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心のバリアフリーセミナーを開催しました

 皆さん、こんにちは。ANA CX推進室 CX戦略部の吉牟田です。
2023年3月6日(月)に「心のバリアフリーセミナー」をANAの汐留事業所で、対面とオンラインとを併せたハイブリッド式で開催しました。今回は、コロナ禍により3年ぶりの対面開催となり、オンライン視聴も含めて、約180名の申し込みがありました。

ata Tours代表の中岡さん(写真左)とANA CX推進室 CX戦略部の吉牟田さん(写真右)

「心のバリアフリーセミナー」は、ANAが共生社会の実現に向けて、様々な心身の特性や考え方を持つすべての人々が相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合うことができるようにすることを目的に、2015年から開催しています。
 15回目となる今回は、『Exclusion』をテーマに、ata Tours代表の中岡亜希さんにご登壇いただきました。
 中岡さんは、日本航空の客室乗務員として働くなか、25歳で体中の筋力が少しづつ衰えていく難病「遠位型ミオパチー」の告知を受け、車いすの生活になりました。
 「自分では前向きに生活していると思っていた」頃、中岡さんの世界観を変える出来事が起きました。当時交流のあった塾の子ども達から、夏の山登り合宿に誘われたのだそうです。とっさに「ごめん、車いすやし無理やと思う」と口にした中岡さんに、子どもたちが返した言葉は、「あきちゃんは行きたくないん?」この時のことを中岡さんは「人生の第2幕のはじまり」と表現されています。
 「子ども達はただ純粋に、車いすだから無理という言葉が理解できないようでした。それまで私が諦めないでいたつもりだったのは、障がい者の世界の話だった。『できるかできないか』ではなく、『やりたいかどうか』なんだ、とハッとしたんです。」

当日の中岡さんご登壇の様子

日頃から諦めないことが大事、と子どもたちに話してきた自分が、本当に無理かどうか試しもせず、誰かの迷惑になることを恐れて諦める姿を見せるわけにはいかない、と一念発起した中岡さんは、その夏、子どもたちと念願の山登りを成功させます。
 「ノウハウも何もなかったので、ありとあらゆる道具を使い、人の助けを借りました。身体が不自由と言うだけで、極端に選択肢が少ない社会が悔しかった」経験から、中岡さんは、障がいがある方や、高齢者とその家族が共に四季を通して日本の大自然を楽しめる世界基準の『アダプティブツーリズム(Adaptive Tourism)』を研究し、ユニバーサルツーリズムの普及に取り組むようになりました。海外の展示会で出会った水陸両用アウトドア車いすHIPPOcampeを買い付け、インストラクターを養成し、今は自治体、大学、事業者と連携して精力的にユニバーサルフィールドを全国に拡大されています。

 中でも、スキーには特別な思い入れがあるとのこと。「子供たちと最初に登った夏の登山のあと、冬はスキーにも出かけましたが、さすがに一緒にスキーができる機材はなくて、泣く泣くホテルの窓から子供たちが滑るのを見てるだけだった。なので、この選択肢だけは譲れませんでした。」誰もが同じフィールドで、同じタイミングで、やりたいことを楽しめることにこだわり、活動されている姿に、私たち主催者も強く心を打たれました。

当日の会場の様子

 質疑応答の時間では、参加者から「できるorできないになってしまう議論の突破口は?」といった質問や、「重度の障がいのある方でも、ストレッチャーという搭乗方法があることを広めていただきたい」というお願いがありました。中岡さんからは「どんなことにもハードルはあると思うが、それを突破するのは人の想いの強さだと思う。」「移動できる手段があることを知って安心する人がたくさんいる。伝えていきたい」とのお言葉をいただきました。「ストレッチャー利用」の周知に関しては、私たち航空会社としても、改めてしっかり取り組んでいかなければならないと感じています。

 最後に、セミナーのタイトル『Exclusion』に込めた中岡さんの想いをお聞きすることができました。

「これは、私が実際に海外で見た風景です。一見とても美しい写真ですが、悲しい景色でもあります。橋があることが便利な一方で、車いすの人は他の人とは別の場所からこの景色を見ることになると思いませんか?いつまでもバリアフリーばかりに目を向けていると、気がついた頃には形骸化され、結果としてExclude(=場所から締め出す、遮断する)してしまう社会になってしまう。大切な人と一緒に同じ場所で同じ体験を可能にすることが大切なのであり、それがInclusiveな社会なのではないでしょうか」

 中岡さんの講演をお聞きして、「私たちANAグループが提供している『ユニバーサルなサービス』は、お客様の願いにしっかり寄り添えているのか」を改めて考える機会となりました。また、参加者からは「お客様のリクエストにお応えすることはもちろんのこと、移動の目的全体を見て必要なサポートを提案したい」「もっと現場に出て議論し、一体となって推進したい」など、参加した社員自身も「また旅に出たい」とANAを選んでくださるお客様と共に、新たな体験や歓びを創ることを心から待ち望んでいると感じました。

当日の対面ならびにオンラインでの参加者の様子

すべての人々に「ワクワクで満たされる世界を」楽しんでいただけるよう、今後も皆さまの体験談から学ぶセミナーは定期的に開催していきたいと思います。

 ANAグループはこれからも「すべてのひとに優しい空」の実現にむけ、ユニバーサルな取り組みを通じて、誰もが暮らしやすい社会づくりに貢献していきます。