判断ができるだろうかと考えてみることで、聡明なリーダー像についても考えさせられます。

では今週も週刊ALL REVIEWSをお楽しみください!
Fabio

週刊ALL REVIEWS Vol.103 (2021/5/24から2021/5/30)

『キャンディマン』、『スレンダーマン』、『バイバイマン』等々、ホラー映画で「マン」のつく奴はたいていヤバい。ひとたび魅入られたら最後、命を奪われるか、この世ならざるところへ連れていかれてしまうか、もっと酷い目に遭わされる。「本当におもしろい小説が読みたいならノーベル文学賞よりもこれ」と、だれかに薦められて知ったイギリスの文学賞、ブッカー賞。2018年度の受賞作『ミルクマン』(河出書房)の書影をみたときに、これはホラーに違いないと思った。タイトルは「マン」系だし、表紙には水木しげるの漫画の一コマに出てきそうな禍々しい黒モヤが広がっている。読み始めて、まず第一文目でガシッと掴まれた。
「サムバディ・マクサムバディが私の胸に銃口を押し当てながら私を猫呼ばわりし、殺してやると脅したのは、ミルクマンが死んだのと同じ日だった」(『ミルクマン』より)
脅威のマンだと予想した「ミルクマン」はどうやら死んでしまうらしい。しかし主人公は「猫」呼ばわりされたうえに、べつの脅威に瀕している。初っぱなに出てくる名前は何だ? これは一体、どんな話なのだろうと読む者を引きずり込む効果抜群の幕開けだ。詳しい内容はALL REVIEWSの書評ページで小川公代さんがすばらしく紹介してくださっているので、そちらを参照されたい。


私は、主人公の「私」にすっかり惹かれてしまった。エマ・ワトソン主演のディズニー実写映画『美女と野獣』を観たことのある人は、主人公のベルを思い浮かべてみてほしい。本が大好きで、町で唯一といっていいほど図書館に足しげく通い、空想の世界にあそび、突飛で素敵なアイデアを日常のなかで試すことを躊躇わないチャレンジャーである。しかし狭いコミュニティでベルは異質で浮いた存在どころか、どこかおかしい人間として扱われている。『ミルクマン』の「私」もまったく同じだ。体制と反体制の争いが繰り広げられる世界(端々から舞台のモデルは北アイルランドと察せられる)でしがらみを逃れて自由に生きたいだけなのに、社会の閉塞感がじわじわと彼女を追い詰めていく。そこへもって、この「ミルクマン」は変態である。なぜか彼女につきまとい、彼女のことを徹底的に調べあげる。そうして彼女をめぐる悪意あるうわさにまた尾ひれがついていく。
現実の世界でも、女性が異性からのいわれなき粘着に遭うとか、火のないところに煙をたてられる場面に最近よく出くわす。それは、その手の事象が突然に増加したからではなく、声を上げることを恐れない女性たちがふえ、連帯の意を示して支援の手を差し伸べることにひるまない人たちがふえたからだろう。『ミルクマン』の「私」は孤立無援だが、機知に富んだ語りを武器に、したたかに、しぶとく性差別と偽善をあかるみに引きずり出してあざわらい、解放に向かって突き進む。その姿は十八歳の姿を超えてあらゆる世代の女性たちの代理ヒーローとしてたのもしく光り輝く。四十年以上前の異国を設定にしているとはいえ(その匿名性の高さから)今も世界のあちこちでふきだす性的搾取の問題や和解不能な分断と共鳴する本作は、今にこそ読むのがふさわしい一冊ではないかと思う。(朋)

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巻頭言執筆兼編集担当のhiroです。お知らせがあります。
100号記念の一環で、執筆担当者へのインタビュー記事が新任執筆者で名インタビューアーの(やすだともこ)により鋭意作成されています。
いつも巻頭言を書いているのはどのようなヒトなのか、読者の皆様に知っていただきのが目的です。
第一号として、私へのインタビューが公開されました。よろしければこのリンクから、ご覧下さい。


他の執筆者の方々のものも、来月くらいまでに順次公開されます。お楽しみに。(hiro)

週刊ALL REVIEWS Vol.104 (2021/5/31から2021/6/6)

とうとう始まった! 無事に始まってよかった!
何がか、というとミュージカル『レ・ミゼラブル』2021年公演です。東京・有楽町の帝国劇場で5月末、無事開幕しました。
昨年のパンデミック発生から、さまざまなエンターテインメントが厳しい局面に立たされてきました。ミュージカル公演ももちろんです。多くの公演の中止、今年の4月からは突然の緊急事態宣言発出による公演打ち切り。多くの出演者が、関係者が、観客が、言葉にし難い状況にさらされました。今もさらされています。
もちろん命にかかわることですから、致し方ないことかもしれません。生きているだけでも幸せです。
しかし、生きている上にエンターテインメントが楽しめる状況は、贅沢ながらもやはり生きていてよかった、と思えること。これは間違いありません。
『レ・ミゼラブル』といえば、言わずとしれたヴィクトル・ユゴーの長編小説が原作です。
“世の中には、誰でも題名とあらすじぐらいは知っているが実際には誰も読んだことのない《世界の名作》というものが存在している。これらの《名作》は大人たちの親切心から、たいていは抄訳の形で『少年少女世界文学全集』の類いにおさめられているが、こうした抄訳で《名作》を読んだ少年少女が成人してから完訳版でその作品を読み返すことはまずないといっていい。 思うに、こうした読まれざる《名作》は大きく二つの系列に分けることができる。−−(中略)−−ヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』は、幸か不幸か、このどちらの要素も含んでいる。したがって、ほとんど読まれることがない。”
--鹿島茂『「レ・ミゼラブル」百六景』(文藝春秋) まえがきより


まさに、私もこれでした。映画で見た、幼少期は名作全集で読んだ。舞台は大好きで、1997年から3カ国で何十回と観ている。
でも、ある時、挑戦しました。新潮文庫の2,272ページ岩波文庫2,439ページ。でも、最初のミリエル司教の章で挫折しました。関係なさそうに見える描写が延々と続き、早々に離脱……。
そんなときに出会ったのが、先程も引用した鹿島茂さんの『「レ・ミゼラブル」百六景』でした。左ページは1879〜1882年にかけて刊行されたユーグ版『レ・ミゼラブル』の挿絵。右ページは当時のフランス社会の解説も含めた『レ・ミゼラブル』のストーリー。
初めて読んだとき、舞台で見慣れた場面にさらに1つ1つ命が吹き込まれ、よりリアルに迫ってくる衝撃に襲われたことが今でも忘れられません。
その後、新潮文庫の2,272ページも数ヶ月かけて楽しく読破しました。つまらなかった(失礼!)描写がすべて詳細で素晴らしい描写に見えてきて、楽しくて楽しくてたまりませんでした。
それがもう、15年ほど前の話。未だにこの『「レ・ミゼラブル」百六景』は公演ごとに出してきては読んでいます。
加えて今では、デイヴィッド・ベロス『世紀の小説『レ・ミゼラブル』の誕生』(白水社)も。この本は、2019年、ALL REVIEWSで実施した「【特別対談】女優・島田歌穂 × 仏文学者・鹿島茂 ミュージカル『レ・ミゼラブル』を10倍楽しむための読書術」で取り上げられた1冊ですが、百六景とはまた違った角度からの『レ・ミゼラブル』分析が最高です。
現在の日本での公演は、今、世界で唯一の『レ・ミゼラブル』フルバージョンの上演とのこと(ロンドンでは、コンサートバージョンが上演中です)。今、世界で唯一楽しめるという幸せな空間に、来週行く予定です。楽しみでなりません。この公演が、そして、あらゆるエンターテインメントが支障なく上演され楽しめる時代が早く訪れることを心から祈ります。
(やすだともこ)

週刊ALL REVIEWS Vol.105 (2021/6/7から2021/6/13)

『三体III 死神永生』(早川書房)を読んだ。劉慈欣さんの国際的ベストセラーSFの第3部でシリーズ完結編である。日本語訳は大森望さん、光吉さくらさん、ワン・チャイさん、泊功さん。翻訳臭がなく、読みやすい素晴らしい訳文である。地球文明よりはるかに進んだ「三体文明」の地球侵略に対抗する戦いを描いた前2作のスケールをさらに凌駕する壮大なSFロマンで、読者を遥かな時空のかなたに連れて行く。


2019年に第1作、2020年に第2作を手に入れて読んだが、その当時「三体ロス」という言葉が流行った。私もそうだが、その面白さにしびれた日本の読者が、早く次回作を読みたくて言い出した言葉と思う。私には今回は「三体ロス」は起きなかった。なぜか。
私の場合の「三体ロス」解消の最大原因は、本訳書の本文にあった名言による。いわく「すべてが移ろいゆくこの世の中で、死だけが永遠だ」(日本語訳下巻108ページ)。主人公を代表とする人々、地球文明や三体文明、そして宇宙とその基礎となる物理法則、これらすべてがこの物語のなかで生まれ、変化し、消えて行く。我々が絶対の物理法則と信じている光速ですら変化する可能性を持つとされ、物語の中で実際に変わっていく。皆が絶対不滅と思っていることが変わっていく。劉慈欣さんは言外にイデオロギーの違いなどで争うのは無意味だと言っていると思えてきた。この境地に至れば、「三体ロス」など問題にならない。
変化する物のなかでより長い生命を保つものに、「言葉」がある。数千万年後の人へのメッセージとして岩盤に文字をきざむ話が出てくる。子供向けのおとぎ話を使って密かに情報を伝えるエピソードも出てくる。文学はその多義性・曖昧性により、かえって他よりも強力な情報伝達力を持つということが示される。ここも劉慈欣さんのメッセージに完全アグリーであるし、この『三体』のテキストそのものも言外に私の考えているよりはるかに多くのことを語ろうとしていることに、驚きを感じる。
もう一つ、私が注目したのは「冬眠」だ。登場人物は何回か冬眠して不遇な時代をやりすごす。物語進行をスピードアップする著者の高度なテクニックなのだが、冬眠後蘇生して新たな時代の課題に敢然と立ち向かう主人公のすがたに憧れてしまった。私もできるなら冬眠して、今よりもっと複雑で困難な世界と対峙してみたい。
すべての『三体』ファンの皆様は当然『三体III』を読むべきだし、当然読むであろう。そして、はじめての方には『三体III』からこのシリーズを読み始めるのをお勧めしたい。3部作の中でもっともロマンチックで、もっとも読みやすい。ストーリー以外の道具立ても魅力的で、例えば『ドラえもん』の「どこでもドア」を思わせるガジェットも出てくる。ハインラインの『夏への扉』へのオマージュかも知れない。Netflixで『三体』のドラマ化も予定されていると聞く。私ならば先に本を読んでおく。(hiro)

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以下はhiroからのお知らせです。
「ALL REVIEWSメルマガ巻頭言特別編
vol.2」が友の会公式note記事として追加されました。今回は執筆者のお一人山本陽子さんへのインタビュー記事です。どうぞお読みください。

週刊ALL REVIEWS Vol.106 (2021/6/14から2021/6/20)

角田光代さんの新聞小説『タラント』を読むのがここ最近の楽しみです。戦争とパラスポーツを太い軸としながら、四国出身で東京在住の女性・みのりの自分探しの旅が描かれています。話はいよいよ大詰めなのですが、みのりの祖父で戦争経験者の清美に、いつからか自分のじいちゃんを重ねるようになりました。清美と同じく、私のじいちゃんも無口な人でした。満州へ出征し、シベリア抑留も経験したようです。“ようです”というのは私はじいちゃんの戦争経験について少しも聞かなかったからです。恥ずかしながら他界して随分経った最近に知りました。
伊藤絵理子『清六の戦争 ある従軍記者の軌跡』は、戦争末期のルソン島の山中で、日本兵のために新聞を作り続け戦死した、伊藤清六という男の物語です。親戚で、自身も新聞社の社員である著者が調べ、まとめあげています。

著者が曽祖父の弟にあたる清六の存在を知ったのは新聞社入社後で、のちに情報調査部への配属をきっかけにのめり込みます。本書では清六の記録にとどまらず、戦時の記者のあり方を問う内容になっているそうです。
私のじいちゃんは清六のように資料が残されているわけでもなく、『タラント』のみのりのように、直接話も聞けません。今さら仕方ありませんが存命中に問いかけなかったことを悔います。この本を手にとれば、命を繋いでくれたじいちゃんに少しでも近づけるのではと感じています。
一方で昨夏、こんな記事を目にしました。70代の男性の話で、その方のお父様も戦争経験者で無口な方だったそうです。男性はこういいます。元から無口で話さなかったのではなく、戦争を経て話せないことばかりで、話したくないから言葉数の少ない、静かな後世になったのではと。もし私がじいちゃんに話を聞こうとしていたらどうなっていたでしょうか。(山本陽子)

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いかがでしたか。お楽しみいただけたと思います。
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書評アーカイブサイトALL REVIEWSのファンクラブ。「進みながら強くなる」を合言葉に、右肩下がりの出版業界を「書評を切り口にしてどう盛り上げていけるか」を考えて行動したり(しなかったり)する、ゆるい集まりです。
入会すると、日本を代表する書評家、鹿島茂さんと豊崎由美さんのお二人がパーソナリティーをつとめる、書評YouTube番組を視聴できます。
友の会会員同士の交流は、FacebookグループやSlackで、また、Twitter / noteで、会員有志が読書好きにうれしい情報を日々発信しています。
友の会会員の立案企画として「書評家と行く書店ツアー」、フランスのコミック<バンド・デシネ>をテーマとしたレアなトークイベントや、関西エリアでの出張イベント等が、続々と実現しています。2020年以降はオンライン配信イベントにより力をいれています。
さらに、Twitter文学賞の志を継承した「みんなのつぶやき文学賞」では、友の会会員有志が運営にボランティアとして協力。若手書評家と一緒に賞を作り上げていく過程を楽しみました。
2021年2月には、鹿島茂さんとの対談6本をまとめた『この1冊、ここまで読むか!超深掘り読書のススメ』が祥伝社より刊行されています。
本が読まれない時代を嘆くだけではダメだと思う方、ぜひご参加ください。
ALL REVIEWS友の会Twitter:https://twitter.com/a_r_tomonokai

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