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PGT Ⅵ. 累積出産率の比較

移植当たり、採卵当たりではなく、長期的視野で見た場合のPGT-Aの有効性を評価しようと累積出産率(時間経過とともにどのくらいの割合の患者さんが一人目の子を出産するのか)について、初回IVFグループと事前IVF不成功グループについて、それぞれ年齢グループ別、PGT-Aの有無別に比較しました。


結果

全年齢層で初回IVFグループはPGT-Aを行わない場合の累積出産率の方が高い傾向がみられ、逆にIVF治療不成功経験者のグループではPGT-Aを行った場合の方が累積出産率は高い傾向がみられました。ただし、有意差が認められたのは35歳以下の初回IVF患者グループの場合と、38歳-40歳のIVF不成功経験者グループの場合のみでした。


今回の研究で明らかになったこと

①   初めてIVF治療を開始しようとする患者さんに初めからPGT-Aを薦める必要はない。

  • 初回IVFグループではPGT-Aを受けなくても54.4%の患者さん、特に若い患者さんの場合、35歳以下では76.6%、35-37歳では57.9%が1回目の採卵後、1~2回の移植でほぼ流産せずに出産できている。

  • 全ての年齢層でPGT-Aを行わないグループの累積出産率が高い。

  • 出産に至るまでの期間はPGT-Aを行わない方が短い。

②   初めてのIVF治療を開始し、1回目の採卵後、獲得できた胚を移植しても出産に至らなかった場合には、次の採卵からはPGT-Aの有効性はあると考えられる。PGT-Aを行うと移植に進めない患者さんは多くなるが、繰り返す移植の失敗、妊娠後の流産を減らすことができるので、患者さんの負担を軽減することができる。

  • 技術力の高い施設でPGT-Aを行えば、PGT-Aを行うことで、移植当たりの妊娠率は上がり、流産率は低下する。

  • PGT-Aを行っても、行わなくても、採卵回数に違いはない。

  • PGT-Aを行うと移植できる患者さんは減り、移植回数も減少するが、移植した患者さん当たり、あるいは、移植周期毎の出産率は高くなる。

  • PGT-Aを行った場合、行わない場合に比べ累積出産率が高い傾向がみられる。特に38-40歳では有意に高くなっている。

③   いずれにせよ患者さん本位の丁寧なカウンセリングは必須である。

④   研究の限界

  • 単に1治療施設の患者さんの治療報告であり、グループの毎の患者数に大きな違いがある。個々の患者さんの詳しいバックグラウンド情報も整理されていない。

  • 第一子出産までの研究であり、もし、染色体情報の良い胚を複数確保できていれば、第2子、第3子につながる可能性もある。PGT-Aを受検する患者さんには複数の移植可能胚を確保しようとする傾向があり、それが治療期間を長引かせている原因である可能性もある。PGT-Aの真の有効性を論じるのであれば、患者さんの全生殖期間にわたる有効性の研究が必要となる。 

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