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デュピクセントのリスク・ベネフィット
いつき博士です。
アレルギー患者教育向けサイトを運営しております。
Twitter界隈で噂のデュピクセントですが
実際に皮膚症状にどのくらいの改善が
認められるのか気になりますよね。
今回はCHRONOS試験から
考察していきましょう。
デュピクセントについて
あまりご存じない方はこちらも
下記のリンクをご覧ください。
1.CHRONOS試験概要
①目的
中等症から重症アトピー性皮膚炎の成人患者を対象に
デュピクセントとステロイド外用剤を併用した際の
有効性と安全性を評価しています。
②試験デザイン
国際共同、無作為化
プラセボ対照、二重盲検、並行群間試験
③対象
既存治療で効果不十分な
18歳以上の中等症から重症の患者740例
(300mg/2週群 106例 300mg/週群 319例 プラセボ群 315例)
条件
アトピー性皮膚炎歴3年以上
体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合が10%以上
IGAスコア3以上、EASIスコア16以上
そう痒NRSスコアの日内最大値の週平均が3点以上
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※ステロイド外用剤:トリアムシノロンアセトニド0.1%クリーム
フルオシノロンアセトニド0.025%軟膏
併用ステロイドの強さは
ミディアムで5段階で下から2番目となります。
④評価項目
16週時点でのEASI-75達成率、IGA≦1達成率
そう痒NRS改善率、TARC
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2.試験結果について
2-1.皮膚状態
EASIとIGA達成率から
皮膚状態の改善度を見ていきましょう。
EASI-75達成率
デュピクセント群 68.9%(2週) 63.9%(1週)
プラセボ群 23.2%
EASI-90達成率
デュピクセント群 39.6%(2週)
プラセボ群 11.1%
単剤試験での結果
EASI-75達成率 61.0%
EASI-90達成率 33.2%
IGA達成率
16週時点
デュピクセント群 38.7%(2週) 39.2%(1週)
プラセボ群 12.4%
52週時点
デュピクセント群 34.9%(2週)
プラセボ群 12.4%
単剤試験での結果
IGA達成率16週時点 37.9%
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プラセボ群と比較して
湿疹面積の減少している結果が得られています。
2-2.そう痒状態
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そう痒NRSスコア
16週時点
デュピクセント群 58.8%(2週) 50.8%(1週)
プラセボ群 30.6%
単剤試験での結果
NRSスコア 40.8%
プラセボ群より
デュピクセント群での
痒みのスコアは16週時に
約2倍程度減少しています。
2-3.検査値から見たアトピー性皮膚炎
52週時のTARC変化率
デュピクセント:87.49%
プラセボ:34.04%
単剤試験結果(16週時点)
77.93%
TARCはアトピー性皮膚炎の
重症度評価に用いられる検査値です。
アレルギー炎症反応が多いと数値が高くなります。
投与初期から減少して
プラセボと比較して長期間で
50%以上も減少率に差が出るんですね。
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3.安全に使用できるのか
デュピクセント群 34.6%
重度の感染症0.2% 結膜炎17.9%
プラセボ群 29.2%
重度の感染症1.6% 結膜炎7.9%
免疫系に作用する点からも
感染症の副作用は多少起こりますが
頻度は低いようにも感じます。
結膜炎については
気になりますね。
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4.いつき博士の考察
デュピクセントは近年
使用患者さんが多くみられます。
今回は3つの点に着目していきます。
①単剤とステロイド外用剤併用で結果の比較
皮膚状態と痒みのスコアでは
ミディアム程度のステロイドでは
そこまで差はありませんが
多少良い値が得られているようにも感じました。
しかし、背景なども考慮すると
これらの結果だけでは一概には
比較できなさそうです。
②結膜炎の原因
IL-13を阻害することで
粘液含有胚細胞(GC)が減少する
と示唆されています。
GCが減少することで
ムチン産生の減少、その後の涙液膜の不安定性
および粘膜上皮バリア機能障害を起こして
結膜炎を発症する可能性があるといわれています。
③投与回数について
基本的にはデュピクセントは
下記のように投与を行います。
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日常生活でどの程度の痒みが出るか
QOLに影響は出ていないか
ステロイドの併用を行うかも含め
医師と話し合うことが重要ですね。
5.使用上の注意点
デュピクセントは
自己注射が可能な薬剤です。
使用時の注意点を3点紹介します。
①投与部位
・投与部位は上腕部の外側
・へそ周り5㎝避けた腹部
・太もも
皮膚が硬くならないよう
毎回投与箇所部位を変えると良いです。
②保管方法
製剤の品質を保つため
2~8℃の冷所で保管します。
しかし、冷たい薬液では痛みや刺激を
感じることがあります。
そのため、冷所で保管していたものを
使用時に45分以上かけて室温に戻すことを
推奨しています。
③生理機能での注意点
・腎機能低下時でも使用可能
軽度から中等度の腎機能障害時でも
比較的に安全に使用できる結果は得られています。
・妊娠授乳時の注意点
デュピクセントはIgGモノクローナル抗体であり
胎盤の通過、乳汁中への移行が知られています。
どちらの場合も禁止はされていませんが
安全性は確立されていません。
妊娠後期では移行量が高くなることが知られており
その期間は特に注意が必要とも言えます。
また、使用時は授乳を中止することが
望ましいとされています。
《参考文献》
サノフィe-MR
https://e-mr.sanofi.co.jp/products/dupixent/
D.S.バッカー.British Journal of Dermatology, Volume 180, Issue 5, 1 May 2019, p. 1248–1249,