【アトピー性皮膚炎】新しい効果に期待!モイゼルト軟膏とは
いつき博士です。
アレルギー患者教育向けサイトを運営しております。
今回はアトピー性皮膚炎に
新しい作用機序の薬が出たとのことで
今後も話題になっていく
モイゼルト軟膏について
勉強していこうと思います。
1.モイゼルト軟膏って何?
モイゼルト(ジファミラスト)とは
2022年6月に大塚製薬から発売された
PDE4阻害によって炎症を抑える塗り薬です。
PDE4ってなんだ?
と疑問に思う方も
いらっしゃるかもしれません。
PDE4は多くの免疫細胞に存在し
cAMPを特異的に分解する
働きを持ちます。
炎症細胞内のcAMP濃度が高いことで
サイトカインやケモカインの産生を制御し
皮膚の炎症を抑える仕組みとなっています。
アトピー性皮膚炎の患者では
このPDE4様活性が亢進して
細胞内cAMP濃度が低下していると
報告されています。
モイゼルトはこのPDE4の働きを
阻害することで炎症を抑えています。
成人には1%製剤を
小児には0.3%もしくは1%製剤
を1日2回幹部に塗布
新しい作用機序ともなると
本当に効くのか?安全性はどうなのか?
気になることが山ほどありますよね。
2.どのような試験を経て承認されたか?
モイゼルト軟膏では
下記4試験を行っています。
今回は②の試験について
勉強していこうと思います。
小児の試験については
他の記事で紹介します。
3.国内第Ⅲ相試験(成人)
3-1.試験デザイン
今回の試験では
モイゼルトとプラセボを比較して
有効性と安全性を評価しています。
<試験デザイン>
多施設共同、無作為化、二重盲検
基剤対照、並行群間比較
<対象>
15~70歳以上の軽症から中等症の
アトピー性皮膚炎患者(IGAスコア2or3)
罹病範囲(頭皮除く)が
体表面積の5~40%の患者 364例
のうち
モイゼルト軟膏1%群:182例
プラセボ群:182例
に分けて比較検討しています。
対象患者の体表面積まで
見ている試験は今までなかったですね。
3-2.試験結果-1(有効性)
有効性では
EASI変化率、IGAスコア
痒みのVRS、POEM等
で評価します。
医師主導の評価と湿疹面積に対して
プラセボ群と有意差が出ていますね。
1日目から
痒みのスコア減少の結果が
すぐに得られており
効果も持続できていますね。
7日目で症例数が減っているのは
受診日の違いが影響しているそうです。
POEMのスコアを確認すると
患者QOLへの影響もありそうですね。
3-3.試験結果-2(安全性)
本試験における有害事象について調べました。
5%以上の副作用がなく
比較的安全性が高いと言えますね。
参考までに
長期投与試験の
副作用についても
記載したいと思います。
アトピー性皮膚炎の治療薬なのに
副作用でアトピーが起こるのは
ちょっと不思議にも思いますよね。
これについては
小児の試験結果で
メーカーに聞いた回答を
記載しておこうと思います。
4.いつき博士の考察
今回、モイゼルトが
本当にアトピー患者に有効なのか?
安全に使えるのか?
というのを評価した試験でした。
プラセボ群と比較した際に
湿疹面積、痒みに対して
有意な値が得られており
投与1日目から効果が持続する可能性があるんですね。
ただ、ステロイドと比較すると
どちらが効果が良いのでしょうか。
もちろん、プラセボと比較して良くなるのはわかるのですが。
副作用が5%未満と少なく
安全に使用できる可能性の高い治療薬ですね。
対象が軽症と中等の患者であったため
重症のアトピー性皮膚炎の方には
効果の発現があるのか気になりますね。
妊婦には禁忌ではありませんが
投与中及び投与終了後一定期間は
適切な避妊が必要との記載もあるため
妊婦の方へのアプローチも
念頭に置かなければいけませんね。
気になる薬価ですが
下記に記載した通りです。
プロトピック軟膏
コレクチム軟膏と比較すると
多少高くなりますね。
上記2つの治療薬との
比較についても気になるところですね。
また、アトピー性皮膚炎の治療は
1つの薬で永久に安定というより
日々症状に合わせて試行錯誤しながら
コントロールしている方が多いため
個々に合った治療を医師と話し合っていくことが大切ですね。