『苦福』

「あ、母さん。久しぶり!TV観てくれた?
 
  僕すごいでしょ?すごく頑張ったんだよ!」

無邪気に無差別殺人を報告する、45歳の息子。

久しぶりの会話は、拘置所のアクリル版を挟む。

狂った息子。私が育てた子。可愛く残酷な人間。

「ここの売店に大福あったから、差し入れたよ」

「えー、母さんの大福が良かった。ま、いっか」

嘘。食べられるよ。さっき、すり替えたからね。

味わう前に苦しむかな。最期の学びにはいいわ。

責任を持って殺すから、必ず尽きなさい、ね?


#10行 #ショートストーリー #ショートショート #超短編 #短編 #短編小説 #小説 #現代詩 #詩 #言葉 #無差別殺人 #殺人 #殺人犯 #犯罪 #拘置所 #親子 #家族 #母親 #息子 #大福 #差し入れ #嘘 #最期 #責任 #すり替え #苦福

いいなと思ったら応援しよう!