福利厚生ランキングに難民支援がランクイン!ースタートアップの人気福利厚生ランキングから見るウェルビーイング志向ー
「ウェルビーイングをつなぐ」がテーマの弁護士×ESG経営アドバイザーのありさんです。今日はスタートアップ企業の従業員5000人が選んだ福利厚生サービスランキングを元に,ウェルビーイング経営について考えます!
ウェルビーイング経営・人的資本経営・人事戦略・働く幸せ・ESGなどに興味がある方のための記事です🍀
■人的資本経営とウェルビーイング経営の関係
さて,今,注目の人的資本経営の本質は働く人のウェルビーイングを高めることにあります。従業員のウェルビーイングを高める施策のひとつとして,福利厚生の充実が注目されています。人材獲得のためはもちろん,共に働く人のウェルビーイング上昇のため,魅力的な福利厚生を用意することは,経営の観点からも外せないポイントなのです。では,いま従業員に本当に求めている福利厚生はとはいったい何なのでしょう?もはや,ウェルビーイング経営 の一環として位置づけられる福利厚生について,そのヒントをご紹介します。
■ウェルビーイング経営と福利厚生の関係は?
「福利厚生」とは、賃金などの基本的労働条件とは別に、企業が,従業員やその家族の暮らしの支えの一部として用意するメリットです。最近では、新卒で就職活動する学生はもちろん,転職を考える人にとっても,福利厚生の充実度に注目が集まっています。
■世界の変化とウェルビーイング志向
コロナ渦によって,社会における働き方は大きく変化しました。リモートワークが普及し移動や運動量が激減したことで,体力の低下が懸念されています。また,他者との交流が圧倒的に減った中で,メンタルヘルス上の問題も起きています。そして,改めて人生の価値観を問いなおした結果,人生の幸福度,つまりウェルビーイングを求めて,転職や移住などの新しい選択をする人たちも急激に増えました。
コロナによるパンデミックは,経済重視や仕事ばかりの人生への諦めといった状態を脱し,ウェルビーイング志向へシフトする価値観の大転換を世界にもたらしたといっていいでしょう。このシフトに対応するものが,ウェルビーイング経営であり,これからの経営の中核を担うものです。
■アメリカの2021年大退職事件
この流れの中で,アメリカでは,2021年に大量の退職者が生まれ「大退職事件(Great Resignation)」と称される事態になっています。今後も,大量の人材が流動していくトレンドが続くと見込まれます。
これに対応し,企業側には,人材確保のため,そして共に働いてくれる従業員のウェルビーイングを高めるためにも,ウェルビーイング経営 の確立が必須課題となり,同時に,福利厚生を見直す動きが活発化しています。
■福利厚生に関する企業の意識変化
欧米では福利厚生について,従業員のウェルビーイング(身体的、精神的、経済的、社会的に良好な状態にあること)をサポートするプログラムが以前から注目されています。すでにウェルビーイング経営の実践の一部になっていると言っていいでしょう。 これについて,最近の興味深いデータがあります。
■スタートアップ企業の福利厚生人気ランキングに反映!ウェルビーイング志向
アメリカで福利厚生のマーケットプレイスを運営するジュノ(Juno)社は、5000人以上の従業員が実際に選んだ特典の内訳を分析しました。 ジュノの制度は,提携するスタートアップ企業の従業員が,福利厚生として貯まったポイントを,好きな商品やサービスに交換できるというものです。 その結果から、近年の従業員のウェルビーイング志向が、福利厚生の選択にも如実に反映されていることがよみとれますBuisiness Insider Japan 20220721 https://www.businessinsider.jp/po
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■実際の人気ランキングを見てみよう!
では,いよいよスタートアップ企業の従業員たちが実際に選んだ福利厚生商品のランキングトップ10を見ていきましょう。
このランキングには,ウェルビーイング志向が明確に表れていますね。
まず,観葉植物や花のデリバリーは心の健康を求めたものといえるでしょう(メンタル・ウェルビーイング)。日本でもコロナ渦で自宅に緑や花を取り入れる人が急増しました。
ヘルシー健康志向のスナックや食品は,身体的ウェルビーイングを目指すものです。ひとは健康でありたい!外食も減ったし,家で食べるものをヘルシーに!という感じでしょう。
そして,ウクライナや難民基金へのいわゆる人道支援寄付が上位に入っています。これは,社会的なつながりを大事にし,自分の社会的な責任を果たそうとする態度の表れ,いわゆるソーシャル・ウェルビーイングに該当します。戦争などの社会問題も連動して,自分の福利厚生ポイントをそのまま寄付する人が増えているわけです。とってももソーシャルグッドですよね。
ウェルビーイング経営とは,こうした従業員のみなさん(ひいては市場全体の)ウェルビーイング志向を実現するもの,福利厚生のそのひとつなんだということが実感できます。
■アジアでも見られるウェルビーイング経営志向の高まり
ウェルビーイングへのシフトトレンドは欧米に限らず、アジア各国でも同様です。その傾向は,Willis Towers Watson 社が実施した『2020アジアパシフィックヒューマンキャピタルCOVID-19 サーベイ』 (アジア太平洋諸国15か国から746社企業が参加)の結果からも見てとれます。
■福利厚生のデザインには会社の価値観が表れる
実際,福利厚生のラインナップには,その企業の価値観が表れます。古い福利厚生システムしかなければ,会社の体質も古いのではないかと推察されます。他方,ウェルビーイングの観点で,たとえば多様性や環境に配慮したラインナップがあれば,会社の中でも,ウェルビーイングや多様性を大事にするウェルビーイング経営のバリューが浸透しているだろうと,推認が働くわけです。これは,従業員だけでなく,投資家や顧客にとっても大きな魅力として評価されるものです。
言ってみれば,「こんな会社いいよね!」という価値観がウェルビーイング志向という世界の大トレンドになってきているのです。
さて,福利厚生の良さは,賃金や仕事内容に比べると,柔軟に,かつアジャイルにデザインし,決めていくことができる点です。
いわばなんでもありでいいわけです。そのチョイスは最終的に従業員が自分で選べばいいわけですから。その多様な福利厚生のデザインに,ぜひとも会社の価値観や,従業員のウェルビーイングを大事にしたいという思いを込めて作っていきましょう。
それこそがウェルビーイング経営の一環なのです。
■ウェルビーイング経営と福利厚生の愛称は抜群!
そして,その福利厚生を従業員が実際に利用することでウェルビーイングが高まれば,仕事へのコミットが高まり,エンゲージメントも高まるというウェルビーイング経営 の好循環が必ず描けるはずです。
ラッセルウェルビーイング協会代表中原阿里
ウェルビーイング経営アドバイザー