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【Book Recommend 9】The Buried Giant



こんにちは、Allexです。


Kazuo Ishiguroの作品紹介シリーズ5冊目は


The Buried Giant
by Kazuo Ishiguro


です。


2015年の3月出版。
忘れもしない、この日を楽しみにしていました。


邦題は「忘れられた巨人」です。


カズオ・イシグロが初めてファンタジー要素を盛り込んだ作品。
ファンタジーと、歴史と、戦争と。
また、The Unconsoledほどではないけど
この作品もかなり奇妙なストーリー展開になっていて
「え、この人いつのまに○○になってたの?」
という展開もあり
現実世界で本を読む読者である私も
最後まで物語に登場する霧に文字通り包まれて見えないような不気味さもありました。

特に印象的だったのは
Axlは妻のことをとても大事に大事に思っていて、何度も妻のことをmy loveやprincessと呼んで気遣っているのに
Beatriceはそれには全く答えず、無視しているかのように冷たく受け流して応えない。
この夫婦の関係は一体なんだろう?
仲が悪いわけではない。
でも、AxlとBeatriceが互いに互いのことを想うやりとりに奇妙なズレを感じながら最後まで読むことに。


そして、the buried giantの正体。

この本の発売は2015年。
まだロシアとウクライナの戦争が始まっていないけど

実際に過去の歴史で
日本を含めて世界は何度も戦争を経験してきた。

その戦争や戦争の影響
それら全てがこのthe buried giantと結びつく。

良いことも悪いことも
嫌な思い出も楽しかった思い出も

息子の顔や声でさえも

忘れることで平和に生きていたのだ。

その忘却の霧が晴れて
全ての記憶が人々に戻った時
世界はどうなるのだろう。


カズオ・イシグロの作品は
Never Let Me GoもThe Remains of the Dayも
短編集のNocturnesも全て、
ただのハッピーエンドストーリーや「面白い」小説ではなく
読み終えた後になんとも言い知れない余韻が
漂う。
何かテーマがあって、カズオ・イシグロが小説を通してそのテーマについて語りかけるのだ。

以前何かのインタビューで見たか聞いたか忘れたのだが、
次に紹介するKlara and the Sunでは
「テーマは命だ。
『命について知りたいなら、この本を読め』と思われるような作品を書きたい。」
というようなことを言っていた(気がする)。
(あやふやですみません)


このThe Buried Giantでも
『記憶』がテーマの一つになっていて
記憶が消されても覚えているものや
消されてよかった記憶はあるのかとか
なんとも深い。
ただの奇妙なファンタジー小説ではない。
(少なくとも、大ファンである私にとっては笑)

オススメです📚

お読みくださり、ありがとうございました。

世界同時発売と言われながら
日本の書店に並ぶのか不安だったので
Amazonから予約注文していたのがこちら。
coverが違う!😨💦
イギリスのアメリカの出版社の違いでした
最初はこちらで読みましたが
後に書店で上の樹の絵の方(イギリス版)も
買いました笑

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