【投資の基礎知識】小学生でもわかる株式投資入門
はじめに
株式投資はお金を増やす手段の一つであり、将来のための資産形成に役立ちます。しかし、株式投資にはいくつかの基本的な知識が必要です。このnoteでは元GPIFのファンドマネージャーが個人投資家に転身した後の経験をまとめて、みなさんの投資に役立つ情報発信をしていこうと思います。今回の文章では、株式投資の基礎知識を体系的に説明します。株式とは、上場企業とは何か、財務指標の見方について詳しく見ていきましょう。
1.上場企業とは
1.1 上場企業の定義
上場企業とは、株式を東京証券取引所やニューヨーク証券取引所などの証券取引所に上場している企業のことです。上場すると一般の投資家がその企業の株を売買することができます。上場することで企業は多くの資金を集めることができ、成長を促進できます。
1.2 上場のメリット
資金調達のしやすさ: 上場することで企業は新たな資金を調達でき、事業拡大や新しいプロジェクトに投資することが可能になります。特定の投資家に株式を発行する第三者割当増資や不特定の投資家に株式を発行する公募増資があり、調達した資金を使って経営再建、設備投資を行います。
ブランドと信頼性の向上: 上場企業は取引所の審査を経て上場するため、消費者や投資家からの信頼を得やすく、銀行からの資金調達、取引先との提携がしやすくなります。
流動性の確保: 取引所で株式を売買できるため、投資家はいつでも株を売ったり買ったりしやすくなります。非上場企業の株式を売買する場合は相対取引と言って、売買する両者間で契約書を巻くのが慣例となり手続きが面倒になりやすいです。
2.株式とは
2.1 株式とは何か?
株式は企業の所有権の表すもの(証書)で以前は紙面で発行されていましたが、今ではオンライン取引が一般的になったので実際に見ることはまずありません。株式を購入すると、その企業の一部を所有することになります。
2.2 株式を持つことのメリット
資産の増加: 株価が上昇すれば保有する株式の価値が増えます。これにより、将来的に資産を増やすことができます。株価上昇による資産価格の上昇分をキャピタルゲインと呼びます。
議決権: 株式を持つことで、企業の経営に関する重要な決定に投票する権利を持ちます。例えば、企業を合併する際には株主総会を開いて株主の決議(投票)が必要になります。また取締役の選任についても投票を行うことができます。
配当金: 一部企業では株式を保有していると、企業が利益を上げた際に配当金を受け取ることができます。配当金は企業の利益の一部を株主に還元する制度です。
3.株式投資の基本
3.1 投資のリスク
投資にはリスクが伴います。株価が下がることもあり、投資したお金を失う可能性があります。リスクを理解し、慎重に投資を行うことが重要です。
3.2 長期投資と短期投資
長期投資: 長期間(数年から数十年)株を保有し、企業の成長を見込むスタイルです。企業業績を分析して優良銘柄を選定することで、市場の短期的な変動に振り回されず、時間をかけて利益を得ることを目指します。
短期投資: 一般的には数ヶ月以内で売買することで株価の短期的な変動を利用して利益を得るスタイルです。テクニカル分析や市場のニュースをもとに判断しますが、リスクも高くなります。数分以内の極端に短い時間に、何度も売買を繰り返して利益を積み重ねるスキャルピングや数日〜数週間程度の株価の変動を波に例えて谷で買って山で売るスイングトレードなどがあります。
4.財務指標の理解
4.1 損益計算書(Profit Loss Statement)
損益計算書は売上高、原価や人件費、広告費などの費用、税金、最終的な利益を計算するための成績表のようなものです。企業が商品やサービスを販売して得た総収入のことを売上、そこから原価や費用を差し引くと利益になります。売上高や利益の増加は企業の成長を示す一つの判断指標となります。企業がどれだけ多くの顧客を持ち、取引を行って、どれくらいの利益を出しているかを知る手がかりになります。多くの項目で構成されていますが、投資家にとって必要なデータは多くはありません。※長期投資の基本になるので詳しくは別のnoteで解説する予定です
4.2 貸借対照表(Balance Sheet)
貸借対照表は企業の資産や負債、純資産などの状況を一覧にした決算書類で、その会社の財政状態を把握するためのものです。会社の資産を左の借方(資産の部)と右の貸方(負債の部、資本の部)に分けて表示します。借方と貸方を比較することで資金調達の状況や資産の運用状況を把握できます。資産には現金や在庫、債権などが含まれ、負債には借り入れたお金や将来支払うべき債務などが含まれます。純資産は資産から負債を差し引いたもので、貸借対照表の右下の方に表示されます。
4.3 キャッシュフロー計算書
キャッシュフロー計算書は企業の一定期間における現金の出入り、資金繰りを記録したものです。資金使途に応じて営業、投資、財務活動で分けて表示します。未公開企業についてはその限りではありません。ただし、現金が不足している場合や金融機関からの融資を多く受けている場合は、資金繰りの状況をわかりやすくするため、作成したほうがよいでしょう。キャッシュフロー計算書の作成方法には、直接法と間接法の2つの方法がありますが、一般的には損益計算書と貸借対照表の数値を組み替えて作成できる間接法が用いられます。
4.4 財務三表の関係性
損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書は金融商品取引法により上場企業に作成が義務付けられている財務三表と呼ばれています。損益計算書で売上から費用を差し引いた今期の純利益(包括利益)は貸借対照表の純資産の一部になり、前期末から今期末の貸借対照表の大きさの変化(差分)となります。基本的に損益計算書が商品やサービスが提供されたタイミングで計算するのに対してキャッシュフロー計算書は資金が実際に移動したタイミングで計上する違いがあります。株式投資をしているとどうしても売上や利益額が掲載されている損益計算書を中心に評価しがちですが、利益が黒字でも資金繰りがうまくいかずに倒産(資金繰り倒産、黒字倒産)することもあり、キャッシュフローは安全性の観点でも見ておくべきものになります。
4.5. 財務指標を使った評価と分析方法の例
株価が企業価値に対して割安であるかを判断する場合、企業の価値を財務指標を使って計算する必要があります。
例えば米国株の場合、一般的に株価は利益額に対して25倍程度、自己資本に対して4倍程度で評価されており、それ以上の株価で評価されていれば割高と判断されます。これを言い換えると米国のPERは平均25倍、PBRは平均4倍となります。PBRはPERにROEをかけたもので、ROEは「Return on Equity」の略で自己資本に対する利益の割合を示す指標で、さらに売上高利益率と総資産回転率、財務レバレッジの掛け算で表すことができます。
5.株式投資の実践
5.1 投資先の選定
投資先を選ぶ際には、以下の点を考慮します。
企業の成長性: 売上高や利益が過去数年で増加しているかを確認します。
業界の安定性: その企業が属する業界が安定しているかどうかも重要です。例えば、食料品業界は比較的安定しています。
財務健全性: 財務指標(売上高、ROE、負債比率など)を確認し、企業の健康状態、健全性、効率性を判断します。
株価に対する割安さ: 自己資本や利益に対する株価の倍率(PBR/PER)が平均より低いかを判断します。PBRはPERとROEの掛け算で表されますが、ROEが高い企業は少ない資金で効率よく利益を上げていることを示し、投資家にとって魅力的な銘柄となりますのでROEが大きくて、PBRやPERの低い銘柄を探す必要があります。またROEが大きい銘柄の中には借入が多すぎるものや資産効率の低いものは排除する必要があります。
5.2 株式の購入方法
株式を購入するためには証券口座を開設する必要があります。一般的に対面窓口で口座開設するよりも、ネット証券を使ってインターネット経由で口座を開設した方がスムーズで手数料が安い場合があります。楽天証券やSBI証券、マネックス証券あたりが間違いありません。必要書類の準備して証券口座を開設するまでに最短でも1週間程度はかかかりますが、開設後、すぐに証券会社を通じて株式を売買することができます。初めて投資する場合は、冷静な判断ができるよう少額から始めるのが良いです。
5.3 分散の考え方
時間分散と銘柄分散の二種類の分散があります。株価は時間の経過とともにランダムに動きますので、何度かに分けて投資することを時間分散と言い、これにより高値握み、安値売りを回避できます。また1つの企業に集中投資するのではなく、複数の企業に投資することを「分散投資」といいます。これにより、リスクを減少させることができますが、その分りターンも小さくなります。資産額に応じた最適な銘柄数については別のnoteで解説します。
6.投資の心構え
6.1 情報収集
投資に関する情報は企業決算が最も重要です。四半期ごとに発表されるので投資する銘柄については過去の決算書類をよく見ておく必要があります。またSNSで情報収集する場合、どの情報が確からしいのかご自身で判断する必要があります。例えば、ある銘柄がこれから上がると言っている投資家がいる場合、その後の株価動向が実際にその通りになっているかどうかで信頼性を確認していく必要があります。これを何度も繰り返すことで信頼性の高い情報源を見つけることができます。新聞、書籍などは情報の確度は高いものの、ワンテンポ遅かったりするので速報性や正確性を踏まえながら様々な情報源から知識を得る必要があります。
6.2 株価指数か個別株価
投資に時間を割くことができない場合、米国株などの成長している市場全体に投資をする株価指数に投資をするのが良いです。
一方で株価指数には数百から数千銘柄が含まれているため、値動きが緩やかになります。株式市場では一部の優良銘柄が常に相場全体を牽引しているので逆に大部分の銘柄はその足を引っ張る傾向にあります。優良銘柄の選定や企業業績の分析に時間を割き、その分析結果の確度が高いのであれば個別銘柄にチャレンジするのも良いと思います。
6.2 感情の管理
投資は資産額が変動するため感情も伴います。株価が下がると不安になり、上がると嬉しくなります。しかし、感情に振り回されず、冷静に判断することが重要です。感情に左右されて生活が乱されてしまったら元も子もありませんから、投資資金を抑えるか投資から距離を置くなどを検討する必要があります。冷静かつ客観的に投資できる工夫をする必要があります。
6.3 長期的な視野を持つ
株価は短期ではランダムに動きます。テクニカル分析で株価が上がる確率の高いチャート、下がる確率の高いチャートを予想して分類することはできても、あくまで確率的な見方になります。そのため、短期的な利益を求めるのではなく、長期的な視野で投資を行うことが重要です。企業の成長を見守り、じっくりと資産を増やすことを想定すべきです。
7.おわりに
株式投資は正しい知識と心構えを持つことで始めることができます。上場企業の性質、財務分析の仕方や株式価値の理解を通じて、資産を増やすための第一歩を踏み出すことができます。投資に絶対的な正解はなく、100人100通りの方法があります。ご自身に合う投資手法を時間をかけて学び、実践することで、株式投資の魅力を実感してください。投資の世界は広く、奥深いものですので、ぜひ楽しみながら学んでいってください。このnoteでは元GPIFのファンドマネージャーが個人投資家に転身した後の経験をまとめて、みなさんの投資に役立つ情報発信をしていきますので、もしよろしければ登録していただけると嬉しいです。