見出し画像

おれたちの春がやってきた

3月というのは、全国の高校球児が待ちわびた季節である。寒くキツイ冬練に耐え、春を訪れるのを待つ期間。僕自身も春が来るのを待ち続けた選手の一人だった。


高校野球の場合、12月から3月初旬まではシーズンオフとなり、対外試合ができない。11月の試合を終えると、“冬練”の始まりである。冬練のキツさは高校野球を経験した者であれば、誰もが分かるだろう。

そもそも、冬練がキツイのはなぜか。実践ではなく基礎練習が増えるからである。4ヶ月以上試合がないため、目の前の結果を求めることなく基礎練習ができる。走り込みやウエイトトレーニング、素振りなど。基礎練習がとにかくしんどい。

【◯月✖️日 メニュー】
・素振り1,000回
・坂道ダッシュ15本
・ウエイトトレーニング
・食トレ

昼休みに監督から手渡されるメニューを見て、何度絶望したことか。「早く春が来んかなあ。試合してえよ」と毎日のように思っていたのが懐かしい。

冬練は基本的にボールを使った練習が少ないため、どのチームも同じような練習メニューだと思う。つまり、僕のように練習メニューに絶望する高校球児が何万人もいたということになる。



一方で、冬練は悪いことばかりではない。選手の能力が一番伸びる時期が冬の期間。身体が一回りも二回りも大きくなることなんてざらにある。

また、試合を意識する必要がないため、大胆なフォーム変更もできるのが冬練の良いところ。打撃フォームや投球フォームなど、シーズン中にはできない大改造をする選手も多い。


春になる頃には確実に身体が大きくなり、フォームが見違えるくらい良くなる選手がたくさんいる。基礎練習をたっぷりして、身体を大きくする。「ひと冬越えて成長したな」と言われるのも頷けるだろう。

僕自身、3年春の成績が一番良かった。冬練で自分に合うフォームを見つけられたから。4割くらい打ちまくり、バットを振ればヒットになるという確信があった。卒業して数年経った今でも、春先に打ったツーベースの感覚は忘れられない。


大人にとってみれば、なんてことのない数ヶ月。しかし、高校球児にとっては地獄でもあり自分を成長させる期間でもある、冬の数ヶ月。冬練でどれだけ真剣に取り組んだかが、春や夏に結果として現れる。

「冬練を頑張って良かった」と思うのか、「冬練をもっと頑張れば良かった」と思うのか。本人しか分からないところ。


厳しい冬を乗り越えた球児たちが甲子園にやってくる。秋とはまた違った成長を見せてくれるだろう。新2年生であれ、新3年生であれ、どんなニュースターが出てくるのか。

ブラスバンドの応援と相まって、選手のいきいきしたプレーを見るのが今から楽しみである。選手も保護者も野球ファンも待望の球春到来。「どんな冬を過ごしたんだろう」と、背景も想像しながら野球を楽しみたい。





いいなと思ったら応援しよう!

おばた わたる
読んでくださる方のプラスになるような記事を書くための活動費として使わせていただきます!