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親不知を抜くって二度と言わないでほしい

あれは決して抜歯などではない。


約一年前の冬。恥ずかしながら虫歯になって知り合いの歯医者で治療を受けていました。治療をする前に全体の歯の写真を撮るのですが、その写真をみて先生が「うーん…」って唸っていました。

え?そんな虫歯ひどいの…?

と思っていたら

「親知らず、真横に生えてるね。」

…ほぅ…真横に…

どうやら、上の親知らずは真っ直ぐ下向きに生えているのですが、下の親知らずは両方とも真横になっているとのことで。今は大丈夫だけど、そのうち顔を出してくるとかなり痛いし、歯並びも圧迫されてしまうらしい。

とりあえず上の親知らずはすぐ抜けるから、虫歯の治療が終わったら抜こうという話になった。実際、上の親知らずはすごい簡単に抜けた。

すこーーーん

って抜けた。……いや、嘘。

ごりっ、ごっ、がっ、ごりっ

って抜けた。音はすごい頭に響くのですが、痛みは全くなかったです。血はめっちゃでたけど。一本ずつ、別の日に抜いたんですけど、両方とも痛くなかったです。抜いた親知らずはもらったんですけど処分に困った。

残った下の横向き親知らず、これが非常に困った子で

「うーん、今すぐどうこうじゃないけど、今のうちに抜いた方が後が楽だよ。」

出来るだけ若いうちに抜いた方がいいらしい。高齢になって抜くと痛みが強いし、治りも少しおそくなってしまうらしい。それに今は学生なので時間に余裕はあるけど、社会人になったら仕事にも支障がでるということが僕のなかでは多かった。

じゃあ、抜きますか。

そう提案したのだが、先生の表情は固い。

「うーん、うちで抜いてあげたいんだけど…ちょっと厳しいかなあ…うーん…」

抜けるには抜けるらしい。ただ横向き困ったちゃんで、神経に近いらしく、もし出血がひどい場合その対処がうちでは出来ないとのことでした。僕もできれば信用できるここの先生がよかったのですが、渋々紹介状を書いてもらった大きな総合病院の口腔外科に…


口腔外科ってなんやねん…抜歯ぞ…

急に不安になるミケ。初めていくでかい病院にビビり散らかす…座って待ってるけどその時間が恐くて恐くて…しかし必ずその時は来るのだ…

「はい、ミケさんね、はい、紹介状もらってるよー、抜歯だね、はーい。」

めっちゃハイハイ言うやん…

もうすでに些細なことにまで気になってしまうのだ。

「うーん、今回は一本だけ抜くってことかな?」

そうである、事前にかかりつけの歯医者でとりあえず一本ずつ抜こうと決めていたのである。

あ、そです。今回は片方だけで…

「うーん、両方ともいっぺんに抜いちゃいません?」

ん?なにそんな軽いノリで?え?予想外だったので言葉に詰まってしまった。心の準備がまだ出来ていない。続けざまに

「別に一本ずつでもいいんだけど、どっち道このタイプの抜歯は痛いよ?二回痛い思いするより一回で済ませた方がよくない??」

な、なるほど…確かに…

「まあ抜歯だけど、これはもう「怪我」するってイメージだから。」

………はい?怪我…する…イメージですか…

ちょっと考える時間をもらいまして、一人で考えてるときに看護師さんに

「絶対一気に抜いた方がいいよ!痛いから!すごい痛いから!」

って心配してるのか、不安を煽ってるのかわからない感じで来たので一気に抜くことにしました。その後、治療の同意書、具体的には麻酔に関する同意書だったんですけど

なにこれ?…麻酔に同意書か…

くらいの感じだったんですよ。実際麻酔するまでは。

いざ抜歯します!って状況になったんですけど、めっちゃタオルとかシートで口の部分覆うんですよね。一気に恐くなっちゃったんですよ。多分それがバレて

「そんなに恐がらなくても大丈夫ですよ(笑)もう今日だけで何本も抜いてるんで(笑)」

なに訳のわからんマウント決めてんだよ。テンションがおかしくなってきて半ギレだった。そして麻酔。これ痛いんだよなあ…って思ってたら、

……なにこれ!!ちょっ!!めっちゃ痛い!!!!

普通の麻酔よりめっちゃ痛いのだ。そしてここから恐怖だった。

…えっ、え、なにこれ、めっちゃバクバクする…

すごかったのだ。何がって、すごい心臓がバクバクする。バクバクし過ぎて心臓が痛いくらいなのだ。

え、痛い痛い、胸痛いこれ…あ!麻酔の同意書ってこうゆうこと!!??かなりキツい麻酔ってこと!!?

もうこのあたりから心拍数が下がらず、全く冷静な状態ではなくなってしまった。緊張なのか麻酔なのか訳がわからなくなってしまって落ち着きが保てないかった。しかしそんな状況でも治療、もとい親知らず外科除去処置が始まる…


僕のように横向きに生えている親知らずは、そのまま普通には抜けない。そもそも奥歯があるので引っこ抜けないのだ。なのでまず、埋まっている親知らずを歯茎を切開し露出させる。そして先端の部分の歯を切り取って、切り取った隙間を使って抜くのだ。

痛みこそないものの音がすごい。

キュィィィィィイイイィィンッッ…キュィィィイイィィン…
ガッ…ゴリッ…ガッ、ガッ…キュィィィィィイイイィィンィィィィィッ…

僕は口を開けて成すがまま。血の味を感じつつ、こう思った。

これは抜歯ではない。口の中で工事してるんだ…

そうだ、工事という名前が適切のように思った。だって口の中にドリルとかカッターとかわけのわからない金属突っ込まれて、ゴリゴリされるんですよ?

なんとか無事2本抜き…もとい工事が終わりまして…
血が止まらずそして麻酔が切れて全く口を動かせない。話せないしご飯も食べれない…一回で抜いてしまってよかった…


とにかく親知らずは早めに、そしていっぺんに抜いたほうがいいです。
もう一度言いますが、親知らずを抜くって言わないでほしい。

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ミケ
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